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[No.1418]

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「表紙」2012年05月31日[No.1418]号

沖縄を食べよう 12

沖縄を食べよう 12(2012年05月31日掲載)

わが子のように育てる
新垣 幸一さん(34)酪農(南風原町)



 酪農組合に勤める父と、酪農家の叔父を持つ新垣幸一さんには、いつも近くに牛がいた。南風原町の静かな土地約660平方m(約200坪)で酪農を営む。「叔父の家が近所で、よく牛を見に行っていました」と話す新垣さん。高校を卒業後、土木関係の仕事に就いた。21歳の時、叔父からの「酪農をやらないか」という誘いを一度は断った。しかし、家族ができたことをきっかけに28歳で酪農の道を歩み始めた。独立して1年半。現在、妻の恵子さん(32)と33頭の牛を育て、おいしい牛乳を作ることに全力で取り組む。

 牛はもう一つの家族

 南風原町の静かな環境の中、牛がリラックスできるようにと考える新垣さん。

 叔父の誘いを断った理由について尋ねると、「当時はまだ21歳で、休みがないのがつらかった」と答えた。

 それでも、酪農をやろうと思ったきっかけは、家族ができたこと。2006年3月に結婚。妻、恵子さん(32)をはじめ、長男・琉翔(りゅうと)君(6つ)、次男・海琉(かいり)君(5つ)の4人家族に恵まれた。「子どもは僕の宝物です」と笑顔で話す。

 土木関係の仕事に不満はなかったが、年齢を重ねるにつれ厳しくなるのではないかと考えた。経験が命の酪農なら、一生やっていける気がした。

 「結婚するまでは、自分のやりたいことを優先してやってきました。結婚して、子どもができてからは、家族が安心して、楽しく暮らせるようにと考え始めました。僕は子どもの頃に、牛と関わることで優しい気持ちになれたので、自分の子どもにも同じような場所を作ってあげたいと思いました」

 新垣さんは、酪農へ転職。しかし、想定外の出来事に直面し、苦悩した。慣れているはずの牛に触ることができなかったのだ。過去を振り返ると、今までずっと牛を見ていたにも関わらず、触ったことは一度もなかった。

 「あれ?って思いました。怖くて、近くにいくのもビクビクしてしまうんです。おかしな話ですよね。1カ月程で慣れて、それからは平気でしたが」と、苦笑いを浮かべる。

 新垣さんの作る牛乳は、他の牛舎の牛乳とブレンドし「宮平牛乳」という名前で各家庭に届けられる。

 基本的に一日一回の搾乳をする。搾乳した牛乳をタンクに保存し、二日に一回、出荷をする。牛は、一日に二回は搾乳しないと、乳が張ってしまい、乳房炎になる可能性がある。とてもデリケートな動物なので、日々の変化を小まめにチェックする。

 当然、牛舎に雄はいない。そのため、北部の育成センターに牛を預け、人工授精を行う。牛の体調に合わせて進められることで、負担も少なくなるという。

 酪農をする上での難関は、台風。停電になれば、保存用のタンクが使えない。発電機を使えば問題はないが、台風の間、33頭の牛はどうなるのか。

 激しい豪雨の場合、気分が荒れてしまう牛もいる。体をなでるなどして、落ち着かせる。搾乳も様子をみて行うなど、ほとんどつきっきりの状態が続く。

 独立したばかりで、試行錯誤を繰り返す毎日。新垣さんに、仕事のやりがいを聞いた。

 「家族のため、というのもありますが、やっぱり、牛がかわいいんですよ。成長が見えたり、変化があると『そうかそうか』って話しかけるんです。僕のもう一つの家族です」と微笑む。

 琉翔君と海琉君がためらうことなく牛舎の牛に触っている。そこに寄り添う恵子さん。幸せそうに見ている新垣さんに、牛たちも笑っているように見えた。

 (普天間 光)

わが子のように育てる
牛の体調をみながら搾乳する新垣幸一さん=南風原町
わが子のように育てる
プロフィール
 あらかき こういち 1978年生まれ。南風原町出身。28歳で酪農の道へ。東風平町の浦崎牧場で約1年間の研修を受けた。研修内容は、主に餌やり、搾乳の仕方や、牛舎の環境の整え方を学んだ。2010年12月に独立。妻の恵子さんと手を取り合い、毎日おいしい牛乳を作る努力を欠かさない。恵子さんからは、「自分がやると言ったら聞かない人です。私は酪農は初めてで、最初は怖かったけど、今はかわいくて仕方ないです」と笑顔で語った。
わが子のように育てる
☆新垣さん家のオススメレシピ☆
ミルクちんびん(左)
ミルク餅(右)
 新垣さん家の、簡単で子どもが大好きな2品を紹介します。ミルクちんびんは、ホットケーキの粉と牛乳、バナナをミキサーにかけて薄く焼いたものです。お好みでチョコレートをかけるのがおすすめ。ミルク餅は、牛乳とタピオカの粉を混ぜて火にか上けます。固まってきたらまるめて冷やすと出来上がり♪きなこをかけて召し上がれ☆
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