「島ネタCHOSA班」2020年03月26日[No.1820]号
県の蝶に指定されることが決まった「オオゴマダラ」について詳しく知りたいです。ぜひ、その生態について教えてください。
(宜野湾市 ムッシュ・バタフライさん)
「県蝶」について知りたい!?
「オオゴマダラ」が県蝶に指定されるとニュースになっていました。白地に黒のマダラ模様でひらひらと飛ぶ姿は優雅ですよね。黄金色に輝くさなぎも印象的です。
さっそくチョウの生態に詳しい県営中城公園所長で沖縄昆虫同好会会長でもある比嘉正一さんのもとに向かいました。
日本最大級のチョウ
最初にまず、沖縄にチョウはどれぐらいいるのでしょうか。
「日本国内には約250種のチョウが生息し、沖縄県内では台風や季節風の影響で飛んでくる『迷チョウ』も含めて170種類のチョウが確認されています。実際に長年世代交代をして生息している『土着』のチョウは80種います」
国内の半分以上の種類が沖縄で見られるとは、沖縄はチョウの宝庫ですね。では、オオゴマダラについて教えてください。
「昔から沖縄にいるチョウで、タテハチョウ科の中のマダラチョウ亜科に分類されます。分布の北限は鹿児島県の喜界島。もともと小さな島に分布していて、沖縄の他、東南アジアなどに生息しています。日本最大級のチョウとしても知られています」
なんと、羽を広げると13〜15㌢ぐらいあるといいます。その飛ぶ姿は新聞の切れ端が風に舞っているように見えることから「新聞チョウ」とも呼ばれるそうです。
「マダラチョウ科は成虫が長生きする種類が多いのも特徴です。私が飼育したオオゴマダラは、羽化してから3〜4カ月生きたものもありました」
モンシロチョウの成虫の寿命は7〜10日ぐらいといわれているそうなので、長寿です!
幼虫は赤い斑点が目立つ独特の姿をしています。
「国内に生息するオオゴマダラの幼虫が食べるのはホウライカガミの葉のみ。ホウライカガミなどのキョウチクトウ科の植物はアルカロイドという毒素を含んでいます。幼虫はこの毒を体内に持つため、鳥などに食べられにくいといわれ、目立つ体色は毒を持つことを知らせる警戒色だといわれています」
独特の色は天敵から身を守る役割があるんですね。ちなみに幼虫も成虫も人間が触っても問題はないとのこと。
「幼虫はふ化した後、卵の殻を食べてからホウライカガミの葉を食べ始めますが、初めのうちは泡を吹くんです」
え、大丈夫なのですか⁉
「体に良くないものを吐き出している可能性もあります。そのうち平気になって、泡を吹かなくなります」
さなぎは太陽の光に同化
さなぎの黄金色も理由があるんでしょうか?
「人の目では黄金色に見えますが、鳥や昆虫の目は違います。葉の裏などにぶら下がるさなぎは表面の内側が層になっていて、太陽の光を乱反射します。天敵に見つけられにくいようになっているんです」
森の中の木漏れ日がきらきらしているところでは、溶け込んでしまう効果があるのですね。マダラチョウ科の仲間はきらきらとしたさなぎが多く、ツマムラサキマダラのさなぎはプラチナ色をしているそうです。
「羽化した後は、さなぎの殻は半透明になります。さなぎは生きていて水分がある時だけ美しい光沢を持ち、死ねば黒く変色してしまいます」
生きていないと金色に輝かない。何だか神秘的ですね。成虫のまだら模様は生息地によって微妙に違うということも教えてもらいました。「沖縄本島のものは黒い斑点が発達していて、八重山諸島に分布しているものは白い部分が大きいのが特徴」だといいます。環境の違いで、長い年月をかけて種が分化しつつあるのですね。
「だから、別の場所に人為的に持っていくのはやめましょう。例えば八重山のものを沖縄本島で放蝶するのは問題です。生態系に影響を与える恐れがあります」と比嘉さんは懸念も示します。県蝶の指定を機に、沖縄の多様性豊かな生き物や生態系について学び、考えるきっかけになってほしいと願う調査員でした。