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[No.2050]

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「島ネタCHOSA班」2024年08月22日[No.2050]号



 沖縄島南部の限られた地域にだけ生息するカタツムリの仲間「アマノヤマタカマイマ イ」。珍しい生き物を紹介したいと調査を始めましたが、なんと現在、切迫した絶滅の 危機にあることがわかりました。県内の生態系に起こっている異変をお伝えします。

固有種のカタツムリが絶滅の危機に

 アマノヤマタカマイマイを調 査員が知ったのは少し前のこ と。沖縄島南部の限られた森 に、白いとがった殻を持ったカ タツムリがいると、生き物に 詳しい方から聞いたのがきっか けでした。

 少し調べると、アマノヤマタ カマイマイは環境省レッドリス トにも指定されている、希少 な種類と判明! まずは環境 省の沖縄奄美自然環境事務 所に問い合わせて、種類の概 要などをお聞きしました。

木の上のカタツムリ

 沖縄奄美自然環境事務所 の担当者の方によると、アマ ノヤマタカマイマイは、沖縄島 南部のガジュマルやハマイヌビ ワなどが生えている鬱蒼(うっ そう)とした森の中で見つか ります。木の上で生活する「樹 上性」です。食べ物をはじめ、 詳しい生活史は、まだ分から ない部分が多いとのこと。

 謎の多いこのカタツムリ、現 在急激に数を減らしているの だそう。主な原因とされてい るのは、ヤエヤママドボタルとい う陸生のホタルによる捕食で す。大型の幼虫がカタツムリ 類をエサとします。本来、石 垣島や西表島に生息し、沖縄 島にはいない種類ですが、「県 内外来種」として侵入してい るのが確認されています。

 担当者の方は、アマノヤマタ カマイマイを人工飼育で繁殖 させる「生息域外保全」がす でに行われていると教えてく れました。ヤエヤママドボタル の駆除を行い、その後繁殖さ せた個体を野生に戻す「野生 復帰」にも取り組んでいきた いそうです。

見つけたら連絡を

 調査員は、ヤエヤママドボタ ルのことも知ろうと、琉球大 学博物館の「風樹館」を訪ね ました。助教・学芸員の佐々 木健志さんは、ホタル類の研 究をしています。沖縄県の外 来種検討委員会にも参加し、 ヤエヤママドボタルについて、調 査や提言を行っています。

 「ヤエヤママドボタルは沖縄 島南部のカタツムリ類に壊滅 的な影響を与えています」

 そう話す佐々木さん。沖縄 島での初確認は2003年 頃、昨年までに中南部を中心 に恩納村や古宇利島などでも 見つかっていると教えてくれま した。与那国島でも県内外来 種となっているそうです。本種 が確認された場所では、アマ ノヤマタカマイマイはもちろ ん、他のカタツムリ類も減少 しています。現在、最も危惧 されるのは、本種がやんばる にも進出してしまうことです。

 佐々木さんは、ヤエヤママド ボタルの卵や幼虫が植木、土、 資材などにまぎれて、人為的 に移動したと推測していま す。農業や造園、工事に携わ る方や、自然観察を行う方 は、この虫がいないかどうか、 できるだけ気を付けてほしい そう。見つけた場合は、沖縄 県自然保護課が運営するウェ ブサイト「沖縄外来種ドット コム」に情報をお寄せくださ い。ネットが苦手な方は、琉 大風樹館への電話でも大丈夫 です。



ヤエヤママドボタルを見つけた場合の連絡先

“固有種のカタツムリが絶滅の危機に"

琉球大学博物館 風樹館
098-895-8841
※見つけた場所や日時を記録の上、ご連絡をお願いします



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“固有種のカタツムリが絶滅の危機に"
白くとがった殻が特徴的なアマノヤマタカ マイマイ。環境省レッドリスト:CR+EN(絶 滅危惧㈵類)。(撮影:村山望)
“固有種のカタツムリが絶滅の危機に" “固有種のカタツムリが絶滅の危機に"
(上から)アフリカマイマイをおそうヤエヤママドボタルの幼虫(体長30~50mm)、オスの成虫(約18mm)。石垣島や西表島などに 生息する、日本で一番大きなホタルの仲間です。幼虫は発光しながらシャクトリムシのように歩き、カタツムリの仲間を捕食します。 沖縄島には在来の近縁種「オキナワマドボタル」がいますが、幼虫の足の先の色で見分けます。足の先端がすべて白ければオキナワ マドボタルの幼虫で、つま先から3分の2だけが白ければヤエヤママドボタルの幼虫です
“固有種のカタツムリが絶滅の危機に"
(左)ヤエヤママドボタル幼虫の足の先端
(右)オキナワマドボタル幼虫の足の先端
“固有種のカタツムリが絶滅の危機に"
佐々木健志さん
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