「表紙」2012年01月19日[No.1399]号
父から子へ受け継がれたトマト農園。手間暇かけて大切に育てる當間英さん(32)は、不安定な天候と日々格闘しながらもトマトに愛情を注ぐ。毎日観察しながらちょっとした変化に気づき早急に対応することで、安心、安全なトマト作りに全力を傾ける。毎回試行錯誤を繰り返しながら、もっとおいしくなりますようにと丹精を込め今日も農園で汗を流している。
人と自然の”協同“作業
慎重に茎一本一本を観察する當間さん。土の状態や葉の色まで指で触れながら確認している。
「最近は天気や気温の変化が激しいので、毎日昨日と違っているところはないか、何か変わったことはないかといつも以上に念入りにチェックしています」と、温和な素顔が一変し真剣な表情に変わる。
太陽の光が大好きなトマトは、天気に大きく左右される。そのため中心の茎から90度ごとに葉が成って太陽の光を受けやすいように生育する。それでも光の入り方は葉の向きや場所によって多少異なるので、自然と成育に差が出てくる。
「これを長く経験すると、感覚で一つ一つ水のあげ方や肥料の量を調節して、全部同じ大きさにそろえることも出来るんです」と笑顔。
茎と茎の間のいたるところに黄色い粘着テープがある。これは黄色に虫が集まる習性を利用したものだそうだ。他にも、通常より細かい網のネットでハウスを囲い、害虫が入らないように工夫している。農薬に頼らず、害虫を除去するためだ。
「どんなに立派に育てていたところでも、虫に病気をうつされてしまった茎は引っこ抜くしかありません。そのときはすごくつらい。だけどみなさんに安心して食べていただけるためには必要なことだし仕方ありませんね」と苦笑い。
トマト農園をやっていて一番のやりがいは?
「僕の作ったトマトが市場に出て、それをお客さんが買ってくれたときですね。それぞれの家庭で調理されて、みんなに食べてもらえている実感が沸くと、もっとおいしいトマトを作りたい、もっと愛されるトマトを届けたいと思えるんです。頑張ろうって、うれしくなりますね」しゃがんで小さなトマトを見つめながら語る當間さんの背中は、責任と愛情であふれている。
ハウスの中には何匹もの蜂が飛んでいる。この蜂はマルハナバチといい、花一個一個の花粉を集めて受粉する役割を果たしているという。これがないと、トマトは実を着けることができない。
「人間と自然が協力している気がしますね。父やJAの方などいろんな人からの助けもあって、僕は一人で育てているという感覚はないんですよ。みなさんに感謝しながらこれからも一生懸命いいトマトを作っていきたいと思います」と笑顔で強調した。
気の抜けない毎日だが、喜びと楽しさでいっぱいの當間さん。向上心あふれる精神で、沖縄のトマト農園を一層盛り上げてくれる存在だ。
普天間 光/写真・池原康二
とうま えい 1979年豊見城市(旧、豊見城村)生まれ。福岡県久留米工業大学卒業後、就職。退職後父から引き継ぎ農家の道へ。現在JAおきなわ豊見城支店トマト共選部会に所属している。
父に教わりながらも自ら熊本に見学に行くなど、勉強熱心である。「受け継いだトマト農園をずっと大事にしていきたいと思います」と笑顔で語った。
・トマトの味噌汁
・スクランブルエッグ
・トマトのカルパッチョ
「トマトはヘルシーですし、栄養もあって、いろんな料理に使えます」と、英さんの母、保子さんは話す。トマトの味噌汁やスクランブルエッグは甘さのなかに酸味が加わり、いくらでもいけちゃう美味しさ。トマトのカルパッチョはソースにセロリ、セロリの葉、ピクルス、玉ねぎをみじん切りにして、イタリアンドレッシングとあわせます。