沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。週刊レキオ



[No.1501]

夜空の輝きを撮る

　すい星や流星群、日食・月食などの天体ショーに、ロマンを感じる人は多いだろう。そうでなくとも満天の星空を見るだけでワクワクする。那覇市に住む小野晃生さん（35）は、美しい星々を写真や映像に収めている。ネット上で「沖縄天体観測部」をつくり、沖縄の星空を中心に写真や映像を公開。「観測したい」という声があれば気軽に応じる。「星空をもっと楽しんでもらいたいし、興味を持ってもらいたい」。一眼レフカメラを手に夜空を見つめる瞳は、少年のように輝いていた。

星の魅力共有したい

　１月初旬に多く出現するしぶんぎ座流星群。８月のペルセウス座流星群、12月のふたご座流星群と並ぶ「三大流星群」の一つ。３日、小野晃生さんと、しぶんぎ座流星群の観測へ南城市知念岬公園に行く予定だった。しかし、あいにくの雨。夜まで待ったものの天候は回復せず、観測は中止になった。

　後日、浦添市の浦添大公園で星空観測をした。「街の明かりがまぶし過ぎて、観測に向かない」と、小野さんは苦笑いしたが、「冬の大三角形」を確認。久しぶりに星空を眺める者にとっては、十二分に美しかった。

誕生日に流星群

　小野さんは京都府出身。地元の大学に通っていたころ、沖縄から北海道までキャンプをして回った。山中や海岸などで野営した時に見上げた星空は素晴らしかったという。しかも、誕生日の８月12日はペルセウス座流星群の活動が最も盛んになる日。誕生日のプレゼントは、降り注ぐような流れ星だった。「大学時代はキャンプというより野宿でした。北海道のど真ん中でテントを張って仲間と星空を見たし、一人で見ることもありました。毎年、誕生日には流星群をいっぱい見られて印象的でした」。天体観測に興味を持ち、撮影を始めるようになった。

　大学卒業後、「うまくて感動した」という泡盛のある沖縄に移住した。2004年、那覇市の第一牧志公設市場の西口で、１・５坪ほどの小さな酒屋「琉夏」を開店。看板ネコのにゃん・うぇいつが相棒だ。

　店を切り盛りしながらも、天体観測に情熱を注ぎ、少しずつ撮影用機材をそろえてきた。機材は高額で、天体ショーの観測にも旅費が必要になるため、工夫が欠かせない。09年の皆既日食では、知り合いの海人（ウミンチュ）に協力してもらい、格安で喜界島に渡り、日本中が悪天候の中で撮影に成功した。12年の金環日食は、太陽を撮影するためのフィルターを手作りした。

　安い部品をネットで探し、手を加えて使うこともしばしばだ。「初心者向けのカメラでも大丈夫。ちょっと勉強すればきれいに撮れるようになります。お金を費やさなくても楽しめるのがいいんです」と説明する。

沖縄の空楽しむ

　「沖縄では地球上で見られるほとんどの星を見ることができるんです」と、沖縄の空の魅力を話す。北極星や南十字星はもちろん、星好きなら一度は見てみたいという「カノープス」も。「カノープスは、冬なら糸満市の喜屋武岬のような南の水平線が開けている場所から見られます。赤い星で、中国では見ると寿命が延びるといわれていますよ」

　今の時季、遅い時間になれば、小野さんが一番好きなレグルスも見られる。しし座の一等星だ。一方、撮影で一番楽しいのは流星群。「分かりやすいし、華やかで撮影していて楽しい」と言う。天文ファンらの間で話題になっているオリオン座ペテルギウスの大爆発にも胸を躍らす。

　「仲間と泊まりがけで観測に行って、ビールを飲みながら、夜空を眺められたらすごく気持ちいい。興味を持ってくれる人をもっと増やしたい」

　そのために、フェースブックに「沖縄天体観測部」をつくり、撮影した写真や映像をアップしている。30秒ごとに写した画像をつなげ、星の動きを表現するなど、見せ方も工夫。天体ショーの情報も提供し、観測を呼びかける。

　「今後も楽しみながら、続けていきたい」。人工的な明かりばかりに目が奪われるこの頃。沖縄の豊かな自然の中で、ゆっくりと星空を見上げてほしいという思いを込めて活動を続けている。

岩崎みどり／写真・呉屋慎吾