「表紙」2011年12月22日[No.1395]号
中学、高校とバレーボール経験者である伊良部さんは、監督歴6年目にして城北小学校男子バレーボールクラブを初の九州大会出場へ導いた。普段は郵便事業株式会社 那覇支店に勤務しながら指導を行う多忙な毎日だが、とても充実していると笑顔で話す。情熱的で熱い指導は保護者からの信頼も厚く、子どもたちにとってもいい影響を与えている。バレーボールを通して優しい感謝の心、負けない強い心を育てたいと考えている。創立から7年。早くも結果を出し勢いのあるチームの先頭を伊良部さんが全力で走る。
心鍛え、勝利導く
現在城北バレーボールクラブは男女ともに指導者に学校の先生はいない。保護者や地域の人が協力し合って成り立っているチームである。伊良部さんは平日は仕事でほとんど練習に参加出来ないため、そのときは保護者にお願いし面倒を見てもらっている。決して整った環境ではないが、子どもたちの意識は高く、練習を積み重ねるごとに成長が見られ、驚いていると話す。
伊良部さんは、「監督を引き受けて、最初の2年間はいっぱいいっぱいでした。しかし最近では仕事と練習の区別を自分のなかでつけられるようになり、安定した気持ちで指導することが出来ています。これも、本当にたくさんの方々の協力のおかげです」と強調した。
練習は子どもたちの大きな掛け声が終始飛び交っている。体育館内に響き渡り迫力のある雰囲気のなか、一生懸命ボールを追いかけている。
一瞬でも気の抜いたプレーが出ると激しい指導が入る。子どもたちは必死になって伊良部さんから放たれるボールにくらいつき、とれたときには「やったぁー」と喜び、落としてしまったときには床を叩いて悔しがる。絶対に拾ってやるという強い意志を感じる。
「バレーボールは、さまざまな球技のなかでも唯一、ボールを止めないスポーツです。ボールが床に落ちるまでは、どんなことがあっても気を抜いてはいけない。それを練習のときから意識してやっています」と、勝利に対する執念とこだわりを見せた。
伊良部さんの長男は城北小学校男子バレーボールクラブのキャプテンを努めている。
長男の翔也くんはお父さんでもあり監督の伊良部さんに対して、「練習では厳しいときもあるけど、いつもみんなを楽しませてくれるいい監督です」と話す。
一人一人に声をかけ、初心者の子どもたちにはボールをうまく扱えるようになるための練習を事前に考え、フォームなど丁寧に指導する。
「子どもの成長は本当に早いです。この間までレシーブの基本練習をしていたと思えば、いきなりサーブやスパイクが打てるようになっていることもあって、いつ覚えたんだろうとびっくりしてしまいます」と笑顔で話す伊良部さん。
練習が終わると、みんなで冗談を言い合ったり一緒にはしゃぐ姿も。練習中のピリピリと緊張した雰囲気とは一変して、楽しそうで、和やかなムードに包まれる。
「強くなるためにはただ厳しいだけではダメ。もちろん厳しさや激しさも必要ですが、やっぱり『バレーボールが好きだ!』『勝つことはうれしいんだ!楽しいんだ!』と思う気持ちが大事だと思うんです。そうすれば技術もついてくるし、絶対に負けないチームになると思うんです。僕はそういう心を子どもたちに伝えたいですね」と、熱く語ってくれた。技術より、心を育てたいという思いが伝わる。
◇◇◇◇
監督として一番やりがいを感じる瞬間は?
「もちろん、結果が出ることもそうですが、卒業した子たちがシューズを持って遊びにきてくれたときは、とてもうれしいです。指導者として、教え子にはいつまでもバレーを続けてもらいたいっていう気持ちもありますし、ここでみんなと一緒に頑張って学んだことを忘れないでいてほしいと思っています」少しうるんだ目で話す表情に、伊良部さんの優しい人柄が感じられる。
熱血監督、伊良部さんの挑戦はまだまだ始まったばかりだ。
普天間光/写真・島袋常貴
◆おわり
絶対優勝するぞ!
城北小学校バレーボールクラブ
2004年結成。部員数男子9人。女子23人。練習日 火、木、金、土、日曜日。
大会成績 2011年5月 第104回那覇地区小学生バレーボール大会 優勝。 6月 全日本小学生バレーボール大会沖縄県大会(ファミリーマートカップ) 3位。 8月 全九州小学生バレーボール男女優勝大会出場。