「表紙」2013年04月18日[No.1463]号
水中で笑顔はじける
アップテンポの曲に乗って、水中から勢いよくジャンプ、敬礼のポーズで沈んでいく。潜ったまま素早く円になり、あおむけで片足をあげたまま広がっていく—。那覇市辻にある波之上スイミングスクールでは、小学3年生から6年生までの6人が県内では珍しいシンクロナイズドスイミング(シンクロ)を楽しんでいる。テレビで見る五輪の人気競技シンクロのような「華麗さ」とはひと味違う。子どもたちがはじけるような笑顔を見せながら、生き生きと水中のダンスを楽しんでいる。
表現力豊かに楽しむ
波之上スイミングスクールで2012年11月から、週1回開かれているダンススイミングクラブ(シンクロ教室)。1日に行われた教室では、秋に東京で開かれる全国大会に向け、新しい振り付けの練習が始まった。
シンクロでは、クロールで下がったり、平泳ぎで横に進むなど、競泳の4泳法とは違う筋肉を使う。同教室では泳ぎ方の指導はしない。25メートル以上泳げることを参加条件にしてるが、参加する子どもたちは競泳が得意という訳ではない。
それでも、練習するうちにバランス感覚が磨かれ、泳ぎが上達してくるという。あおむけになり両ひざをそろえて胸の方に寄せたまま浮かぶ「タブ姿勢」はシンクロの基本的な泳ぎ。子どもたちは美しいタブ姿勢で3分以上浮かんでいられる。同スクール支配人で公認水泳教師の菊田和男さんは「バランスをとるのが大変、コーチでも難しい」と話す。
一度きりの予定が…
同教室開催のきっかけは、同校が創立30周年記念事業として昨年、水中パフォーマンスショーの専門集団「トゥリトネス」を東京から招き、シンクロショーを開催したことだ。その中で「トゥリトネス」を主宰する不破央さん(44)が、子どもたちへの特別レッスンを開催。さらに参加者たちがショーの前座として演技披露した。
これが予想以上に好評だった。「保護者の反応もよくて、終わらせるのがもったいないと。他ではしていない取り組みにもなると思った」と菊田さん。記念事業の終了後もレッスンを継続することになった。
今も月1回、東京から指導に参加する不破さん。平泳ぎの元日本記録保持者で、シンクロを題材にした映画「ウォーターボーイズ」の演技指導をするなど実力派だ。
1日の練習にも不破さんが参加した。身ぶり手ぶりを交えての指導。子どもたちが失敗すると残念がり、成功するとハイタッチで喜ぶ。「やらされていると感じさせない。表現するスポーツだから、教える側も表現力を豊かにしている」と話す。
指導に応えるように、子どもたちも笑顔を絶やさない。潜ってジャンプして、また潜る。その繰り返しは苦しいはずなのに、息継ぎでとびきりの笑顔を見せる。「沖縄の子は表現力が豊かで、人前に出ることに慣れてるから、シンクロに向いている」と不破さんは指摘する。
「将来は選手に」
子どもたちがシンクロを始めた理由はさまざまだ。教室に2人いる男の子の1人、具志堅光君(城岳小5年)は「サッカーをやっていて、体力を付けたかったし、面白そうだから始めた」と話す。天方向日葵(ひまり)ちゃん(沖縄クリスチャンスクールインターナショナル5年)は「バレエとスイミングを習っているから、シンクロもやってみた」と言う。「バレエと違って、シンクロは動きが細かくて、シャキシャキしているけれど、踊りが好きなので楽しい」と笑う。
チームで協力して表現することが求められるシンクロ。宮城渉君(開南小5年)は「水の中で歩いたりするのがリズムに遅れたり、浮かぶ時に頭が沈んでしまったりして難しい。でもみんなと踊れるから楽しい」と話す。
玉城結衣ちゃん(上間小3年)は、全国大会に向けて「緊張するけど楽しみ」と話し「小さいころからシンクロに憧れていた。シンクロの選手になりたい」と目を輝かせた。
岩崎みどり/写真・桜井哲也
波之上スイミングスクールのダンススイミングクラブ。
練習は毎週月曜日午後6時半から午後8時まで。月1回、水中パフォーマンス「トゥリトネス」の不破央さんが指導に参加する。小学生以上、25メートル泳げる子が対象。無料体験会もある。
電話/098(863)7264