「表紙」2013年09月26日[No.1486]号
心を無に一投集中
直径1.5cmのブル(中央の円)に向かって全神経を集中させるソフトダーツ。矢を投げるだけと侮ってはいけない。心を無にして集中しなければ、高得点は狙えない。酒を飲みながら楽しむイメージの強いダーツを、「スポーツ」として認められるよう練習に励んでいるのが、10月に開かれる全国大会に出場する沖縄エリア代表の女性4人。リーダーの宮良優希さん(26)は、「ダーツは運動音痴の人でもOK。子どもやお年寄り、車椅子の人でも誰でも楽しめるスポーツです」とその魅力を語る。
真剣勝負の「スポーツ」
ダーツは、ダーツボードと呼ばれる円形の的に一定の距離から手で矢(ダート)を投げ、得点を競う。ソフトダーツは、矢の先端が金属ではなくプラスチックなのが特徴だ。的から2m44cm離れ、矢を投げる。
酒飲まずに猛特訓
沖縄エリア代表は宮良さん、仲宗根園子さん(27)、屋富祖あゆみさん(22)、濱邊ちひろさん(21)の4人のチーム。宮良さんはダーツバーのオーナーだが、他の3人は飲食店や洋服店などに勤務。仕事が終わってからダーツバーで練習を重ねている。取材した日、屋富祖さんは仕事が忙しく、残念ながら3人だけになってしまった。
友達に誘われて始めた仲宗根さんは、ダーツ歴5年。「初めてダーツをした時、ぼろくそに負けてイライラしました。あまりに悔しくて『1カ月後に勝負ね』と約束し、ダーツバーに通って猛特訓しました」と苦笑いする。練習のかいあって、再勝負では勝利。以来、ダーツに夢中だ。
最年少の濱邊さんは、1年前、たまたま遊びに行ったバーにダーツがあった。「隣でやっていた女性がめっちゃうまくて、『この人みたいになりたい』って思ったんです」。宮良さんは、仕事から入った。「ビリヤードをやっていたんですが、ダーツバーで働くことになり、ダーツを始めました」。きっかけはさまざまだが、「こんなにはまるとは思わなかった」と3人とも口をそろえる。
ダーツはバーで酒を飲みながら遊ぶイメージだが、プレーヤーとして練習する人も多いという。仲宗根さんと濱邊さんも、酒は飲まない。練習のためだけにダーツバーに通う。「ソフトドリンクを飲み、休憩中におしゃべりを楽しみながら大会前は一日5時間くらい練習します」と、真剣に練習に励む。
県内人口は約3千人
設立して8年になる県ソフトダーツ協会(野村安成会長)の理事長・崎山善松さん(60)は、「県内でダーツ人口を増やそうと盛り上げています」と話す。本島と石垣で計4支部あり、現在、宮古島でも普及に努める。
同協会主催の大会を年5回開催。千人規模の大会もある。協会に加盟しているダーツバーなどは約70店。崎山さんは「約3千人が県内でダーツを楽しんでいるだろう」と試算する。ダーツの歴史やマナーなどの筆記と実技試験に合格したプロも県内で約30人誕生した。しかし、女性は結婚や出産を機にやめる人が多く、プレーヤーは圧倒的に男性が占める。
県内の大会では、個人部門に参加する女性が特に少ないという。7月に開かれた「砦(とりで)女子 沖縄地区予選抜大会」には約15人が参加。那覇と中部地区での予選を勝ち抜き、沖縄代表決定戦の上位4人が10月に静岡県で行われる全国大会「ユナイテッドグループ選抜対抗戦『砦』女子2013」に出場する。
宮良さんは「チーム一丸となって楽しみながら、自分たちのダーツを精いっぱいやりたい」、仲宗根さんは「これだけ大きな大会は初めて参加するので、チームに貢献できるよう1勝でも多く勝ち進めたい」と抱負を語る。「めっちゃ負けず嫌い」という濱邊さんは、「勝ちたいだけ」と闘志を燃やす。
「ダーツがスポーツとして認められ、将来はオリンピック競技になってほしいですね」と宮良さん。ダーツ女子の熱い思いが矢と共に放たれる。
豊浜由紀子/写真・桜井哲也
県内での予選を勝ち抜いた上位4人で構成するチーム。10月に静岡県で開かれる全国大会に出場する。普段は個人で、それぞれ行きつけのダーツバーでダーツを楽しむ。酒は飲まずに、真剣にプレーするメンバーも。ダーツが「スポーツ」として認められる日が来ることを心待ちにしながら、練習に励む。
問い合わせは、ダーツショップZERO‐1(ゼロワン)☎098(943)3551