「表紙」2014年11月27日[No.1546]号
頭を使い カラフルな岩を登る
壁一面に埋め込まれたカラフルなホールドと呼ばれる岩をよじ登るボルダリング。
その色使いの鮮やかさと配列にアートを感じる。「つかみ、登る」といったシンプルさゆえに、己の動物力を試されているかのような競技である。ゴールとなるホールドを目指し、さまざまな傾斜のあるルートを左右の手足を使い、次につかむべき岩を判断し進む。
ボルダリング歴2年の野原望(のぞみ)さんは、「続けているうちに自分が上達し、達成感を感じられるのがうれしい。全身運動なので体力作りにも良いですし、一つ上のレベルをクリアしたいので自宅でもストレッチなどに励んでいます」と話し、「日々の暮らしに張りが生まれた」というほど、すっかりと夢中だ。
最良のルートを考え全身を使う
岩のそばに貼られたテープでルートが示されたコースは、全部で200種類以上。課題や等級によって決められたホールドのみを使い登っていき、ゴールの岩に両手をそろえてつかんだところで完登となるのだが、そこに行き着くまでには頭と身体をフル稼働させる。
「力だけで登っていくというよりは、身体の向きや重心、バランスを意識するのがコツです。身体を振ったりねじったりするバリエーションを増やすことが上達のポイント。パズルのように考え、身のこなしをアドバイスすれば非力な女性でもクリアすることができます。靴さえあれば誰でも始められる気軽さなので、仕事帰りに寄る方も多いですね」と話すのは、那覇市天久のボルダリングジム「BOULBAKA」の後庵充(ごあんみつる)店長。関東出身だが、以前、沖縄に5年間住んでいた縁もあり「ボルダリングの楽しさを紹介したい」という思いから2012年にジムを開業。
「ここがオープンした2年前に比べれば県内の競技人口も増えていますね。ボルダリング競技など2つの競技でフリークライミングは国体種目にもなっています。今年の選考会で、僕はギリギリ届きませんでした(笑)。そういう意味では、誰でも全国大会へのチャンスがある種目だと思います」
やってわかる楽しさ
多い週だと、3〜4回は通うという始めて半年目の大城侑馬(ゆうま)さんは「最初のきっかけは、単なる好奇心から。何人かで遊びに来たんですけど、その時のメンバーのほとんどが今もボルダリングを続けています。やっぱり課題をクリアできた時の達成感がたまりません」と面白さを話す。
この日がボルダリング初体験という金城侑輝(ゆうき)さんは「思ったより難しいです。まずは課題をクリアできるように頑張ります」と奥深さを感じたかと思えば、2回目だという平仲良太さんは「1回目と違うコースをやってみましたが、コースによって使う筋肉が違いますね」と、一筋縄ではいかない攻略を楽しみ、回数を重ねるたびに新しい楽しみ方を発見する。
実際に記者もチャレンジしたのだが、難易度の低いコースでも苦戦。その様子を見た周りの人たちから、「ガンバ、ガンバ」と応援の声が飛んできて、ゴールをつかむと拍手をしてくれた。岩に一人真剣に向き合う個人スポーツだと思いきや、実は喜びをみんなで共有することができるスポーツだということが分かり、そこにとりことなる理由が見えた気がした。
ナガハマヒロキ/写真・喜瀬守昭(サザンウェイブ)
ロープを使わずに低い岩や岩壁を登るクライミングの一種。スタートホールド(最初の岩)をつかみ、身体を浮かせた状態でスタンバイ。テープや色分けされたホールドを使い、コースで指定された岩を選択し登り、ゴールの岩を両手でつかむことができればクリア。等級はジムによって異なるが、「BOULBAKA」の場合は8級〜2段の難易度に分けられる。
ボルダリングジム「BOULBAKA」
☎098-988-4550
boulbaka@me.com