「島ネタCHOSA班」2018年05月10日[No.1724]号
宜野湾市志真志にある「全琉刃物センター」の看板が気になります。検索してみると、切れ味が良くなったとの口コミ情報が並んでいました。研ぎ屋さんなのでしょうか?
(宜野湾市・40代男性/志良堂さん)
刃物のリサイクル専門店!?
調査員もここ、気になっていました。さっそく宜野湾市志真志へ。「全琉刃物センター」は、国道330号から路地へ入り、少し奥まった場所にありました。
研ぎ直してピカピカに
迎え入れてくれたのは、代表の米須克之さん。ズバリ、このセンターは何をしてくれる場所なのでしょうか。販売もしているんですか?
「いいえ、販売はしていないんです。ここは切れ味を再生させる『研ぎ』やノコを鋭くする『目立て』などを専門に行っているお店なんです」
これは、県内でも珍しい業種ではないでしょうか。木材や金属を切るためのカッターや、食肉用のスライサーなど業務用の刃物をはじめ、家庭用の包丁・ハサミなど幅広く対応しているとのことです。
作業場を見学させてもらうと、まるで映画のセットのような光景が! 創業当時の40年前からある機械が現役で稼働。用途や形状に合わせて約10種類の機械を使い分けます。
「『目立て』はダイヤモンドホイールという大きな円盤状のグラインダーで行います。火花も飛び散りますよ。包丁なんかは砥石を使って手作業で研ぐこともありますね」
手を見せてもらうと、まさに職人のそれ。手作業で研いでいるときに添えている親指がクセ付いたのでしょう。常人よりはるかに反っています!
しかし毎日のように刃物と向き合っていると、ケガが日常茶飯事なのでは?
「まだ未熟な若い頃に、指を縦に割ってしまったことがありましたが、奇跡的にきれいに治りました。細かいのはしょっちゅうですよ。擦り傷くらいだとケガには入らないですね。切り傷も、1㍉の深さまでだと……ケガじゃない」。さすがプロの心構え。男前です!
客からの感謝うれしい
米須さんは高校卒業後に大阪で修業を積み、全琉刃物センターに戻ったのちに先代の父の跡を継ぎました。
「刃物の命が蘇(よみがえ)っていく感覚にやりがいを感じます。あのサビの内側には、こんなに光輝くものがあったのかと思わされます。先代の父親は、50代と早くに他界してしまったのですが、その時のお客さまと今でもお付き合いがあります。おかげさまで今年40周年です」
そして、持ち込まれる刃物にはそれぞれのストーリーがあると言います。
「女性のお客さまなのですが、嫁入りするまでに使っていた包丁が、実家を片付けていると出てきたらしいんですね。研ぎを終えて、引き取る時に何度もお礼をおっしゃってくれて、こっちもうれしかったです」
包丁一本に家族の絆をつなぐ温かみが宿っていて、またそれが日常でも使われるようになるわけですね。
「手紙をいただくこともあります。何よりきれいに仕上げてくれてありがとうという言葉がうれしいです。本来なら商売をしている私どもが、ありがとうございますと言うべきなのに」
そう話した後、米須さんは「これも付け加えられませんか?」と添えて言葉を続けます。「私はここで30年間一筋でやっていますが、創業当時からずっと頑張っているのは、親父と店舗を立ち上げた母親です。今もそばで頑張る母親に感謝します、ありがとう」
お家に眠っている思い入れのある一本、米須さんに預けてみませんか?