「島ネタCHOSA班」2022年04月28日[No.1929]号
工工四(クンクンシー)を五線譜に書き直した三線の教科書が発売されたと聞きました。興味があるので、詳しく調べてもらえませんか?
(那覇市 三線初心者さん)
工工四と五線譜が並ぶ三線教科書!?
工工四といえば、中国の楽譜を参考に沖縄で作られた三線の楽譜ですよね。「合、乙、老」などの漢字が描かれているアレです。
…といいつつ、実はあまり三線にも工工四にも詳しくない調査員。この機会に、その教科書の著者にいろいろ教えてもらいましょう!
音程やリズムを補足
このたび発売されたという「工工四を五線譜に書き起こした三線の教科書」について調べてみると、本のタイトルは「なるほど三線」であることが分かりました。著者は具志堅哲さんです。
さて、ここで―。具志堅哲さんの名前に聞き覚えがある読者もいるのではないでしょうか。実は具志堅さん、家族4人で音楽活動を続ける「具志堅ファミリー」のメンバーなんです。
具志堅さんは、妻ムツ子さんと一緒におんなの駅なかゆくい市場内で沖縄グッズなどを扱う「具志堅商店」を営んでいるとのこと。調査員は早速、おんなの駅へと向かいます。
出迎えてくれた哲さん、ムツ子さんから「なるほど三線」を見せてもらいました。
ちなみに、書籍の制作にあたっては、哲さんが執筆した文章を、ムツ子さんが編集者としてまとめ、二人三脚で作ったそう。ページを開いてみると…。
本の中には「安里屋ユンタ」「てぃんさぐぬ花」などの古典的な曲目から、「島人ぬ宝」「涙そうそう」などの現代曲まで、29曲の楽譜を掲載。楽譜は西欧音楽の五線譜で書かれていますが、音符の下には工工四の勘所(弦を押さえる位置を示す漢字)が記されています。なるほど、これは分かりやすいですね!
「工工四は微妙なテンポを表現する記号が十分ではないんです」と哲さん。西洋音楽の楽譜は初見でも弾くことができますが、工工四は曲を知らないと初見ではまず演奏ができないと言います。
また、曲を演奏する中では、半音上げたり下げたりしないと音程が合わない部分も出てくるそう。西洋音楽の楽譜では、シャープやフラットなどの記号で基音から半音ずれた派生音が表現できますが、工工四では派生音を表現する記号が十分そなわっておらず、半音の上げ下げは口承に頼って伝えられてきた、と具志堅さんは教えてくれました。
世界標準の理論で解説
小学校4年生から三線、中学校からギターを始め、バンド活動を開始したという哲さん。民謡とジャズ・ポップス、両方の世界で活動してきた経験が「なるほど三線」の執筆へとつながったと話します。
哲さんによれば、三線や琉球音階については世界基準の音楽理論に基づいて解説した書籍は、これまでほぼなかったとのこと。
「よく『琉球音階は(レとラが抜けた)五音音階』といわれていますが、両者は同じものではありません」と哲さん。やや専門的になりますが、一般に五音音階といわれるものはファとシの音を使わないヨナ抜き音階で、レとラを使わない琉球音階とは異なるのだそう。琉球音階はブルース、ジャズ、ロックやボサノバでギターのアドリブ演奏によく使われる「ブルーノートペンタトニック・スケール」という音階にあたるのだとか。
「なるほど三線」では、前半部で、世界標準の音楽理論の見地から琉球音階の音階(スケール)、旋法(モード)を解説しています。「そうすることで、どんな楽器やクラシック、ロックなどの音楽ジャンルとも音を合わせるのが楽になります。学校にも三線を導入しやすくなり、世界へ三線を普及させることにもつながると期待しています」と哲さん、ムツ子さんは力強く話してくれました。
・「なるほど三線」は県内大型書店のほか、おんなの駅内の具志堅商店でも販売中。
問い合わせ ☎︎080(3964)8076
※木曜定休
・ライブ情報 5月29日(日)15時~
ジュンク堂書店那覇店 B1F
・ユーチューブで解説動画「なるほど三線」を毎週金曜日配信中