「島ネタCHOSA班」2022年06月30日[No.1938]号
世界遺産の「識名園」を訪ねた時に、ガイドさんの案内で見学している観光客を見かけました。個人で依頼できるそうですが詳細がわかりません。調べてもらえませんか。
(読谷村 琉球王国学びたい)
琉球ロマンを導く「案内親方」!?
県内各地に点在しているグスクなどの多くの史跡。資料から知識を得るのも良いですが、現地で説明を受けると理解が深まりそうです。識名園などを案内してもらう方法はあるのか、那覇市・市民文化部文化財課に問い合わせました。
担当者によると市が認定する「案内親方(あんないうぇーかた)」と「識名里主(しきなさとぬし)」という案内講師がいるとのこと。
「今年度は案内親方9人、識名里主13人に委嘱状を交付しました。深い知識をお持ちの講師22人で、希望者から連絡し直接やり取りしていただきます。ぜひご利用ください」
案内親方は那覇市の史跡全般を、識名里主は識名園を専門に案内する講師で文化財課のホームページに利用方法と名簿が掲載されています。調査のため、一般から学校まで幅広く対応している案内親方・奥濱眞市さんに電話しました。
史実のまま史跡を紹介
快く対応してくれた奥濱さんは、30年近いキャリアを持つベテランの案内親方。NAHAマラソン完走歴が23回あり、77歳の現在も毎日10キロのジョギングを欠かさない若々しさ。講座を受け厳しい試験に合格して案内親方になるそうですが、実際はどうだったのでしょう?
「県内の各史跡が世界遺産に登録され始めたころ、那覇市が史跡ガイドのボランティアスタッフ育成講座を開きました。歴史が好きだったので迷わず応募し、那覇市文化財保護委員会に在籍していた著名な専門家の方々から沖縄に関することを教わりました。歴史・文化に芸能まで幅広い内容を習得するのはとても大変でしたが、偉大な先輩方に直接教わったのは貴重な体験。後世に伝えていかなければいけないという使命感を持ち今も活動しています」と語る奥濱さん。試験に合格し、晴れて案内親方一期生として認定されました。当時から心掛けているのは、史実に基づいて案内することです。
「文化財を紹介する重要な役目なので、誤った情報を伝えてはいけません。自分の思想を解説に入れ込むこともしません」と教えてくれました。さらに手ぶらで案内するのがこだわり。「資料を持つと説得力がなくなるので、頭の中にある知識で歩き進めますよ」という言葉から努力が伝わりました。知識を脳内でリピートし、新情報を吸収してアップデート。忘れないように、間違わないようにという日々の頑張りに感服です。
歴史と平和伝えたい
案内親方の実績を積みながら、修学旅行・企業旅行のガイド役や平和学習の講師を務めるなど本島全域で活動を広げてきた奥濱さん。2000年の沖縄サミット開催時にはビル・クリントン米大統領の娘、チェルシーさんを識名園で案内したなど印象深いエピソードが多数あるそうです。海外観光客や他県の学生と手紙でやり取りするなど交流も続き「『こんな歴史があるなんて! 教えてくれてありがとう』など驚きと感謝が入り混じった声がやりがいになっています」と話します。親しみやすくて情熱的な奥濱さんの人柄で、楽しい史跡巡りになるのですね。
「古くから残る文化財ですが、人によって見え方や感想が異なるところがロマンだと思いませんか。みなさんが歴史のロマンを感じられるようにお手伝いします」と話を締めくくった奥濱さん。謝礼は施設や人数・時間帯を確認しながら相談に応じるそうです。調査を終え、あふれる沖縄愛から歴史と平和の語り手になったのだろうと、感動しながら帰路に就いた調査員でした。
「案内親方・識名里主」については那覇市・文化財課ホームページを参照
「那覇市案内親方」で検索
ホームページ上に利用方法と名簿(奥濱さん他の連絡先)が掲載されています。
案内親方(那覇市文化財課認定・史跡案内講師)/沖縄の歴史と地形を訪ねる会会長
奥濱眞市さん
☎︎090-1514-4512
E-mail:ntk-oku.11.20@ezweb.ne.jp
okuntk1120@gmail.com