沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1437]

  • (金)

<< 前の記事  次の記事 >>

「表紙」2012年10月11日[No.1437]号

輝くママHAPPYライフ 19

輝くママHAPPYライフ 19(2012年10月11日掲載)

スタジオカメラマン

高山えりかさん

写真に「思い」込めて

 離婚をきっかけに、高山えりかさん(34)のカメラマン人生が始まった。3人の息子を女手一つで育てるため、正社員の職を探し、出合ったのが浦添市前田のスタジオチャーリー。一眼レフを触った経験もない中、29歳の時、勧められるままに挑戦。大の子ども好きで、明るくきさくな高山さんは、家族写真の撮影に適任だった。「一つ一つの撮影がすごく楽しく、この仕事に不思議な縁を感じます。今、この瞬間しか撮れないベストを『思い』と一緒に撮影したいですね」と、真剣勝負でファインダーをのぞく。

巡り合わせに感謝

 カメラとは無縁の生活を送っていた高山さん。県立首里東高校を卒業後、すぐに結婚。19歳で長男・大河君(14)、23歳で日向(ひゅうが)君(11)、25歳で琉賀君(9つ)に恵まれた。

 大河君が小学校に入学するまでは専業主婦として育児に専念。入学後、友人の誘いで保険の営業として働きはじめた。「ずっと家庭に入っていたので、仕事をすることが怖かった」と言う。

 その後、人材派遣会社に登録。2年間、泡盛を入れるつぼ作りに携わった。

 そんな中、夫との関係がうまくいかなくなり、離婚を決意。3人の息子を引き取ることを決めた。「それまでは、パートやアルバイトでもいいと思っていました。でも、一人で子どもたちを育てるために、きちんと仕事を探そうと思いました」

 一家の大黒柱としての責任を果たすため、求人情報誌で正社員の仕事を探した。目に止まったのが、スタジオチャーリー。「もともとメークが好きだったので、美容の仕事をしながら自分もきれいになれたら」と、美容室を希望した。

 しかし、面接したマネジャーの比嘉智子さん(54)に正直で純粋なところや一生懸命子育てをしていることなどを買われ、「絶対カメラマンに向いている」と勧められた。

 29歳で同社に入社。1カ月間の受付業務の後、スタジオ部へ。写真の勉強をした経験もなく、何もかも初めての世界。カメラの使い方から学んだ。

 約1カ月で100日記念の撮影に入った。機嫌が変わりやすい赤ちゃんは、素早い対応が求められた。「もともと子どもは大好きなので赤ちゃんをあやすのも苦にならないし、お母さんたちと話をすることもPTAで慣れているので苦労はありませんでした」

 カメラマンの仕事は予想以上に楽しく、証明写真、七・五・三、十三祝いの撮影とステップアップしていった。「スタジオにきて本当に良かった。いい出会いに恵まれ、感謝しています」とうれしそうに話す。

 デジタルカメラや携帯電話のカメラ機能が普及し、誰でも気軽に写真が撮れる時代。「正直、シャッターを押せば、誰でも撮影できます。だからこそ写真への『思い』や撮影の時の『雰囲気』も一緒に収めたい」と、撮影の準備をしながら何の記念日なのか、どんな写真を撮りたいのかなど、何気ない会話から被写体の「思い」を引き出す。話しやすい雰囲気のカメラマンを心掛け、シャッターを押すまでの準備と会話を大切にしている。

 とても明るく、気さくな高山さんだが、離婚の際、「笑って子どもたちを育てよう」と誓ったという。また、子どもたちに決してうそはつかない。離婚も正直に話し、「これからはお母さんが働かないといけないよ。協力がないと仕事はできないよ」と告げた。

 離婚後は、実家で両親と暮らす。午前8時30分までに出勤。片付けをして帰宅するのは午後9時。「実家と子どもたちにも感謝しています。ママというよりパパみたいな生活です」と笑う。

 入社6年目の今年、サブチーフに昇進。後輩の指導にも力を入れる。「撮影は私の毎日の仕事ですが、お客さんにとっては一生に一度の大切な写真。どんなに疲れていても集中して撮影に入ります。後輩たちにもただ撮影するだけでなく、思いも一緒に撮ることを伝えたいですね」と抱負を語る。不思議な運命の巡り合わせに感謝しながら、大きく花開いた新しい人生をひたむきに歩んでいく。


豊浜由紀子/写真・桜井哲也



神谷 誓男さん
写真とは無縁の生活からスタジオカメラマンになった高山えりかさん=浦添市前田のスタジオチャーリー
高山えりかさん
 たかやま・えりか 1978年静岡県生まれ。
幼稚生まで静岡県で暮らす。小学生の時、母の故郷・沖縄に引っ越す。県立首里東高校を卒業後、結婚し大河君(右)、日向君(後列右)、琉賀君を出産。大河君の小学校入学を機にパートで働きはじめる。離婚後、子どもたちを育てるため、29歳でスタジオチャーリーに入社。スタジオ部でカメラマンの仕事に就く。仕事で疲れた時は布団を敷いてくれる母親思いの息子たちと実家で暮らす。
高山えりかさん
仕事紹介
 プロのカメラマンになるには、写真の専門学校や大学の写真科で学び、卒業後、写真スタジオで働いたり、カメラマンのアシスタントになったりするケースが多い。最近は子どもメーンの写真館が増え、高山さんのように現場で技術を身に付けていく人もいる。
>> [No.1437]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>