「表紙」2018年08月30日[No.1740]号
9月4日(火)は古酒(クース)の日。今週の週刊レキオでは、沖縄の誇るべき文化の一つである「古酒」の特集を組み、その魅力にあらためて迫ります!
現存最古の古酒 守り伝える
沖縄には、かつて名だたる家々が、古酒を家宝のように大切に守り、代々受け継ぐ風習があったという。しかし残念ながら、沖縄戦によって、そのほとんど全てが失われてしまった。そんな中、奇跡的に戦火を免れた古酒がある。現在最古、約150年物という貴重な古酒の姿をカメラに収めるべく、レキオ記者は、那覇市首里赤田町の識名酒造を訪れた。
首里赤田町は、首里崎山町、首里鳥堀町と共に、琉球王国時代に王府から泡盛の製造を許されていた首里三箇(さんか)の一つ。
「大角座(ウフカクジャー)」と呼ばれる県道82号線沿いの六叉路・赤田交差点から西に進み、入り組んだ路地を進むと、ことしで創業100周年を迎える老舗の酒造所、識名酒造が見えてくる。ここに、現存する最古の品といわれる約150年物の古酒がある。4代目社長の識名研二さんにお願いし、その貴重な古酒を特別に見せてもらえることになった。
沖縄戦により、そのほとんどが失われてしまったという戦前からの古酒。なぜ、識名酒造の古酒は、戦火を免れることができたのだろうか。
地中で戦火免れる
首里の街は、空襲の被害で焼け野原になった。識名酒造も例外ではなく、建物が焼失。しかし、先々代の識名盛恒さん(故人)が地中深くに古酒の甕を埋めたことで、奇跡的に破壊を免れた。
「建物がすべてなくなってしまったので、埋めた場所が分からなくなり、かなり日数がかかったそうですが、何とか掘り出してきたそうです」と識名さんは発掘の経緯を話す。甕を探し当てた時、盛恒さんは「これで識名家はもう大丈夫だ」と述べたという。
掘り出された3つの甕のうち、1つは割れており、2つが現存。そのうちの1つは約150年物、もう1つは約130年物と言い伝えられている、と識名さん。
識名さんが仏壇の下の扉を開けると、大小2つの甕が現れた。小さい甕に約150年物、大きい甕に約130年物の古酒が貯蔵されているという。よく見ると甕にはかすかに土が残されており、地中で難を免れたというエピソードを裏付ける。時の重みを感じさせる堂々とした風格だ。
古酒は識名家の家宝として大切に保管されており、識名さんも仕次ぎに立ち会ったのは3回ほどという。「次の仕次ぎの時期は、皆で相談して決めたい」と話す。
* * *
戦前から伝わる古酒は残念ながらほとんど失われてしまったが、古酒の文化は未来に向かって開かれている。古酒は、個人でも育てていくことができるからだ。
今週号のレキオでは、古酒の基本的な特徴をまとめ、個人で熟成させる方法について紹介する。やり方は思うよりずっと簡単だ。ぜひ家庭で挑戦してほしい。
この先、われわれの手で、100年、200年の古酒を子孫に伝えていくことに期待したい。
(日平勝也)
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