「島ネタCHOSA班」2022年06月23日[No.1937]号
先日「廃天ぷら油回収します」と書いてあるトラックを見かけました。廃油が燃料になるようで、とても興味があります。使用済みの天ぷら油がどのように利用されているのか調べてください。
(宜野湾市 ハイ・テンプラチャーさん)
使用済み天ぷら油がエネルギーに!?
これは、エコな取り組みの予感。依頼人によると、トラックには「大幸産業」という社名と連絡先が書かれていたそうです。その情報をもとに連絡を取ると、同社のトラックだと判明。さっそく現場に向かいました。
エネルギーの地産地消
沖縄市登川にある大幸産業に到着すると、同社が運営する沖縄バイオマス発電所の所長の大城章実さんが出迎えてくれました。
大幸産業は飲食店などから出た使用済みの天ぷら油などを回収している業者で、その油を精製した燃料を使いバイオマス発電などを行っているといいます。バイオマス発電とは、動植物由来の資源「バイオマス」を使って電気を生み出す発電方法のこと。同社は油の回収から発電まで一貫して手掛けています。
回収用のトラックは全部で9台あり、本島全域を回るそう。「居酒屋やレストラン、病院、商業施設など、さまざまなところから収集しています」と大城さん。油は、サラダ油でも、オリーブ油でも、ラードでも、動植物性の油だったら何でもよいとのこと。
収集した後はどうしているのでしょう?
「集めてきた廃食油から電気を起こして売電をしたり、ボイラーの重油の代替燃料として販売したりするなど、リサイクルをしています」
もちろんそのまま使えるわけではなく、「回収してきた油に入っている天ぷらかすや目には見えない水分などの不純物を除去し、燃料に変えて、発電しています」と大城さん。沖縄本島内で集めた廃食油を再利用しているので、エネルギーの地産地消にもつながっているといいます。
「廃食油は、リサイクルの優等生といわれていて、さまざまなものの原料になります。飼料、インキ、せっけんなど、いくつもの種類のものにリサイクルすることが可能なんですよ」と大城さんは話します。燃料系意外にもさまざまな形で工業用にも再利用されているのですね。
県内初の廃食油による発電
同社は2016年6月に発電事業を開始しました。なんと廃食油を利用した発電は県内初で、国内でも3例目だったといいます! 発電出力は当初320㌔㍗でしたが、18年5月に510㌔㍗の設備を増設、合計830㌔㍗の発電ができるようになったそう。「発電量は一般家庭に換算すると、最大で約2000世帯分作ることが可能です」
16年に再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT制度)の認定を受けて、固定価格での販売が可能になった同社。発電した電気は自社で使用し、余剰分は売電しているそうです。電気は電力小売り自由化以降、新規参入した電力事業者(新電力)に販売し、契約者のもとに届けられています。
一般家庭のごみの対応はできないそうですが、現在一部の自治体と連携して回収を行っているとのこと。市町村が一般家庭から集めたペットボトル入りの廃油を回収し、リサイクルしているといいます。今後については、「他の市町村とも協力して進めていければ。地道にやっていきたい」と大城さん。食用油の値上がりも影響してか、近年は回収量が減っているそうです。市町村との連携が広がっていくといいですね。
使い終わった油をリサイクルし、それがエネルギー源になっていることに驚いた調査員。環境汚染などの低減にも一役買っている廃食油による発電は、再生可能エネルギーとして、今後注目も高まっていくのではないでしょうか。
有限会社 大幸産業
沖縄市登川1708番地
電話:098‐937‐0778
http://www.daikousangyou.com