「表紙」2014年03月20日[No.1510]号
「命名者は小学5年生。今年10月から沖縄都市モノレールに先行して導入される沖縄初のIC乗車券の愛称は?」。問題が最後まで読み上げられる前に誰かがピンッと早押しスイッチを押す。「オキカ!」。ピンポン、ピンポーン。特別に発注した早押し機でテレビ番組さながらにクイズを楽しむのは30代を中心に15人でつくる「沖縄クイズ愛好会」だ。月1回の例会でさまざまなクイズに挑む。「誰よりも早く答えられたらうれしい。自分で問題を作るので、アンテナを張っていろいろなことに関心を持つようになります」とメンバーたち。クイズを通して世界が広がっていく。
対戦楽しみ腕磨く
クイズ大会というと、回答者は目をギラギラさせ互いに火花を散らしている—と思っていた。しかし「沖縄クイズ愛好会」の例会は和気あいあいとした雰囲気だ。
問題の合間に回答者たちが雑談。笑いが絶えない。しかし出題者の「問題」の掛け声で全員が無言になり、目つきが鋭くなる。答えが出ると一転「すごい!」とたたえる声があがり、拍手することも。その変化が面白い。
テレビ番組、契機に
沖縄クイズ愛好会は1992年に設立された。90年代前半にテレビ放送された、視聴者参加型クイズ番組「FNS1億2000万人のクイズ王決定戦」の沖縄予選に出場したクイズ好きが集まって結成。メンバーは少しずつ替わりながらも、月1回の例会を開いている。
93年に入会した会長の新垣隆之さん(43)=那覇市=は「例会では優勝者を決めます。上位数人で決勝戦をすることもあります」と説明する。休憩を挟みながら、約5時間みっちりクイズに向き合う。出題される問題は数百問に及ぶ。
クイズは早押しだけではない。取材した2月の例会では、逆から再生した音楽を聞き曲名をボードに書く、人物の功績を読み上げ床に並べられた写真から該当者を選ぶ、という趣向を凝らした企画もあった。
形式をはじめ、問題の内容や出し方、回答方法、採点方法などは、各企画者が考えてくる。企画者は毎月替わるため、クイズの方向性も変わっていく。
問題も幅広い。歴史や芸能関係、時事、一般常識など企画者の得意分野により内容が変わってくる。経済分野でうなるような問題を出す仲本幸平さん(38)=那覇市=は「新聞を読んだ時に知らない単語があったら後で調べて問題にします」と作り方を話した。
初心者から名人まで
クイズ番組の出場経験者も多い。新垣さんは、長寿番組「パネルクイズ アタック25」の予選を通過。番組の出場者リストに登録されたが、無念にも番組には呼ばれなかった。一方、仲本さんは2009年、同番組で見事優勝した実力者だ。
初心者もいる。石川智里さん(33)=南城市=は、夫・祐貴さん(32)と参加している。祐貴さんは琉球大学在学中にクイズ研究会で活躍したが、智里さんは初心者だ。「始めて2、3年。他の人のレベルには届かないけど、みんながいろいろな企画を考えてくるので面白い」と笑う。
「やっぱり早押しで人より早く押すのが楽しい」と話すのは、石垣市から参加している前盛義文さん(35)。「連続クイズ ホールドオン!」に出場。「ニュースや本、インターネットで調べて問題を作り、作りながら覚えています」と知識を広げるコツを教えてくれた。
2月の例会で優勝したのは、東京からゲスト参加した山下雄太さん(33)だった。山下さんは各地の愛好会に参加する強豪。「沖縄はクイズの幅が広いことで有名。本当にいろいろな方向性のクイズを体験でき、問題も硬い内容から柔らかいものまであって楽しめました」と語った。
「クイズはもちろん楽しいが、例会の後には2次会で親睦を図ります。住む所も、年齢も、職業も違う人たちとクイズを通して親しくなれるのがいいですね」と話す新垣さん。「高校生や大学生ら若い人たちに参加してもらい強いプレーヤーに育てたい」と夢を語る。さらに「個人的にはアタック25に出るのが夢。応募は続けたい」とも。クイズへの情熱、挑戦する気持ちは尽きることがない。
岩崎みどり/写真・桜井哲也(Sakuracolor)
新垣隆之会長。メンバーは30代を中心に15人ほど。毎月の例会は基本的に、第3土曜日13時〜、那覇市のてんぶす那覇で開いている。ゲストは、専用の掲示板で参加希望を伝えてから参加するのが原則。会員になると月500円を納める。愛好会のHPアドレスは
http://www.okiquiz.org/