「表紙」2018年09月13日[No.1742]号
挑戦に終わりない
北中城村安谷屋にある女性専用の空手道場「上地流アゲダ女性道場」。町田初子館長(68)が女性にも門戸を広げようと19年前に創設した道場だ。ここでは幅広い年齢層の女性が毎週金曜日に集まり本格的な稽古に励んでいる。「年齢は関係ない」と考える町田館長の下では多くのシニア世代も目標に向かい挑戦中だ。
「シュッ、シュッ」「エイッ」。 午後8時、道着のこすれる音と掛け声が道場全体に響き渡る。女性たちが毎週金曜に集まるのは上地流アゲダ女性道場。女性にも沖縄の伝統空手を伝承したいと19年前に町田初子さんが立ち上げた女性だけの道場だ。門下生は10代の大学生から78歳までの約30人。40代〜50代を中心に年齢も職種もさまざまだ。
退職後に見つけた目標
空手歴11年の安村美代子(72)さんは小学校校長を退職後「健康維持のための生涯スポーツとして始めた」という。その後、安村さんの紹介で校長仲間だった宮城邦子さん(69)、嘉陽恵子さん(68)、知念峯子さん(68)の3人も入門。現役時代、スポーツをする時間もなかったという4人は、新しい環境で毎週のように稽古に励んでいる。
安村さんは「現役の頃と違い、それぞれ職種が異なる人が集まっていて新鮮。でも空手への真摯(しんし)な姿勢は共通なものがある」と語る。
稽古は、形の稽古や指導者が突きや蹴りを入れ全身を鍛える「三戦(さんちん)鍛え」など、本格的だ。
「2時間たっぷり汗をかいた後の爽快感は何ともいえない。次の技や段に挑戦したいという意欲が湧いてくる」と宮城さんは笑顔で話す。
始めたときは覚悟もなく、形や稽古の順序を覚えるのに精一杯だったという4人は、今では全員有段者。向上心は増していくばかりだ。
嘉陽さんが「校長試験が最後だと思っていたら、また試験を受ける機会がやってきたのが不思議。昇級・昇段試験の緊張感は新鮮で、合格したときは喜びと達成感が得られる。また頑張ろうと、いつまでも夢を追いかけられる」と言えば、知念さんも「やればやるほど奥が深く難しい。何年続けても終わりがない」と空手の魅力について力説する。
女性への門戸を開放
最年長の町田常子さん(78)は、空手歴15年。63歳の時に同道場に入門した。こつこつと練習を重ね、4段まで上り詰めた。来年には5段の昇段試験に臨む予定だ。
子どもの頃から空手を習いたかったという町田さんは20代の時、空手道場の門を叩いた。しかし、女性は難しいと入門を断られ、「ずっと諦めていた」。町田初子館長の存在を知り同道場に入門。「入門当時はまわりが若い人ばかりで、追いつくのが大変だった。ここまでくるのは長かった」と振り返る。
そんな町田さんの姿は、他の門下生の刺激になっているようだ。宮城さんは「常子さんはみんなの目標。自分たちも頑張れるかもしれないと大きな励みになる」とほほ笑む。
多くの女性を育てた同道場。来年は創設20周年を迎える。記念の演武会を成功させることが近々の目標だという町田館長は、「上地流の基本である伝統空手を伝授するのが私の使命」と語る。「若い人にも空手に興味を持ってもらい、入門してほしい」と女性への普及に意欲的だ。
何歳になっても目標に挑み続ける女性たち。真剣になれるものを見つけた彼女たちの表情は充実感に満ちあふれていた。
(坂本永通子)
アゲダ女性道場
☎︎098-935-3600