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[No.1504]

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「表紙」2014年02月06日[No.1504]号

情熱アチコーコー 41

情熱アチコーコー 41(2014年02月06日掲載)

自作ロボットで対決 ロボロボの会

 1月25日、那覇市の首里公民館で開催されたロボカップジュニア日本大会2014沖縄ブロック代表選抜大会。参加者は、小学2年から中学3年までの14人。子ども向けロボット教室「ロボロボの会」のメンバーだ。月2回開かれる教室で作り上げた自慢のロボットを持ち寄り、2人一組でチームを組んで勝負する。競技はロボットによるサッカーだが、リモコンでの操作は行わない。ロボットの動きはプログラムで制御している。プログラムも含め、設計から組み立てまで、すべて子どもたち自身の手で行う。

創意工夫で腕磨く

 子どもたちにロボット作りの場を提供しているのは「ロボロボの会」。月2回のペースで教室を開く。しかし、すべてを教えてくれる先生がいるわけではない。

 「どんなロボットを作るかは、子どもたちに決めてもらっています。ロボット製作は、独創性の世界。大人に教えられるのは、原理的なことや技術的なアドバイスだけなんです」と代表世話役の今井俊二さん(49)は話す。

 競技に使うロボットには重量とサイズの制限はあるが、どんなセンサーをどれだけ組み込むか、車体をどんな形にするかは設計者にまかされている。

 「他の人たちは8方位、16方位のセンサーを使っていることが多いけど、自分のロボットは360度の方位センサーを組み込んでいます」と語るのはメンバーの一人、金城拓登(たくと)君(14)。「これだとボールの位置を360度見分けることができるので、ロボットの位置をより正確に制御できるんです」と力説する。

 ロボット作りには苦労も多い。「センサーが磁気の影響を受けるので、対策が大変だった」と親富祖元希(げんき)君(12)は言う。100円ショップで買ったケースでセンサーを保護することで解決したが、「30回くらい実験を繰り返して今の形にたどり着きました」と胸を張る。「ロボット作りは大変。大変だけど、すごく楽しい」と最年少メンバー、小泉耀世(れい)君(9)も顔をほころばせる。

大会で勝負に挑む

 自作のロボットによる対決が行われる大会の朝、会場に着いた子どもたちはまずロボットの調整に励む。工具でタイヤやセンサーの位置を調節し、パソコンで組み上げた自作のプログラムをロボットにインストールする。

 試合が始まったら、ロボットには触れない。ロボットは、センサーでキャッチしたボールの位置情報をもとに自力で動く。動きを決めるのはプログラムだ。プログラムの具合によっては、ロボットが思った通りに動いてくれないこともあるが、反対に生き物のような見事な動きを見せてくれることもある。

 前半戦が終わったら、5分のハーフタイム。子どもたちにとっては、最も忙しい時間だ。不具合を調整し、前半の相手チームの出方を見てプログラムを書き換える。

 後半終了後、多くゴールを決めたチームが勝ちとなる。勝ち残ったメンバーには3月の全国大会が待っている。

国語力も向上

 わが子がロボット作りに参加して驚くほど伸びた能力がある、と金城拓登君の父・睦昌さん(47)は言う。意外にも、それは理科や算数の力ではなく、国語力だという。「全国大会では、自分が作ったロボットのプレゼンも審査の対象になります。どういうつもりで作り、どういう結果だったか自分の言葉で説明しないといけないんです。私の子も、最初はうまく説明ができなかったんですが、今では大人が感心するような言葉が返ってきますよ」と笑う。

 「普段は同学年以外の子どもと接する機会が少ないので、会はいい場所になっていますね。この間も、会のお兄ちゃんたちから敬語を覚えてきたんですよ」と小泉創世君、耀世君兄弟の母・美香さん (41)も笑顔を見せる。子ども同士で教えあったり、チームを組んで時には喧嘩したりすることも、成長につながっているのだ。

 ロボロボの会のメンバーから、未来のロボット技術者が誕生する日が待ち遠しい。

日平勝也/写真・桜井哲也

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ロボロボの会
ロボットによるサッカー競技のキックオフの瞬間。対戦メンバーは(左から)金城拓登君、親富祖元希君、窪田志温君、前川喜希君。
前2者でチーム「ウォーリーズ2014」、後2者でチーム「schwartzer(シュヴァルツ)」を結成し対決に臨む=那覇市首里公民館
ロボロボの会
チームは2人一組。相談しながらロボットの調整を行う
ロボロボの会
ロボットを動かすプログラムはパソコンで作成。自分でロジックを考えて組み上げる
ロボロボの会
工具を使った作業に励む小泉創世(そら)君(11)。大人は手出ししないのがルール
ロボロボの会
ロボロボの会
 代表世話役の今井俊二さんが開催したロボット製作の体験教室をきっかけに2010年に発足。那覇市牧志駅前のほしぞら公民館を拠点に、定期的にロボット工作やプログラミングの教室を企画・開催するほか、ロボカップジュニア日本大会など全国規模で開催される競技会への参加支援も行っている。
http://robonokai.blogspot.jp/
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