「島ネタCHOSA班」2022年12月15日[No.1962]号
数年前、海岸に打ち上げられたウミガメを助けたという糸満の亀仙 人についてもっと知りたいです。ぜひ調査お願いします。
(糸満市 ホリデーヨーガリン)
糸満の海を守る亀仙人!?
糸満市の亀仙人こと徳村弘 輝さんですね。昨年も糸満市 喜屋武海岸で岩に挟まれ身動 きが取れなくなっていたウミ ガメを救助したと、琉球新報 本紙で報道されました。調べ てみると、喜屋武海岸などで ウミガメの保護活動をしてい るようですね。さっそく調査 員はお話を聞きに喜屋武漁港 へ向かいました。
糸満市出身の徳村さんは愛 犬カカロットと共に漁港に現 れました。
徳村さんは当時那覇空港に 配備されたばかりのジャンボ ジェット機を見たいという一 心から高校卒業後、航空会社 に勤務。その後、愛知県で数年 働いた後、2008年に故郷 の沖縄に帰ってきました。
旧暦の5月4日にハーリー の文化が残る喜屋武ではハー リーの時期になると、地元の 子どもたちが頻繁に防波堤か ら海に飛び込んでいたといい ます。
飛び込み行為を危ないと思 った徳村さん。子どもたちに 注意を促すにはどうしたら良 いかと考え、漫画『ドラゴンボ ール』のキャラクターである 亀仙人のコスプレをすること を決意。甲羅は、いらなくなっ たカメの剝製のものを使って いるため、本物だといいます。
ちょうど同じ時期に飼い始 めた愛犬カカロットの名前も、 『ドラゴンボール』にちなんで 付けたとのことです。
そうして、地元喜屋武の海 の見守り人「亀仙人」は誕生し ました。
ウミガメとの出合い
「ある朝、カカロットを散歩 させていたら何かくわえて持 ってきて、見たらウミガメの子 どもだった」と言う徳村さん。
地元の海にウミガメが上陸 すると確信し、翌年から詳し い産卵場所を探すことに。砂 浜でウミガメが掘り起こした と思われる跡を見つけると、 外敵から守るためにネットで 囲うなどのこまめな活動を行 い、やがてその中から 13 匹の ウミガメがふ化。しばらくの 間、漁港のいけすで飼ってい たといいます。
そんな中、南部地域の「カメ 博士」で知られる故小林茂夫 さんから「子ガメを飼っては いけない」と聞き、放流を決意 しました。
「ただ放流するのではなく、 すぐ近くの喜屋武小学校の子 どもたちにも声をかけ、一緒 に放流会を行いました」
その後も自主的に海のパト ロール活動を行っていた徳村 さん。2016年から今に至 るまで、沖縄国際大学の山川 ゼミや琉球大学のウミガメ研 究会「ちゅらがーみー」などの 協力の下、本格的にウミガメ の調査を行っています。
今の活動は未来への遺言
シーズンになるとウミガメ が泳ぎに来るという名城ビー チを「南部一の天然ビーチだ」 と語る徳村さん。この海を守 っていきたいという理由から、 ゴミのポイ捨て禁止という立 て看板ではなく、一人一人に声 をかけるなど、海の環境保全活 動にも力を入れています。
「元気なうちはこの活動を続 けるよ」と意気込む徳村さん の今後の目標は、今年新設さ れた琉球ホテル&リゾート 名 城ビーチの目の前の海岸での ウミガメの産卵。
「簡単な地域ガイドとして、 地元の子どもたちや観光客に ウミガメや、慣れ親しんでき た名城ビーチの歴史を語り継 いでいきたい」と話します。
徳村さんのユーチューブチ ャンネルには、ジャンル別に ウミガメに関する動画も多数 投稿されています。
「ユーチューブは何年も残る でしょ。未来への遺言書だと 思ってる。『こんなオジーがい たんだよ』と面白おかしく残 ればいいです」
そう言って、また愛犬カカ ロットを連れて海のパトロー ルに向かった徳村さんの後ろ 姿が大き く感じた 調査員な のでした。