「表紙」2014年01月23日[No.1502]号
憧れをあきらめない
その美しいフォルムと重厚感に憧れる人も多いだろう。男性のイメージが強いハーレーダビッドソンの女性ライダーだけで「レディースツーリング」を楽しむメンバーたち。県内で20人の少数派だが、その輪は広がりつつある。呼び掛け人で宜野湾市大山のハーレーダビッドソン沖縄に勤める田山知沙さん(23)は、「みんなで走ると気分が違います。毎回おいしいランチをするのも女子会ならでは」と笑顔で話す。この日は、北谷町からうるま市まで約2時間の充実した時間を楽しんだ。
マナー守り格好よく
黒の革ジャンで決めたライダーが風を切ってさっそうと乗りこなす。流れる音楽はロックバンド・ステッペンウルフの「ボーン・トゥ・ビー・ワイルド」—。全世界にファンを持つライダーの憧れ・ハーレーダビッドソン。排気量は1000㏄を超え、価格も100万円はくだらない。そんなマシンに憧れる女性ライダーが県内にも増えてきた。
ハーレーダビッドソン沖縄で唯一の女性社員として愛車「くろすけ」と共にハーレーライフを楽しむ田山知沙さん。レディースツーリングを始めたきっかけを「男性に比べると女性はまだまだ少数派。バイクについて分からないことなども共有したいと思って呼び掛けました」と話す。2013年7月から、3カ月に一度女性だけで集まり、ツーリングを楽しむ。
この日は北谷町営駐車場に集合した後、9人で国道58号を北上し、読谷村を経由してうるま市の海中道路へ。締めはランチが定番だ。
バイク歴10年という渡久地由美子さん(46)の愛車は2台目。「時間を作って走っています。ハーレーは、自分の好みでカスタマイズドする行程も楽しい」と話す。喜屋武伊知子さん(43)は、ライダー歴2カ月で初めてツーリングに参加した。「10代からずっと憧れていました。社会人になってからますますその気持ちが強くなって。家族には『自分で頑張って貯金するから』と宣言しました」と笑顔。集団で走った感想を聞くと、「皆さんに付いて行けばいいので安心感がありました。走りやすかったです」と満足の表情だ。
女性ならではの視点
高校生のころから「いつかはハーレー」と考えていたという櫻元早苗さん(36)は、「ゆっくり走っても格好いいし、気持ちいい」と話す。
彼女たちが隊列を組んで国道を走っていると、ドライバーや通行人が振り返る。屋嘉比綾乃さん (27)は、「ハーレーに乗っていると注目されるんですよ。オフの時はいいけれど、通勤には使いません。会社に乗っていくとびっくりされますから」と言う。玉城由美子さん(41)も、「家族に話した時は『危ないからやめてほしい』って反対されました。でも実際にハーレーを見て、走っている姿を見ると安心したようです」と照れたようにいう。
女性ライダー、特にハーレーに乗っているとまだまだ珍しがられたり心配されたりするが、「私たちが走っている姿を見て、愛好者が増えればいいですね」と田山さんは表情を引き締める。
目をひく彼女たちが快適に、そして安全に気を配って乗ることで「憧れは形にできる」というメッセージを伝えたいというのもメンバーの願いだ。マフラーを改造し、大音響を立てるライダーのまねはしない。法定速度を守る。休憩する時もマシンを一列に並べ、邪魔にならないよう気を配る。女性ならではの細やかな心遣いも、ハーレーライダーの責任だと感じている。ハーレー自体に偏見を持ってほしくないからだ。
子育ての話も
ツーリング後は、バイクの話だけでなく子育てや結婚、職場の人間関係など、さまざまな話題で盛り上がる。ヘルメットやパーツを好きなキャラクターでそろえたり、おしゃれを楽しんだり。「そんな情報交換を楽しみに参加しているメンバーも多いんですよ」と田山さん。男性も一緒のツーリングと違い、リラックスでき、世代も出身も職も違う仲間が、ハーレーでつながっている。
帰り道は、それぞれのルートへ向かって解散。「明日から仕事頑張るぞ」
また行こうね—。ドッドッドっというエンジン音が彼女たちの活力になっているのは間違いない。
島 知子/写真・桜井哲也
宜野湾市大山にある「ハーレーダビッドソン沖縄」が、20人の女性ライダーを対象に行っている。きっかけは、「周りに乗っている人がいなくて走りにいけない。だからといって一人で走るのは寂しい」という女性の声だった。女性ライダー同士の交流ができ、スピードも速くなく、距離もそこまで遠くはないので安心して参加できると好評。問い合わせは、ハーレーダビッドソン沖縄 ☎098(870)9980