「表紙」2012年11月15日[No.1442]号
自然の中ですくすくと
名護市の森林が生い茂る場所に、シイタケを栽培しているハウスがある。沖縄北部森林組合に所属していたという上原学さん(46)は、13年前に独立。NA—BA生産企業組合を設立し、3人の組合員と共に、シイタケを一から栽培している。自然を生かして、伸び伸びと育てることにこだわりを持つ。主流として行われていた原木栽培を菌床栽培に切り替え、菌床ブロックも同組合の工場で作っている。気温の高い沖縄に適した栽培を目指す。県産シイタケの生産拡大、後継者育成にも力を入れている。
成長に喜び 充実感
工場やハウスの周りには木々があふれ、澄んだ風が流れている。上原さんは沖縄北部森林組合で主に林業に携わっていた。シイタケの生産者とも交流があり、情報交換をしていくうちに、どんどんシイタケの魅力にはまっていったという。
シイタケを栽培するには、気温がかなり重要視される。通常、20度以下の気温でなければ、シイタケはできない。エアコンをつけて補う方法もあるが、上原さんは一切温度調節をしない。自然の中で育てることがベストだと考えている。
「エアコンなどで温度を保つと、1年中収穫することも可能です。でも、せっかくこんないい所にいるんです。きれいな空気を吸ってすくすくと育ってほしい」と話す。
森林の中は、空気がきれいなだけでなく、太陽の光が入りにくいので、比較的低温の期間が長い。県産のシイタケを作るために、一番適した環境を選んだ上原さん。菌床ブロックに打ち込む種となるシイタケ菌も、たくさんの種類の中から、沖縄の気候に合わせた丈夫なものを使っている。
シイタケの収穫時期は10月下旬から5月上旬頃まで。一つの菌床ブロックから最多で6回収穫できる。この菌床ブロックは、地元のイベントなどで販売することもあるそうだが、やはり気温の関係上、栽培する地域によっては、困難な所もあるという。
もともと、シイタケの栽培法としては原木栽培が一般的だった。伐採した木に菌を打ち込み、そこからシイタケができていく仕組みだ。しかし、環境問題が深刻化し、伐採できる場所が少なくなった。そのため栽培できるシイタケが減少、生産者の高齢化も重なって生産量が年々落ち込んでいった。菌床栽培が主流になることで、生産量が上がるだけでなく、労働も楽になっていった。
「原木栽培は、伐採したり木を運ぶ作業があるので、実はすごい重労働だったんです。暑さと木の重さでみんなヒーヒー言っていましたよ」と、当時の大変さを語り苦笑い。
菌床栽培の仕込み作業は、工場で行う。菌床を100度近い水蒸気の中で約8時間蒸して殺菌し、シイタケの菌を入れていく。その後、1、2カ月ほどで成長が見られる。薄茶色の菌床ブロックにシイタケ菌が充満して真っ白になっていく。「その変化も、シイタケ作りの面白いところです」と上原さんは話す。
「シイタケの成長はとても早いんです。毎日、変化が見られますよ。その度に『よしよし』と、うれしくなります」
シイタケの収穫時期には多少の刺激が必要だ。収穫して1、2週間休ませた後、「浸水作業」という菌床ブロックを水に沈ませ窒息状態にする。そうすることによって、シイタケができやすくなる。
そのほかにも軽くたたいたり、雷などの大きな音を聴かせたりすることも、シイタケにとっては大事な刺激だという。普段は、音楽も聴かせているそうだ。
「若い従業員がいるので、最近はヒップホップやレゲエなども聴かせています」と笑顔を見せる。チームワークを大切にしながら、おいしいシイタケを作りたいと思う気持ちは、今後も変わらない。
普天間光/写真・桜井哲也
うえはら まなぶ 1966年生まれ。名護市出身。
NA—BA生産企業組合の代表理事を務めている。前職の沖縄北部森林組合に所属していたときからシイタケを担当。シイタケの栽培を始めて20年目を迎える。上原さんの作るシイタケは、ファーマーズマーケットや北部のスーパーなどで「やんばる山の子しいたけくん」という商品名で販売している。3児の父でもある。家族の仲も良く、「毎日充実していますよ」と笑顔で話してくれた。
●シイタケの混ぜご飯
●天ぷら
●みそとマヨネーズ焼き
●つくだ煮
シイタケの混ぜご飯は、シイタケとニンジン、ピーマンを炒めて、炊きあがったご飯と混ぜるだけ。シイタケは茎もおいしく、天ぷらにして塩をつけて食べるのがオススメです。みそとマヨネーズ焼きは、トースターで焼くだけでOK。つくだ煮は、おかずにしてもおつまみにも最適ですよ。