「表紙」2014年10月16日[No.1540]号
南国の楽園を思わせる花、プルメリア。5枚の花びらがうっとりするような白い輝きを放つ。熱帯花木として高い人気を誇るが、県内で本格的に栽培が始まったのはつい最近の話だという。南城市玉城志堅原で、沖縄の気候を生かした熱帯植物を中心に約400種もの植物を育てる「オオシロ樹木」は、その元祖。代表取締役の大城朝榮さん(56)は「ハワイを訪れた時きれいだと思い、沖縄でもできないかと考えました。品種集めに苦労しましたよ」と笑う。
気候生かして約400種
小さい頃からとにかく植物が好きだったという大城朝榮さん。中学生の時から、将来は木を育てたり、庭を作ったりする仕事をしたいと考えていた。その思いをかなえるため、福岡市の西日本短期大学造園科に進学。卒業後沖縄に戻り、1983年に南城市玉城志堅原の実家近くの畑を借りて植物を育てる仕事を始めた。「沖縄では造園の仕事が少なく、自分の好きな木がなかなか販売されていませんでした。それで自分で作るしかないと思ったんです」
通販に活路見いだす
もともと植物好きで、大学で造園の技術を学んだ大城さんにとって、木を育てることは苦ではなかった。しかし、売ることは難しかったという。「自分の好きなものは売れるだろう、と思っているんですが、実際には売りたいものと売れるものの間にはギャップがあるんです」と苦笑いする。
栽培する品種の数が多いことも苦労の種だった。効率よく利益を得るには、品種の数をしぼって大量生産を行う必要がある。しかし、大城さんのスタイルは「多くの品種を少しずつ育てる」というものだった。
それでも、87年の海邦国体から2000年の沖縄サミットの頃までは、景気の波に乗って売れ行きは好調に転じ、92年には「オオシロ樹木」の法人化も実現した。
ところがその後、景気が後退。庭木の需要も落ちる中、沖縄の気候を生かした植物を通信販売で全国に出荷してはどうか、という案が浮かんだ。「通信販売なら、いい木を1、2本作ればお客さんが認めて高く買ってくれる。自分に合っていましたね」と話す。
通信販売にターゲットを定めた大城さんは、2001年頃、いち早く自社のホームページを開設。当時は植物を扱うネット販売業者が少なく、取り組むと同時に成果が上がった。
プルメリアがヒット
その中でも大ブレークとなったのがプルメリアだ。ハワイで愛され、ハイビスカスに次いで南国イメージの象徴といえる花だが、大城さん以前にプルメリアを販売する業者は、県外はおろか、沖縄にもほとんどなかった。台風に弱く、冬は葉が落ちるため人気がなかったせいだという。
しかし、大城さんは、「若い頃おばを訪ねたハワイで見てきれいだと思い、沖縄でも栽培できないかと考えていました」と振り返る。「でも、最初は苗もなく苦労しましたよ」
ハワイ帰りの人たちが記念に植えていた木を分けてもらうなど努力を重ね、葉の形や花の色、香りが異なる40種ものプルメリアを集めることに成功した。現在は需要の高い25種にしぼって栽培し、約8割を県外に出荷する。
人気なのはプルメリアだけではない。ジャスミンの一種、マツリカも評判が高く、最近では冬場を利用して作る多肉植物も注目を集める。
「オオシロ樹木」では、現在、約400種の植物を育てている。同業者では100種でも多いほうだというから、その数は相当なものだ。豊富な品種をそろえていることが、通信販売では大きな強みとなる。
「これだけの植物があって、みんな原産地も違うと、完璧な育て方ができないのが悩み」と大城さんは顔をしかめる。それでも、毎朝6時から隅から隅まで畑を見て回り、全ての植物の様子をチェックするなど、最大限の愛情を注ぐ。
11月上旬には、「一般の人の庭作りの参考になるように」と、畑の隣に約3年をかけて準備した展示場もオープン予定。植物を心から愛する大城さんの世界は、これからもどんどん広がっていく。
日平勝也/写真・村山望
南城市玉城字志堅原307-2
☎098(948)2531