沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1506]

  • (日)

<< 前の記事  次の記事 >>

「表紙」2014年02月20日[No.1506]号

情熱アチコーコー43

情熱アチコーコー43(2014年02月20日掲載)

県すみれ愛好会

小さな山野草愛でる

 かれんな花を咲かせるスミレ。気に留めなければ見過ごしてしまう小さな花にひかれ、自生地での観察会や育てた花の展示会を開いている「県すみれ愛好会」。沖縄には「琉球列島産スミレ」と呼ばれる基本種が10種あり、他府県に見られないものも多い。会長の天願明さん(75)は、「スミレはもちろん、野に咲き山で生きる花の多様性を、多くの人に知ってもらいたいんです」と話す。色や花弁の形、花茎の状態など、一つ一つ違う個体にそっと触れながら、花との会話を楽しむ。

スミレから世界広がる

 会の発足のきっかけは、1990年までさかのぼる。同年2月に沖縄市中央公民館で開かれた「第1回スミレ展」。愛好家12人が大切に育てた県内・県外のスミレ約100鉢と、自生地などの写真パネルを展示した。身近な植物であるがゆえ、なかなかスポットライトが当たらなかった山野草の展示会は、画期的だと反響を呼ぶ。愛好家ばかりでなく多くの人が訪れた。

 スミレ展は毎年回を重ね、沖縄市の公民館まつりや海洋博公園、那覇市緑化センターでの開催など展示機会が増えていく。そこで、2004年に会則を整え、「県すみれ愛好会」が発足した。

個性発見の面白さ

 自宅で約100鉢のスミレを育てる会長の天願明さんは、「スミレの愛好会は全国にあるんですよ。日本人にとって身近な植物なんです。同じリュウキュウコスミレでも、じっと見ているとそれぞれ個性があってね。何より、かわいいでしょう」と笑顔で話す。

 事務局長の渡辺宏幸さん(66)は、タヅ子さん(66)と夫婦で参加。伊平屋島の自生地調査から戻ったばかりだ。「調査はスミレだけではないんですが、花の時期の11月から5月は、あちこち行きますよ」とタヅ子さんは言う。

 メンバーの又吉カズ子さん(66)は、ことしに入り、恩納村のお気に入りだった自生地に足を運んで驚いたという。「工事で全部なくなっていました。興味のない人にとっては雑草かもしれません。でも、私たちにとっては大切な仲間みたいなもの。寂しかったです」

 登録メンバーは、現在19人。普段はそれぞれ観察や苗の育成をしている。

 展示会に足を運んでスミレに魅せられ、自宅周辺など身近な場所を探し始めたメンバーも。鴇田(ときた)淳子さん(54)は、スミレを語り出すと止まらない。「これまで見過ごしていたものが宝物だと知ったら、スミレに合うだけで楽しくて」。比嘉美佐子さん(55)も、「みなさんに教えてもらってスミレの個性が見えてきました。観察すると、毎回発見があって面白いんですよ」と話す。

けなげな姿が魅力

 名護市内のリュウキュウコスミレの自生地である公園に案内してもらった。日の当たる芝生の一角に、小さな白い花が咲いている。数は多くはないが、しっかりと育っている。「管理担当者が配慮したんでしょう。芝生と一緒に刈らず、残してくれている」と平良真幸さん(76)は感慨深げだ。

 皆で山道をゆっくりと移動しながら、次々に花を発見していく。公園内に作られたせせらぎで、コンクリートで固められた傾斜地の片隅で。

 「スミレは日陰が苦手なんです。ヤンバルは木の成長が早いので、翌年には大きな木の陰になってしまって、なくなっていることもあります」と与那覇洋子さん(68)。顔を近づけて、そっと手に取って花弁の様子を観察する平良玲子さん(69)は、「スミレはね、種がぱーんと弾けて自分で生きる道を探していくんです。その姿がけなげなんですよね」と真剣なまなざしを向けながら言う。

 会のメンバーは現在、3月に行われる「すみれ山野草展」に向けて準備の真っ最中。持続の原動力を天願さんは、「小さなスミレの持つ可能性を信じている」と表現する。「こんな小さな花がたくましく生きているということを知ってもらいたい。そして、スミレが生きている環境、自然へ目を向けてもらえたら」。足元の野草に目を向けてみる。そんな豊かな時間に気づかされた。

島 知子/写真・桜井哲也

このエントリーをはてなブックマークに追加



県すみれ愛好会
自生地を観察する県すみれ愛好会の(左から)与那覇洋子さん、鴇田淳子さん、平良玲子さん、天願明さん、渡辺宏満さん、又吉カズ子さん、渡辺タヅ子さん、平良真幸さん、比嘉美佐子さん=名護市内 
写真の中にあるすみれの写真左から 「リュウキュウコスミレ」「リュウキュウコスミレ」「リュウキュウシロスミレ」「リュウキュウシロスミレ」「シロバナリュウキュウコスミレ」

県すみれ愛好会
会長の天願明さんの半屋外のハウス。約100鉢を育てている
県すみれ愛好会
楽しそうに観察する平良玲子さん(左)と与那覇洋子さん
県すみれ愛好会
昨年行われた展示会の様子=沖縄市八重島の沖縄市立中央公民館(県すみれ愛好会提供)
県すみれ愛好会
県すみれ愛好会
 1990年、沖縄市で開かれた展示会をきっかけに、メンバーに変動はあるが、2004年に正式に発足。現在19人が登録している。普段は自主的に活動し、定期的に集まるのは。2月か3月に開かれ、ことしで25回目となる「すみれ山野草展」の時期と5月の総会。会への問い合わせは、☎098(938)3456〔天願〕
・すみれ山野草展=3月1日(土)10時〜18時、2日(日)10時〜17時 沖縄市立中央公民館 苗の配布あり(数量限定)
>> [No.1506]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>