「表紙」2018年09月06日[No.1741]号
島猫を見て思い出すシマンチュ
昔ながらの沖縄の原風景と、琉球独特の色をテーマに写真を撮り、さまざまなアートデザインも手掛けている仲程長治さん。最近、新たなテーマが加わった。それは、「島猫」。沖縄の猫たちを主役にした映像作品も発表し、「映画監督」という新ジャンルにも挑戦している仲程さんに、進行中の島猫プロジェクトについて、そして創作活動について話を聞いた。
「島猫は昔のシマンチュ(島の人)そのもの」と話す仲程さん。暑い夏の日に、あまり動かずにじ〜っと寝ている外猫を見て「空気に同化していると思いました。エアコンがなかった時代、人間だってそうやって夏を過ごしていたなと思い出しました」と笑う。
数年前の夏の日に石垣島の実家に帰ると、蒸し暑い部屋で母親が丸くなって昼寝をしていた。その姿が「まるで猫のようで」カメラに収めたという。島の原風景が薄まりつつある近年の沖縄は、「被写体にする機会が減っていた」という仲程さんだったが、人間の暮らしのそばで島の空気になじみ、変わらない風景をじっと見つめている島の猫たちを「記録しておきたい」気持ちが湧き起こった。
島猫目線で映画撮影
仲程さんいわく、沖縄で生まれた猫は「飼い猫も野良猫もみんな島猫」で、どこか野生の力を感じさせるという。街開発が進み住処を追われながらも、たくましく生きる島猫のありのままを写真と動画で撮影した。
「台風の日はどうしているか見に行くと、木の穴に入って寝ていました。昔は僕たちも台風の時には家族でギュッと集まって、自然の猛威が去るのを待っていたなぁと。いつかの母の昼寝姿にも重なり、『島猫は昔のシマンチュだ』と気付きました」
撮り続けるうちに、以前気が付かなかった島猫の居場所が分かるようになり、新たな魅力も発見した。
「地面に這うようにして撮影していると、知恵が見えてきます。猫の視野は人間よりも狭いですが、低いところから高いところまで見渡して、温度や気圧の変化も敏感に感知していると思います」と、仲程さんは熱く語る。島猫目線にこだわって撮影・監督・編集した島猫映画『ニャハ!パートゼロ』は今春沖縄国際映画祭で上映され、現在は県内各地で上映イベントを展開している。
島猫たちがおしゃべりをするユーモアたっぷりのシーンがあるかと思えば、ドキュメンタリータッチでTNR(飼い主のいない猫を捕獲して不妊去勢手術を行い、元の場所に戻す)活動も盛り込んだ本作は、「猫の見方が変わりました」、「島猫たちのせつない生きざまが描かれている」という感想が多く来るという。
島猫をアートでブランドに
島猫映画の制作で仲程さんの周りには、猫に関する創作活動をしている仲間が集うようになった。
「島猫の地位を向上させ、人間も猫も幸せに暮らせる社会を目指す『島猫力向上委員会』が発足しました。アート表現を楽しみつつ、沖縄の猫たちの厳しい現実に少しでも関心を持ってもらえれば」。また映画の次作は、西表島が舞台のドキュメンタリー作品に決定。「ヤマネコを独自の視点で撮りたいですね」と意気込んでいる。そして活動拠点のアートスペース「Caと(キャット)」もオープン。創造性にあふれた島猫の魅力をアピールする場として、多彩なイベントを計画中だ。
「島猫様のお導きなのか、広がりは予想を越えています。どんな時代でも自然に逆らわず、しなやかに今を楽しんでいる島猫たちを見習って、クリニャンティブに生きていきたいですね」
(饒波貴子)
<プロフィル>
なかほど・ちょうじ
1959年生まれ、石垣島出身。20代から写真撮影他、多分野のアートデザインを手掛ける。「ニャハ!」で映画監督デビューを果たし、10月には京都国際映画祭アート部門に「島猫目展」を出展する
※活動やイベント詳細は公式サイト参照 https://www.choji.net
<インフォメーション>
◆島猫たちの言葉を
つづった万年日めくり「島猫めくり」
ニャハ!公式ショップ(https://nyaha.official.ec)にて販売中
◆島猫映画「ニャハ!パートゼロ」上映情報
・9/22(土)13時開演 ねこサミット@沖縄県立博物館美術館 博物館講座室
(問い合わせ:tsunagu.okinawa@gmail.com)
・9/28(金)14時開演(上映のみ)/19時開演(初恋クロマニヨン、ありんくりん他出演のスペシャル上映)@よしもと沖縄花月
(那覇市前島・問い合わせ:☎︎098-943-6244)
「島猫めくり」