沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1428]

  • (金)

<< 前の記事  次の記事 >>

「表紙」2012年08月09日[No.1428]号

輝くママ HAPPYライフ 15

輝くママ HAPPYライフ 15(2012年08月09日掲載)

保育士 宮里みどりさん

子は未来 共に成長

 「先生、おはよう、皆さん、おはよう」。明るい声が響くルーブル保育園(浦添市)の1歳児クラス。担任の宮里みどりさん(45)は、15年のブランクを経て、4年前に保育の現場に復帰した。生演奏に合わせて体を動かすリトミックの時間のスタートは、瞑想から。心と体が成長する、大切な時期の子どもたちに向き合う宮里さんは、表情豊かに、大きなしぐさと声で気持ちを伝える。大人が驚くほど変化する、子どもたちの体調や気分に配慮しながらの毎日は、にぎやかであり、穏やかでもある。

家族の後押し励みに

 6人きょうだいの末っ子、3女として、大家族の中でのびのび育ったという宮里さん。

 「おばあちゃん、両親、きょうだい6人と、にぎやかな環境で育ちましたから、お互い『育て合い』みたいな感じで。私自身、甥・姪の子守りをすることが好きで、子どもっていいな、保母さんになりたいと、物心付いたころには決めていました」と、仕事への思いを語る。

 高校を卒業後、沖縄福祉保育専門学校(那覇市)に通うため、初めて親元を離れた。アルバイトをしながら、夜間部を3年で卒業。その後、一度故郷・本部町にUターンして、町立保育所に就職した。

 「那覇で学校を出してもらった家族への、恩返しのつもりでした。1年で那覇へ戻ったのは…、お付き合いしていた夫と、結婚を前提に遠距離恋愛していたから。あっ、本島内だから近いですね」

 夫・常雄さん(47)のことを語ると、照れる宮里さん。誠実なパートナーと22歳で結婚し、一度退職する。

 「子どもが小さいうちは、自分の手で育てたかったんですね」

 現在20歳の雄也さんを筆頭に、18歳の雄介さん、14歳の雄斗さん、7歳の梨々花さんの子育てに忙しい日々。

 「専業主婦として、子どもたちと毎日楽しかったんですが、ふと、やっぱり子どもが好きだなって。現場への思いもありました」

 4年前、新しくオープンする保育園で保育士を募集していることを知人から聞いた時は、「正直、15年というブランクと、40歳を過ぎての再就職は、体力がついていけるか不安もありました」

 そんな宮里さんの背中を押したのは、やはり家族だった。

 「一緒に暮らす夫の両親を含めた家族の協力が大きいです。延長保育で帰宅が遅くなる時は、迎えや食事、お風呂など、家族みんなが手分けしてくれて、一緒にいてくれます。安心して送り出してもらいました。それに、園の行事と子どもたちの行事はどうしても重なりますが、夫や両親が参加して、寂しい思いをしないよう配慮してくれます」

 子育てとは、また違った発見があり、感動がある保育の現場。

 「日々の成長がある、生命力にあふれている存在であることは世界共通でしょう。会話や排泄など、昨日できないことが今日できた時は、自分の子どもと同じようにうれしいんです」

 保育士の基本は「観察」という宮里さん。

 「今仲良くしていたと思ったら、次の瞬間けんかになっていたり。そんな時、観察がないと対応が偏ります。体調管理、けがをせず一日無事に過ごさせるためにも、よく見ることが保育士の重要な仕事ではないかと」

 「ちょっと最近、甘える感情が強いな…」。園での様子を話しながら、その子のお母さんに尋ねてみた。「おめでたではないですか?」

 「お母さんも気付いてなかったようで、驚かれていました。家族や周りの変化に子どもは敏感。毎日の観察の積み重ねが大事ですね」

 さらに、1歳児を受け持つからこそ心がけているのは「リズム」というキーワードだ。

 「一日が始まるよって声かけ。生活のリズム。季節ごとの行事を通しての一年のリズム。リズムが整ってくると、子どもたちも落ち着きます」

 保育士を続ける上で、一番の喜びは、やはり子どもたちから受け取っている。

 「『自分のみどり先生だよー』って抱きつかれると、本当にかわいい。保育士で良かった」

 満面の笑みで語る宮里さん。「みどり先生、おはようございます」。ちょこんと頭を下げて、今日も子どもたちが登園してきた。優しい母のまなざしで迎える姿が、変わらずにある。 


島 知子/写真・島袋常貴



保育士 宮里みどりさん
子どもたちとリズム遊びをする宮里みどりさん=ルーブル保育園(浦添市)
保育士 宮里みどりさん
 みやざと みどり 1967年本部町出身。
6人きょうだいの3女。本部高校卒業後、専門学校夜間部に3年間学び、保育士の資格を取得。1年間本部町立保育所に勤務後、22歳で結婚。20歳を筆頭に3男1女に恵まれる。「夫が家事・育児に積極的なので、7時までの延長勤務にも対応できます。長女は、お父さんべったり。夫も初の女の子なので、とてもかわいがって仲が良いですよ」とうれしそうに家族を語った。
保育士 宮里みどりさん
仕事紹介
 保育士の国家資格を得るには、専門学校や短期大学、大学へ進学し、専門知識を身につけ、実務経験を経る必要がある。社会人として働きながら学べるカリキュラムもある。日々成長する子どもたちの良き理解者、指導者として、信頼される大人としての責任は大きい。
>> [No.1428]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>