「表紙」2014年03月27日[No.1511]号
アウトリガーカヌーで沖縄一周を─。そんな壮大な目標を掲げ、2008年に結成した「ホロホロパドラーズクラブ」。海をこよなく愛する男女15人が準備・練習を重ね、12年10月6日、うるま市の宇堅ビーチを出発。海上から住み慣れた沖縄本島を見ながら、9日間かけて約291㎞をこぎ切った。「この冒険から仲間を持つことの大切さや、普通の大人でも頑張れば夢がかなうことを子どもたちに伝えていきたいですね」と話す代表の東江宗典さん(43)。その瞳は少年のように輝いている。
仲間と協力し本島一周
「アウトリガーカヌー」は、南太平洋などで用いられているカヌーの一種。20歳のころからサーフィンやダイビングなど海に親しんできた東江さんは2006年、知人の紹介でアウトリガーカヌーに出合った。「4人1チームでこぎ、ゆっくり景色を見ながら会話を楽しみ、メンバーの呼吸も感じ、今までにない感動がありました」
幼なじみ3人で4人乗りを購入。しかし「遊ぶだけのサークルではなく、社会貢献もしよう」と意気込む東江さんの思いとは裏腹に、賛同者が集まらなかった。そんな中、思い付いたのがアウトリガーカヌーで沖縄一周。新聞の情報欄で参加者を募集するなど、仲間を探した。
サーフィンが趣味の饒平名一孝さん(43)は、「サーフィンは一人で乗るもの。仲間で集まってみんなで何かを作りあげることがしたい」と思っていた時、東江さんと海で出会った。大阪出身の新田哲也さん(39)は、「水泳をやっていたのでマリンスポーツに恐怖心がなく、入りやすかったですね」と話す。
職業も出身地も異なる海が大好きなメンバーが集まり、2008年、ハワイ語で「ブラブラ散歩する」という意味の「ホロホロ」を結成した。
すばらしい沖縄実感
しかし、未経験者ばかり。毎週日曜、うるま市の宇堅ビーチで、こぎ方だけでなく基礎体力をつけるトレーニングも行った。
その後、津堅島や名護市汀間などへのチャレンジクルージング、カヌーで無人島に行きサバイバルキャンプをするなど、夢実現に向けて練習を重ねた。10年からはホロホロカップと題したレースも毎年、開催している。
12年10月6日、ついに沖縄一周を決行した。宇堅ビーチから南城市知念のあざまサンサンビーチに向けて出発。カヌーをこぐ海上班、地上からサポートする陸上班に分かれ、15人が自分の役割を全うし、9日間かけて沖縄本島を一周した。照屋敦弘(のぶひろ)さん (37)は、「バレー部だった高校生以来、久しぶりにチームワークを感じました」と熱っぽく語る。
航海中、イルカやウミガメにも遭遇。沖縄の海の豊かさ、自然のすばらしさを肌で感じた。國場福太郎さん(43)は、「陸から分からない沖縄が見えました。沖縄は小さい島だけど、こいでみたらとても大きかったです」、上原敬太さん(43)は「沖縄一周を無事に終え、家族のありがたさが分かりました」とそれぞれ感想を語る。
高校教諭の喜瀬達也さん(39)は、「沖縄の自然や文化に触れることのすばらしさや、それを守っていくことの大切さを生徒たちに伝えていきたいです」と力を込める。
また、タイムカプセルに基地問題を報道する新聞などを入れ、寄港先で埋めたという。「いつか、子どもたちに探してほしい」とメンバーは将来の楽しみにしている。
新たな夢へこぎ出す
仲間や家族に支えられて実現した沖縄一周の体験を14年2月、「目指せ! 沖縄1周 あいうえお大冒険」と題して自費出版した。子どもが読めるよう、平易な文章でつづった。「普通の大人でも冒険できるよって子どもたちに発信したかったんです。また、沖縄の自然や文化が世界に誇れるものだと感じてほしいですね」と東江さん。同書は県内の小中学校に寄贈する予定で、売り上げは子どもたちの将来に投資するという。
東江さんは、「来年は琉球圏の北限まで目指したいです」と新たな目標を語る。子どもたちに夢を実現することのすばらしさを伝えながら、大人たちの大冒険はこれからも続く。
豊浜由紀子/写真・呉屋慎吾
(おわり)
「アウトリガーカヌーで沖縄一周」を目標に2008年に結成。うるま市の宇堅ビーチで活動している。12年に目標を達成。夢をかなえることの大切や仲間のすばらしさを子どもたちに伝えようと、14年2月に「目指せ!沖縄1周の旅 あいうえお大冒険」(発行・シィーエスアイ、販売・沖縄教販)を自費出版した。現在、20〜50代までの男女14人が参加。子どもたちへの乗船体験も開催。ビーチクリーンなども行う。新たな目標に向けて、会員を募集中。見学・体験も大歓迎。
問い合わせは☎090(7157)5034(東江、18時以降)