「表紙」2018年01月11日[No.1707]号
二人でハンドボールを指導
ハンドボール王国都市宣言をしている浦添市にある小学校の中でも屈指の強豪校・浦城小学校。約50人の部員が練習に励んでいる。チームの監督を務めるのは粟國茂則さん(55)。同校でハンドボール部の指揮を執って約20年。結婚してからは妻のさおりさん(53)と共に夫婦で指導を行っている。「地域のつながりや保護者のおかげ」と周囲の環境や協力に感謝しながら、これまで全国優勝2回をはじめとする輝かしい実績を子どもたちと一緒に残してきた。
部員の成長が何よりの喜び
茂則さんが浦城小学校でハンドボール部の監督になったきっかけは「顧問の転任で指導者不在になってしまうので、新たに就任してくれないか」と知人に頼まれたことからだった。
自身も中学の頃にプレーしていたこともあり〝走って跳んで投げる〟ハンドボールは基礎体力づくりにも良いと考え、依頼を引き受けた。
二人三脚のおしどり夫婦
ハンドボールの指導は、夫婦の二人三脚で行う。茂則さんは技術・戦術面を教える。「試合で結果を出して喜んでいる姿を見るとこちらも喜びを感じます。子どもたちは結果が出ないとと素直に涙をこぼす。そのたび、次は笑顔にさせたいと、毎日積み重ねの連続です」
一方のさおりさんは「あいさつや片付けなど、こっちが言わなくてもしっかりできるようになり、人間的な成長が見られた時は、やってて良かったなと思います」と、生活面やハンドボールを好きになってもらうことを心掛けた指導を行っている。
指導者として夫婦として、ほとんどの時間を一緒に過ごしている二人。家に帰ればどのような夫であり妻なのだろうか。
「クリスマスやひな祭りの時には、部屋の飾りつけをしてくれたり、季節の料理を作ってくれたりするので、家庭が華やかになります。最近は晩酌にも付き合ってくれるのがうれしいですよ」(茂則さん)
「彼のおかげで楽しみが増えました。それまではインドア派だったのですが、ハンドボールやアウトドアなど新しい楽しみを教えてくれる。毎年、年越しの瞬間はキャンプをして過ごすんです」(さおりさん)と、互いに人生に潤いを与えあっている様子が伝わってくる。
教え子から力をもらう
取材時、二人のツーショットの写真を撮ってると、そばで見ていた部員たちから自然と拍手と歓声が湧き上がった。指導者としての二人に見慣れている分、夫婦として映る二人が新鮮に見えるようで、部員たちも大喜び。「監督は、練習の時は厳しいけど終われば優しい。普段から(二人が)仲良しな様子は伝わっています」とは部員の声。
そんな教え子たちの声に、二人は「私たち夫婦は子どもがいないので、今指導している子たちがまるで自分たちの子どものようなんです。子どもたちからパワーをもらうことも多く、それが原動力になっています」と愛情たっぷりに応える。
将来については、できるところまでハンドボールに携わり、その後はゆっくりと旅行にでも行きたいねと話し合っている。教え子が2020年の東京オリンピックに出場し、その応援に行くのが当面の夢だという。
夫婦としての歩みも、教え子の成長を楽しみにしているまなざしも、同じ方向を向いているおしどり夫婦の姿に感銘を受けた。
(ナガハマヒロキ)
円満の秘訣は?
茂則さん: 深く考えたことはないですが「相手を受け入れること」ですかね。意見が違っても、ぶつかるのではなくて吸収する。そしたら口げんかしても尾を引きませんから。さおりさん: よく話をすることでしょうか。ハンドボールや指導している児童の話、共通の趣味や飼っている犬の話題など、意識しなくても自然と会話は多いかもしれません。
プロフィール
あぐに・しげのり: 1962年浦添市生まれ。中学時代にハンドボールと出会う。その後ハンドボールから遠のくが、98年に後輩の依頼により指導者として母校・浦城小学校ハンドボールクラブの指導を開始、今年で20年目を迎えるあぐに・さおり: 1964年久米島町(旧仲里村)生まれ。高校時代は陸上選手として活躍、卒業後に神奈川県内の美容室勤務。85年帰郷し花屋さんで勤務、2004年茂則さんと結婚し二人三脚でハンドボールの指導に携わる。
写真・喜瀨守昭