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[No.1568]

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「表紙」2015年05月06日[No.1568]号

母娘燦燦

母娘燦燦 — おやこ さんさん — 6

城紅型染工房
玉城 政子さん 山城 祥子さん 吉濱 愛さん

2世代で紅型の世界広げる

 今やすっかり定番となったコースターや巾着袋などの紅型小物。着物の染織が主だった紅型で小物を作るというアイデアをいち早く思いつき、実際に商品化して世の中に広めたのが浦添市前田の「城紅型染工房(ぐすくびんがたぞめこうぼう)」だ。創業者の玉城政子さん(67)は職人歴50年以上のベテラン。2人の娘、山城祥子さん(37)・吉濱愛(デザイナー名・EYELAND)さん(34)も工房で母と働く。母が始めた紅型小物に、2人の娘が新しい世代ならではの感覚をプラスし、時には母が思いもよらなかった斬新な商品が生み出される。



伝統工芸に新風吹き込む

 首里石嶺の農家に生まれ育った玉城政子さんが紅型の仕事を始めたのは15の春。首里高校の夜間部に通いながら、昼間は紅型工房で働いた。プロの仕事を目の当たりして、その鮮やかな色彩に感銘を受けた政子さんは、工房の外でも制作中の紅型のことが気になって仕方ないほど仕事に打ち込んだ。

 高校を卒業したころ、国際通りに足を運んだ政子さんは、観光客が紅型を買い求める姿を目にした。しかし、そのほとんどは機械でプリントされたものだった。「買う人は本物だと思って買っていたんです。それで一枚でいいから本物の紅型を伝えられたらと思って、24歳の時、結婚と同時に工房を立ち上げました」



小物づくりがヒット

 工房を開いた当初は材料をそろえることさえ一苦労だったが、4年後の1975年に海洋博が開催されると注文が殺到。作っても作っても間に合わず、朝の4時から深夜まで働いた日もあったという。「仕事、仕事で時間にゆとりはなかったけれど、好きなものを作れるのが何よりうれしかったですよ」と振り返る。

 そんな日々の中、政子さんは紅型の世界に新風を吹き込む商品を生み出す。色鮮やかな紅型の文様をあしらったコースターや巾着袋だ。主に着物や踊りの衣装に用いられていた紅型を、毎日の生活に取り入れてほしいという思いで作った。

 「自分が持っている技術で、自分なりのものを作ろうと思ったんです」。政子さんには、首里高校を卒業後、洋裁学校に通った経歴もあり、身につけた技術を生かして作り上げた紅型小物は好評を博し、世の中に広まっていった。

 そして今、政子さんが切り開いた紅型小物の世界を、さらに押し広げようとしているのが、娘の山城祥子さんと吉濱愛さんだ。2人はそれぞれ県外の美術系大学を卒業した後、実家の工房で働き始めた。



娘たちの発想に期待

 政子さんは「娘たちには私がしたくてもできなかったことをしてほしい」との思いから、2人の娘に琉球舞踊と絵を習わせた。子どもの時に伝統文化や芸術に触れた経験が、現在の仕事の役に立っている、と祥子さんと愛さんは口をそろえて言う。

 姉の祥子さん、妹の愛さんともに、得意分野は紅型の古典柄を受け継ぎつつ、モダンな感覚を大胆に取り入れたデザインだ。2人の斬新なテキスタイルデザインは、数々のコンテストで入賞。2000年の九州・沖縄サミットの公式ウエアや沖縄都市モノレールの夏用制服に採用されるなど、その実力は折り紙つきだ。

 祥子さんと愛さんは、新しい世代ならではの感性を生かし、ベビー服をはじめとする新しい紅型のヒット商品も生み出した。「私が『こんなもの作ってどうするの』と思った商品でも、ネットショップに出したとたん売れていくんです。だから、今は私が娘たちについていこうと思っているんですよ」と政子さんは笑う。

 娘たちも「母は大先生。自分が親になってみて分かったが、子育てしながらずっと走り続けてきた母にはかないません」(祥子さん)、「母は染められないものがないというくらいすごい職人。少しずつでも技術を学びたいです」(愛さん)と、大きな信頼と尊敬を寄せる。

 3人に共通するのが「ワクワクしたい」という思いだ。祥子さんは「『ワクワク』が母の口癖。その言葉にとても影響を受けています」と話し、愛さんも「伝統工芸は常に新しいものにしていかないと。古典柄も、当時の人々にとっては斬新なデザインだったはず」と新しいことに挑戦する意気込みを語る。

 紅型小物のパイオニア・政子さんの心は、2人の娘に確実に受け継がれている。

日平勝也/写真・村山 望



プロフィール

たまき・まさこ
1947年生まれ。15歳の時から紅型の仕事を始める。1971年、浦添市前田に「城紅型染工房」を設立。ことしで創業44周年を迎える。

やましろ・しょうこ
1977年生まれ。女子美術大学短期大学部服飾デザインコースを卒業後、城紅型染工房で勤務。2002年「第1回かりゆしウェアコンテスト」ゴールド賞受賞。企画・デザインが得意分野。

よしはま・あい
1981年生まれ。首里高校の染織デザイン科、京都芸術短期大学染織テキスタイルコースを卒業後、城紅型染工房で勤務。2000年の「OKINAWAテキスタイルデザインコンテスト2000」ゴールド賞受賞。デザインを得意とし、「EYELAND」というデザイナー名で活動する。

●城紅型染工房
沖縄県浦添市前田4−9−1
☎098(887)3414(10時〜18時、日曜定休)
http://gusukubingata.com/

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城紅型染工房
城紅型染工房1階ギャラリーで自慢の作品を披露する玉城政子さん(写真中央)と娘の山城祥子さん(写真右)、吉濱愛さん。同工房は傘やストール、バッグなどユニークな紅型商品を次々生み出し、県外に熱心なファンも多い。=浦添市前田 

城紅型染工房
ギャラリーの2階。工房のスタッフとともに、親子で作業を分担する
城紅型染工房
和紙に柿渋を塗った型紙を手にする政子さん。若い時に作り、もう30〜40年は使っているという
城紅型染工房
祥子さんは琉球舞踊の大会で受賞したことも。授賞式で着た着物は、愛さんが首里高校染織デザイン科の卒業制作で染めたもの
城紅型染工房
19歳の政子さん。当時出入りしていた故・名渡山愛順氏の工房にて
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