「表紙」2014年12月4日[No.1547]号
銀盤の天使 聖夜に舞う
ターンやバック、そしてステップやスピン。日曜日の早朝、音楽に合わせてスピード感あふれる早さで氷上を滑るフィギュアスケートクラブ「サザンクロス」の皆さん。
世界で活躍する浅田真央選手や羽生結弦選手に憧れて始めた子や、初めて滑ったスケートが楽しくて、もっとうまくなりたいと思った子、いつかオリンピックに出場したいという大きな夢を持つ子など、5歳から中学3年生までの子どもたち20人近くが通っている。
コーチを務めているのは全日本フィギュアスケート選手権出場や、プロスケーターとして活躍した津留豊(つるゆたか)さん(37)。
南国沖縄と「アイススケート」という不思議な組み合わせだが、津留さんによると、沖縄には意外と氷の上を上手に滑る子どもが多いのだという。
日本最南端のアイスリンク
現在、九州以南で通年のアイススケートリンクがある県は福岡と熊本、そして沖縄だけ。
津留さんが県内唯一のスケートリンク「サザンヒル」とかかわったのは6年前。他県のコーチとしてチームを連れて沖縄合宿を行い、サザンヒルで練習をしている時、地元の子どもたちから「沖縄にはフィギュアスケートのコーチがいない」という話を聞いた。子どもたちの真剣な思いにそれならばと月に一度、沖縄に通いレッスンをすることにした。
立派なリンクはあるもののフィギュアスケートのバックアップ体制が整っていないことや、フィギュアを普及させたい思いから、本格的に指導を決意し、4年前に沖縄に移住した。
同時に沖縄スケート連盟を立ち上げ、子どもたちが大会に出られるよう日本スケート連盟に登録した。折りよくテレビではオリンピックや世界選手権で活躍する日本人選手の姿が大きく伝えられ、県内でも徐々にフィギュアスケートに興味を示す子が増えていった。
沖縄の子の潜在能力の高さ
津留さんは沖縄の子どもたちにスケートを教えて驚いたことがある。
それは、生まれて初めてスケート靴を履いた子が、当たり前のように両足でスッと立ち上がれることだ。「他の県でも多くの子どもたちを指導したけれど、ほとんどが体に力が入らず内股になったり、へたりこむことが多いのに、ここでは5歳の子が真っすぐ立って、コツを教えると滑れるようになるんです。身体の芯の力が備わっているという意味で沖縄の子はスケートに向いているのかも」
フィギュアスケートは滑れるだけではなく表現力も大切。スケーティングの中にジャンプやステップ、スピンの技術力、さらに手や顔の表情、全身を使った演技も求められる。
「今、クラブには全国大会の一歩手前の西日本ブロック大会まで進める子はいるんですが、まだまだ発展途上で技や演技など覚えなければならないことも多いです」と津留さん。
園田りんさん(山内中学1年)は「幼稚園生の時に母がテレビを見て私にやらせたいと思ったようです(笑)。最初はビデオを見て、スタッフにはターンやステップを習いました。小学2年生から津留先生の指導を受けるとどんどん上達できました。来年までにトリプルアクセルやルッツなど、5種類のトリプルジャンプを跳んで大会上位を目指したいです」と語った。
山田琉伸(りゅうしん)さん(城北小学4年)も「幼稚園生の時に津留先生に教わりました。初めは歩くのがやっとだったけれど、滑れるようになるともっと上手になりたいと思い、2年生でクラブに入りました」
津留さんは「沖縄にスケートリンクがあるのは貴重。だからこそ、フィギュアスケートの文化を根付かせたい」と語る。
沖縄にはジャンプが得意な子もいて、潜在的な力のある子が多いという。
いつか、南国沖縄育ちの冬季オリンピック選手の誕生が楽しみである。
嘉手川 学/写真・山下峰冬
フィギュアには初級から8級までの級があり、大会へは規定級に達しないと出場はできない。大会は年齢別に「ノービス」「ジュニア」「シニア」がある。全国を6つに分けた地区大会と東、西日本ブロック大会で上位進出した選手とシード選手に全国大会の出場が認められる。大会の点数はISUジャッジシステムで種目ごとに技術点、構成点、減点を算出し総合得点で順位が決まる。
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