「島ネタCHOSA班」2018年11月01日[No.1749]号
台風24、25号では大きな被害が出ましたね。台風に限らず、何か災害が起こるたびに、怖いとは思いつつも、具体的な備えをするには結びつかない私。防災についてわかりやすく教えてください!
(北中城村 ずっとはだし)
キャンプとゆいまーるが防災の鍵!?
災害が起こるたびに「何か備えておかなきゃ!」ってなる気持ちわかります。でも災害対策って、時間もお金も体力も使うようなイメージがありますよね…。ということで今回は少しユニークな視点から防災について紹介したいと思います。お話を聞いたのは、二人のアウトドア系男子。自作の軽トラキャンパー(キャンピングカー)を使ったワークショップを通して「動く非常持ち出し袋」の重要性を伝える有村博勝さん(通称:あ〜り〜さん)、地域連携コーディネーターとして働きつつ、「居場所をまとおう」をコンセプトにしたキャンプを年に50〜60回行う宮平未来さん(通称:未来さん)です。
日常に防災の発想を
東日本大震災など各地の災害ボランティアを経験しているあ〜り〜さんは、多くの人が抱いている「防災」のイメージを変える必要がある、と初めに話してくれました。例えば、台風の場合、窓を補強したり、携帯できる電源や調理器具、保存の効く食料・水など、「もの」を備える面が重要視されます。これは不可欠なことですが、同じくらい大事なのは、一人一人が日常の中に災害時を意識した行動を取り入れること。
私たちの生活は、水や電気が24時間供給され、必要な分だけ使えることを前提に成り立っています。このような暮らしが、簡単に立ち行かなくなることは近年の震災や台風などで周知の事実です。しかし、日常生活と災害時の状況のギャップが大きいと、実際に被災した場合に、落ち着いた対応ができない人や、被害が受け入れられない人も出てきます。そこで、普段から日常と災害時を隔てて考えず、「災害時でも持続可能な生活」を意識する必要があるのです。そのヒントは、未来さんの行うキャンプの中にあるのだとか。
「僕は空き地や空き店舗など、街中の空間を借りて、キャンプをすることがあります。これは、街を楽しむ側面も大きいですが、それでも屋外で過ごすので『自然』の中にいることは強く意識します。災害時の状況にもリアリティが湧き、防災のきっかけとなりますよ」と未来さん。「自然を楽しむ」というイメージの強いキャンプですが、自然環境の過酷さを学ぶ場にもなります。屋外で過ごす経験が災害への対応力を上げてくれるようです。
目標は「共助」
未来さんは、「キャンプで一緒に過ごしていると、初対面の人でも、その人の性格や得意なことがよく見えてきます。複数人が集まるといつの間にか役割分担ができていることもあるんです(笑)」といいます。彼が街中でのキャンプに着目するのは、地域の住人間で助け合いを意識してもらえるから。家の中だけで防災を考えると、どうしても世帯単位での災害対策を考えがちですが、屋外の公共の場では、地域単位での防災にも関心が持てるようになります。そのため、未来さんは「(防災を考える時は)インドアな人ほど、外に出てきてほしい!」と考えています。
防災活動や災害時における救援や復旧のための取り組みは「自助(自らを助け守る)」「公助(公的な援助)」「共助(互いに助け合う)」に分けられます。災害時には、それぞれが効果的に機能することが理想ですが、二人が特に強調するのは「共助」の部分。一般の人々が助け合うことで、社会全体が災害に強くなると考えられるからです。
最後に、あ〜り〜さんが力強く語ってくれました。「沖縄の素晴らしい文化に『ゆいまーる』があります。言わずと知れた『相互扶助の精神』です。台風のみならず地震や津波のような未曾有(みぞう)の災害が多発している現在こそ、ゆいまーるという『共助』を日常的に実践することこそ最大の『備え』となります」
「これ災害が起こったら困るかも…」ということに気をくばり、日々の生活を少し見直すだけでも効果的な防災ができるかもしれません。気負わずにできる取り組みが、命を守ることにつながります。