「島ネタCHOSA班」2018年11月08日[No.1750]号
先日、知人が沖縄に自生するキウイを見せてくれました。普通のキウイよりだいぶ小さい(ブドウの粒ぐらい)のですが、割ってみるとちゃんとキウイでした! 詳しく調べてもらえませんか?
(那覇市 キウイバードさん)
沖縄にキウイが自生!?
えっ、沖縄にキウイが自生? そんなことって、あるのでしょうか。
質問者さんに連絡を取り、詳しく話を聞いてみると…。
「先日の台風24号のあと、やんばるの森を訪れた知人が、倒れた木にからみついていたものを拾ってきた」のだそうです。
写真も撮ったとのことで、見せてもらいました。読者の皆さんも、まずは右の「写真①」をご覧ください。
枝の先に、小さな実が鈴なりにたくさんなっています。しかし、大きさがお店で見るいわゆるキウイフルーツとは全く違っており、これだけでは「本当にキウイなの?」と疑ってしまう感じですが、中を割った写真を見ると…(写真②参照)。
おおっ、緑の果肉に黒い種子! ミニサイズながら、まさにキウイです。すごい!!
「食べてもみたのですが、味や食感もキウイでした。けっこう酸っぱかったですけどね」と質問者さん。うーむ、やはりキウイでしたか。もっと調べてみる必要がありそうです。
やんばるの森に在来
というわけで、調査員は沖縄の植物に詳しい新城和治さんにお話を聞くことに。新城さんは元琉球大学教授で、植物生態学・環境教育が専門でいらっしゃいます。
この植物について伝えると、和名が「ナシカズラ」または「シマサルナシ」と呼ばれる木の果実だと教えてくれました。
「(お店に並ぶ)キウイと同じマタタビ科マタタビ属ですが、種が違います。本州(紀伊半島・山口県)、四国、九州以南に分布しています」
「シマサルナシ」という名称は、外見がナシに似ていることから。サルが食べるナシ、という感じの意味合いでしょうか。別の写真(写真③)を見ると、確かにナシにも似ていますね。頭の「シマ」は琉球の島々を指しており、本土に分布する「サルナシ」とは、また種が異なるとのこと。
別名の「ナシカズラ」は、カズラ=ツル性の木であることから。「やんばるの森に入ると、いろいろな木にからみついていますよ。木の上の高いところによく実がありますが、視線をちょっと上げると、5㍍ぐらいの所にあるのを気づくこともあります。とはいえ、われわれが森を1日歩いて1度見るか見ないかといった程度ですが…」と新城さんは話します。
本島内では沖縄市北部や恩納村から北に分布しており、中南部で見かけたことはないそうです。主にやんばるの森で見られるということですね。
ちなみに、沖縄の方言では、シマサルナシを「クーガー」「グガ」「フガー」などと呼びますが、これらは男性の睾丸、または卵の意味。言われてみれば、なるほどそんな形をしているような…(笑)。
お盆のお供え物に?
大宜味村塩屋で生まれ育ったという新城さん。地域の人はシマサルナシに親しんでいたのか聞いてみると、「私はかじったことがあるくらい。日常的に食べることはなかったですが、私の祖父から聞いた話だとお盆の時に果物としてお供えしていたそうです」との答えが。
「でも、私が物心ついた時にはもう別の果物を使うようになっていました。私の祖父は新しいものを取り入れていたようですから、他の家ではもっと後まで使っていたかもしれませんけどね」
周知の通り、沖縄では地域や家によって、さまざまに風習が異なるので、残念ながら詳しい実態は新城さんにも分からないそう。もし、シマサルナシについて何か記憶のある方がいらっしゃったら、ぜひレキオ編集室まで教えてくださいね!