「島ネタCHOSA班」2023年10月26日[No.2007]号
県外からの移住者ですが、秋にやんばるに行くと、「キーン、キーン」という特 徴的なかん高いセミの鳴き声が聞こえますよね。最初はセミとは分からず、教えら れて驚きました。このセミについて詳しく教えてほしいです。
(糸満市 アーリー)
やんばるで秋に鳴くセミ!?
沖縄の秋の風物詩ともい えるセミの鳴き声ですよね。 ただ、意外と詳しくは知らな い…という人も多いのでは ないでしょうか。かくいう調 査員もその一人。これを機 に、きちんと調べてみたいと 思います!
甲高い鳴き声
というわけで、調査員は琉 球大学博物館「風樹館」へ。 学芸員の佐々木健志さん(助 教)にお話を聞きました。 佐々木さんは、『沖縄のセミ』 という書籍の著者でもある、 セミなど昆虫の専門家です。
「ああ、オオシマゼミです ね」と佐々木さんは即答。現 在、本島ではうるま市以北に 分布し、慶良間諸島、久米島、 奄美大島、徳之島にも生息す るそうです。ちなみに、「オオ シマ」という名は、奄美大島 に由来するのだとか
出現時期は8月下旬〜 12 月ごろ。やんばるでは10〜 11 月ごろが鳴き声のピークです が、以前は1月上旬にも鳴き 声を聞いたことがあります よ、と佐々木さん。また、数 は少ないですが、6月ごろ出 現する個体もいるそうです。
「キーン、キーン」とも「ケ ーン、ケーン」とも形容され る甲高い鳴き声については、 「熱帯のセミに近い鳴き声の 感じですね」と佐々木さん。 「東南アジアのジャングルに 行くと、夕方にこういう感じ の鳴き声が聞こえてきます よ」。へぇ〜、そうなんですか。 確かに本土のセミの鳴き声 とは印象が異なるので、県外 出身の質問者さんは驚かれ たのかもしれませんね。
セミは1日のうちで鳴く 時間が決まっている種もい ますが、オオシマゼミは朝か ら夕暮れまでずっと鳴いて いるもの特徴だそう。
木の高い場所にいること が多いので、姿を見ることは 難しいそうですが、写真を見 せてもらうと、ブルーのしま 模様の美しい姿が印象的。オ スのほうがブルーがはっき りしているとのこと。
セミには謎が多い?
オオシマゼミはツクツク ボウシの仲間で、ツクツクボ ウシも本州などでは夏の終 わりを告げるセミとして知 られています。沖縄に分布す るツクツクボウシの仲間と して、「ジィーワッ、ジィー ワッ!」と鳴くクロイワツク ツクというセミもいて、こち らはオオシマゼミより少し 早い8月上旬〜 11 月下旬が 出現期。本島南部にも見られ ますが、1990年代後半ご ろから南部では個体数が減 っているとのこと。
「オオシマゼミも、僕が学 生時代は浦添近辺や琉球大 学周辺にも少しはいました よ」と佐々木さん。ただ、分 布域が狭まったり、個体数が 減少したりする理由は、温度 や森の乾燥などの影響が考 えられるものの、まだよく解 明されていないそう。
「セミは沖縄の季節感を表 す昆虫ですが、よく分かって いないことも多いんです。分 布も時代によって変わりま すから、もし読者の皆さんの 中に、南部でオオシマゼミの 鳴き声を聞いた、という方が いらっしゃったら、ぜひ教え てください」と佐々木さんは 呼びかけます。
まだまだ研究しが いがある沖縄のセミ。 身近にも、たくさんの ロマンがあると実感 した調査員でした!