「島ネタCHOSA班」2019年08月22日[No.1790]号
沖縄と本土では、同じはかりで同じ物をはかっても、重さが微妙に変わる(沖縄のほうがわずかに軽くなる)って本当ですか? 興味があるので調べてください。
(那覇市 ワタブーさん)
沖縄と本土で重さが変わる!?
えっ、沖縄と本土で重さが変わる!?
半信半疑の調査員でしたが、もし沖縄のほうが軽くなるなら、メタボ気味の調査員には朗報です。さっそく調査を始めてみましょう!
遠心力の影響
はかりについて詳しく教えてくれそうな場所…ということで調査員が向かったのは、南風原町字新川の沖縄県計量検定所。日々の暮らしの中で正しい計量ができるよう、はかりの定期検査や検定を行ったり、計量に関する知識を普及する仕事を行う機関です。
出迎えてくれたのは、参事兼所長の玉城宏幸さん、同じ建物内に事務所を構える沖縄県計量協会の会長・友利進さん。はかりのエキスパートということで、計量器の修理・販売・検査などを手掛ける有限会社サンテクノの一般計量士、上江洲直(すなお)さん、上江洲直人さんのお2人も紹介してもらいました。
さっそくですが、沖縄と本土で、同じ物でも重さが変わるって本当ですか?
「はい。札幌で100㌔㌘のものを那覇で量ると99・86㌔㌘。140㌘の差が出ます」と直さん。ええっ、やっぱり正しいんですか。でも、いったいなぜなんでしょう!?
その理由は、地球の自転によって生じる遠心力によるもの、と直さんは説明します。
それによると―。物には「質量」と「重さ」があり、意味するところが違います。質量は物体そのものが持っている量で、常に一定であるのに対して、重さは物体に作用する引力の大きさを指します。例えば地球の6分の1の引力しかない月面では、物体の重さは地球の6分の1となります。
地球上でも場所によって重さは微妙に違ってきます。引力に加えて、自転に伴う遠心力が働くためです(引力―遠心力=重さとなります)。遠心力は北極、南極で最小、赤道付近で最大。つまり、緯度が低ければ低いほど、遠心力の働きにより重さは軽くなる、というわけです(図を参照)。
うーむ、なるほど。つまり、緯度が低い沖縄ではかると、体重はわずかに軽くなるわけですね!
「はい。ただし質量は変わらないので、実際にやせるというわけではないですよ(笑)」と直人さん。あ、そうなんですか。残念…。
取引にも影響?
ここでふと疑問が浮かんだ調査員。場所によって重さが違うと、重さによって価格が決まる製品を取り扱っている業者さんは困りませんか!?
この疑問には、友利さんが答えてくれました。実は、取引・証明の目的では、場所による重さの違いを補正した「取引・証明はかり」を使用しなければならないとのこと。取引・証明用はかりには、場所による差異を補正するキャリブレーション(校正)という機能がついており、どこではかっても同じ重さになるよう使用地に適した設定を行い、さらに検定を受けた上で使用されるのだそう。
「でも、ネットの普及で困ったことも起こっているんです」と友利さん。えっ、それはどういうことでしょう?
「県外で使われていたはかりをネットオークションで購入し、そのまま使うといったケースですね」。設定を沖縄向けに調整し直さず使うと、重さにズレが出て損害につながるおそれもあるそう。わずかなズレでも、塵も積もれば山となるということわざもありますから、注意が必要ですね。
「地域によって重さが違うという事実は意外に知られていないんです」と口をそろえる友利さん、玉城さん。この事実をもっと県民に広く知ってもらいたい、と話してくれました。