「島ネタCHOSA班」2022年04月14日[No.1927]号
祖父が神谷酒造所の泡盛が好きです。神谷酒造所には独自の蒸留機があるそうですが…?
(八重瀬町 キングジョージさん)
神谷酒造所の泡盛蒸留機がすごい!?
おっ、今回は泡盛ネタですね。ハリきって調査行ってまいります~!
黒麹(こうじ)菌は沖縄生まれ
神谷酒造所があるのは八重瀬町字世名城。八重瀬町役場から車で約5分。神谷酒造所に電話をしてみると、快く訪問を許可してくれました。
調査員が工場を訪れると、代表の神谷雅樹さんがお出迎え。泡盛製造の工程に沿って工場案内をしてくれました。
まずは洗米。 「うちの泡盛を造る時は、500㌔のタイ米を使うんです。実際にタイからきた米を使っていますよ」。養分が抜けないように回転ドラムでサッと10分洗米し、2時間ほど水につけたら、次は蒸米。米を1時間蒸して柔らかくし、両手サイズの黒麹菌を散布。黒麹菌を増殖させるため、平均38度の温度で20時間ほど寝かせ、米麹を作ります。
黒麹菌は米の栄養を食べながら増殖します。その様子は、黒麹菌が米に生えてくるような感じだと神谷さん。「この蒸し米がうまくできたら、大体お酒も旨(うま)くなる。黒麹菌は沖縄生まれ。沖縄の温暖な気候にも負けない強さがあります」。えっ⁉︎ 黒麹菌は沖縄生まれなんですね!
今度はタンクに米麹と水と泡盛酵母を入れ、もろみを作ります。「20日かけて発酵させますが、その間に微生物たちによってアルコールが造られます。もろみのツンとした匂いの独特の酸があるおかげで、雑菌が侵入しにくくなり、腐らないんですよ」。微生物たちの助け合いが泡盛を生み出すなんて、すごい!
蒸留機で味が変化!?
次の工程はもろみの蒸留。蒸留酒である泡盛は、蒸留でアルコール度数の高いお酒に仕上げます。
ここでようやく、質問にあった神谷酒造所独自の「蒸気吹き込み式蒸留機」とお目見え。加熱時にもろみが焦げないように蒸気を吹き込んでいく機械で、昭和50年代から使っているそうです。
「この機械はウチだけの形なんですよ~。泡盛は酒造所によって味が違うでしょう? それは、この蒸留機の形が酒造所によって微妙に違うからなんです」。へー! 初めて知りました! 「できたての泡盛は硫黄っぽい匂いがするのですが、半年たったら甘い匂いがしてきます。3年たつとバニラの匂いがしてきますよ」とニッコリ。
神谷酒造所で最近人気なのは、蒸留のあと一切の水を加えず貯蔵した「原酒五十度」。不動の人気は創業当時からの「南光」。女性に人気なのは、ハイビスカス酵母仕込みの「はなはな」なのだとか。どれも、ちびりちびり飲みたい!
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神谷さんは、3人きょうだいの長男。この4月1日から工場長から代表に就任しました。1代目は祖父で2代目は父。雅樹さんは以前は会社員で配達の仕事をしていたそうですが「ものを作って売る」ことに興味を持ち、25年前、自ら継ぐことを名乗り出ました。
その矢先父が倒れ、初めてイチから泡盛づくりを開始。
「当初は失敗ばかりで『おいしくない』とお客さんに言われて評判を落としてしまい県外に出稼ぎにも行きました。でも沖縄ブームで首がつながって、観光土産屋や県外の酒屋さんなどが買ってくれて運が良かったです。数千万円を投資して新工場を建て、どんどん泡盛を売りましたが、それだけだと人気も生産性も落ちました。今はターゲットを絞り、必要な人に届けられるよう家族でゆっくり経営しています。いつか米作りからやってみたい」
この夜、「原酒五十度」を飲み、甘い余韻に感動した調査員なのでした。