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[No.1460]

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「表紙」2013年03月28日[No.1460]号

輝くママ HAPPYライフ

輝くママ HAPPYライフ 29(2013年03月28日掲載)

1級葬祭ディレクター 
比嘉久美子さん

別れの場心尽くして

 心を込めて、最後の別れを—。大切な家族との別れを丁寧にサポートする浦添市前田のサンレー那覇紫雲閣の比嘉久美子さん(41)。祖母の葬儀をきっかけに、29歳で事務職から葬儀の世界に飛び込んだ。2人の娘を育てながら男性同様に働き、35歳で県内初の女性の1級葬祭ディレクターに合格。「私たちは毎日の仕事ですが、ご遺族にとっては大切なセレモニー。要望に応えられるように、気配り、心づくしをモットーにしています」と、細やかな気遣いを大切にしながら、遺族に寄り添う。

「三人の母」で夢を実現

 三姉妹の長女として育った那覇市出身の比嘉さん。県立真和志高校を卒業後、経理学校に通い、20歳で事務職に就いた。21歳で結婚。22歳で長女・侑梨(ゆうり)さん(19)を出産した。

 転機は26歳の時に経験した祖母の葬儀。「おばあちゃんのために美しく祭壇を飾り、遺族への配慮も素晴らしく、全てが新鮮でした」。葬儀担当者の仕事ぶりに感銘を受け、「こんな仕事があるんだ」と興味が湧いた。

 27歳で次女・満里奈さん(13)を出産。その後、夫との関係がうまくいかなくなってしまう中、「自分の仕事はこれでいいのか」と悩んだ。

 「協力するから、好きな仕事をした方がいい」。妹の純子さん (38)が比嘉さんの背中を押した。28歳で離婚。2人の娘を引き取り、29歳でサンレー沖縄本部に入社した。

 通夜の準備から出棺、告別式、納骨まで、「業務」と呼ばれる葬儀に関わる全てを任された。当時、「業務」は男性の仕事。同社でも女性は比嘉さんを含め2人だけだった。

 祭壇の重い部品を運んで組み立てたり、脚立に上って天幕を飾ったり…。憧れて入った世界だったが、見た目以上にハードだった。遺族に玄関先で「あなたで大丈夫?」と言われたこともあった。入社後3カ月は毎日、泣いてばかり。「辞めよう」という気持ちと、上司や同僚からの「もう少し頑張って」という激励。苦悩の日々が続いた。

 育児のために職場で配慮はあったが、出棺の時間によっては午前6時30分の出勤や、帰宅が遅くなることもあった。比嘉さんの出勤時間に合わせて、認可外保育園の園長が協力。純子さんと末の妹・聡子さん(36)は母親代わりになって子育てを手伝ってくれた。

 また、満里奈さんは気管支ぜんそくで何度か入院もしたが、上司の「気兼ねしないで、治るまで出てこないでいい」との言葉に救われた。周囲の温かい協力の下、仕事と子育てを両立してきた。

 比嘉さんは、力仕事などハード面は男性が得意だが、遺族への心遣いなどのソフト面は女性が向いていると考えている。「ご遺族は家族が亡くなっただけでもショックです。通夜の心配などせず、『故人さま』だけを思ってそばにいてほしい」と、遺族の許可を得て、台所に立つこともある。女性、そして母として、遺族を思いやる。

 実務経験が5年以上あると1級葬祭ディレクターの受験資格が得られる。比嘉さんも入社6年目で試験勉強を始めた。娘たちを寝かしつけ、家事を終え、深夜から勉強。「家に帰ってからが大変で、試験勉強はとてもきつかったです」と振り返る。受験の際も比嘉さんを全面的に支援したのは妹たちだった。

 35歳で見事、1級に合格。「妹たちがいなかったら試験も受けられませんでした。上司や同僚、妹、周りの優しい人たちに恵まれ、ここまでこられました。『ありがとう』だけでは足りないですね」と、何度も何度も感謝の気持ちを語る。

 昨年、満里奈さんが中学生になった。「子どもに手がかからなくなったので、葬儀の世界にどっぷり漬かり、本腰を入れて勉強したいですね。この仕事は天職だと思っています。毎日精進し、どんな葬儀にも迅速に対応できるようになりたいです」と話す比嘉さん。「子どもがいると大変ですが、子どもがいるからこそ気付くことも多々あります。やる気があれば、周りが協力してくれますよ」と、働くママにエールを贈った。


豊浜由紀子



比嘉久美子さん
告別式で使うマイクのテストをする比嘉久美子さん。マイクを握ると、表情が引き締まる=浦添市前田のサンレー那覇紫雲閣
比嘉久美子さん
プロフィール
 ひが・くみこ 1971年、那覇市生まれ。
県立真和志高校を卒業後、経理学校に通い、20歳で事務職に就く。21歳で結婚。2人の娘に恵まれる。祖母の葬儀担当者の仕事ぶりに感動し、29歳でサンレー沖縄本部に転職。35歳で1級葬祭ディレクターに合格。子育てを手伝ってくれる妹の純子さん(38)=写真後方左=と聡子さん(36)=同右=の三姉妹は、「一緒に子育てしてきた3人のお母さんですよ」と笑う。
写真・豊浜由紀子
比嘉久美子さん
仕事紹介
 「葬祭ディレクター技能審査」は厚生労働省が認定。2級は実務経験2年以上、1級は5年以上か2級合格後2年以上の実務経験が必要。さまざまな宗派の葬儀などについて、筆記だけでなく司会、幕張りなど実技試験もある。サンレー沖縄本部では1級31人のうち4人が女性。
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