「表紙」2014年05月08日[No.1517]号
「おばあちゃん、いくつですか?」「90歳なるよー」「90歳っていくつですか?」「はっはっは、かわいいねー」。沖縄市胡屋の総合福祉センター緑樹苑内にある「みどり学童クラブ」。デイサービスの施設も併設しているため、お年寄りと子どもたちが交流する機会を持つ。この日は、お年寄りと子どもたちが交代で輪投げゲームに挑戦。互いに声援を送り合い、勝敗を競った。所長の與座嘉一郎さん(40)は、「お年寄りと子どもは波長が合いますね。おやつを分け合うなど自然に触れ合っています」と話す。和やかな時間だ。
異世代の交流生む
沖縄市胡屋の社会福祉法人「緑樹会」は、1979年に設立。特別養護老人ホームやデイサービスに併設し、2010年にみどり学童クラブを開設した。「学童を通して、子どもたちの居場所作り、地域貢献がしたかった」と所長の與座嘉一郎さんは話す。
現在、幼稚園児から小学4年生まで、諸見・室川学区の約30人の子どもたちが通う。
午後のレクリエーションの時間に合わせ、お年寄りの元を訪れた子どもたちは、思い思いに利用者に話し掛ける。車いすの移動を気づかったり、つえを片付けてあげたり、自然にお年寄りをいたわる行動が出てくる。「入った当初はぎこちないですが、回を重ねるごとに打ち解けてきます」と與座さんは目を細める。
ゲームで競争
核家族化が進み、祖父母と触れ合う機会が少ない子どもたち。最初はこわごわと接するそうだが、お年寄りに興味津々だ。一人一人いすを回って名前を尋ねたり年を聞いたりして楽しんでいる。
輪投げゲームでは、双方本気。「負きらんどー」「エイ、エイ、オー」と気合を入れ、「頑張れー」と声援を送る。この日は2点差でお年寄りチームの勝ちとなり、両チーム入り交じってのカチャーシーも飛び出した。
その後のおやつの時間は、並んでプリンを食べる。男の子が一生懸命おばあさんに話し掛けるが、耳が遠く聞き取れない。最後はほおをくっつけるように、ゆっくりとした口調で会話をし出した。耳元に顔を寄せ、「今日学校でね…」と話し掛ける真喜志碧音さん(7)の話を、おじいさんがにこにこして聞いている様子もほほ笑ましい。
口調優しく
子どもたちと交流するようになってから、お年寄りにも変化が見られるという。「明日も来てよー」と仲宗根ナヘさん(83)に言われ、「どうしようかなー」と答えるやんちゃな男の子。「なんでー、毎日来たらいいさー」と会話を交わす。
與座さんは、「週に1度交流をしていますし、誕生会やハロウィンなど、行事を心待ちにしています。会うごとに元気をもらっているようです」と話す。無口なお年寄りでも、子どもたちが来ると何かと話し掛けたり、掛け合いを楽しんだりするといい、「笑顔が増えますね」と話す。
田港ヒデさん(90)は、「かわいいねー。自分の孫はもう大きいもんだから、この子たちが来るとうれしいさー」と頭をなでる。子どもたちもお年寄りのゆったりとした動作や会話で心が落ち着くようで、けんかや大声を出すことが少なくなるそうだ。
お年寄りの帰る時間になり、学童クラブへ戻った子どもたちは、広々とした部屋で竹馬に乗ったりローラースケートで走り回ったり、まだまだ元気。宿題を始める子もいる。
先ほどとは変わり大声を出したり、友達とちょっとしたけんかになったり。お年寄りと接する時は、彼らなりに気をつかっているのだろう。
「毎日が運動会のようで、体力勝負ですよ」と與座さんは笑う。「子どもたちは、お年寄りに方言を教えてもらうなど、交流を楽しんでいるようですね」
双方に落ち着きといたわりの心を生む取り組みを行うみどり学童クラブ。この経験を生かし、将来お年寄りにかかわりたいという子もきっと出てくるはずだ。
島知子/写真・喜瀬守昭(サザンウェイブ)