「表紙」2021年11月18日[No.1906]号
育児・介護と仕事の両立―。悩み抜いた経験生かす
「働く人の生き生きを組織の活力へ」。これまで延べ100社以上の県内中小企業を中心に、働き方改革や人材定着、人材育成のプログラム構築を手掛けてきた「コズミック コンサルティング」。代表の波上こずみさん(45)は、育児・介護と仕事の両立に悩んだ経験を生かし、成長する元気な組織づくりをサポートしている。
「かつての私はバリバリ仕事をしていたんですよ」と波上さん。仕事が好きで、残業はほぼ毎日。長時間労働に励む自分を「頑張っている」と思い込んでいた、と振り返る。
那覇市首里金城町で育った波上さん。大学は東京に進学。経営学を学んだが、「離れてみて沖縄の魅力に気づき、観光業に興味を持つようになった」。観光業を学ぶため、オーストラリアに1年間留学。身に付けた語学力も生かし、2001年に東京のJTBワールドに入社。海外パッケージツアー商品の企画や手配等の業務に携わった。
2004年、沖縄に戻り沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)に入職。沖縄観光客誘致や受け入れの仕事に取り組み、実績を積んだ。
しかし、そんな多忙な日々は、二つの出来事により変化を余儀なくされる。一つは出産、一つは父の介護だった。
生き方を見直す
第一子を2008年に出産した波上さんは、時短勤務を始めた。他の社員らが残業する中、子どもを迎えに行く自分に「後ろめたさがあった」と表情を曇らせる。残業ができなくなったことで仕事が思うように回らなくなり、やりたい仕事と現実のギャップにも苦しんだ。
さらに、第二子の出産と前後して、実父が要介護者に。介護に奔走する中、入居まで100人待ちもあるという介護施設の過酷な現実を知り、がくぜんとした。
「苦しかったですね」。介護と育児、仕事の間で板挟みとなった波上さんはメンタル不調に陥り、半年間休職する。
「その時、今までの仕事や生き方を見つめ直し、私と同じように育児や介護で働く時間に制約がある人が輝ける会社や組織がもっと増えてもいい、と思うようになりました」
波上さんはワークライフバランスの勉強を始め、OCVBでも人材育成の業務に携わるようになる。2016年4月、組織コンサルタントとして独立。翌5月に「コズミック コンサルティング」を設立し、代表に就任した。
組織と個人の成長支援
コズミック コンサルティングでは、「せっかく育てた社員が辞めていく」「受け身の社員が多い」など、組織が抱える表面的な課題を、人と人との関係性やチーム間の連携など、目に見えないソフトな側面に注目して解決の糸口を探っていく。根っこの部分を改善することで社員のモチベーションを高め、組織全体を育てていくことが目標だ。
企業組織で働いてきた経験、育児と介護に奔走した経験が、組織コンサルタントとしての強みになっている、と波上さんはほほ笑む。
設立した当初は活動を理解されないこともあったが、ここ2、3年で風向きが変わってきたという。2019年から働き方改革関連法案、2022年4月からは改正育児・介護休業法が順次施行される運びとなっており、コロナ禍で今までの組織の在り方が見直されていることと相まって、「人をどう生かしていくかという流れが生まれてきているのでは」と状況を見る。県内企業へのコンサルティングに加え、年間100件以上の研修も実施しているそうだ。
今年の11月からは、個人を対象に、コミュニケーション法や組織開発、課題解決法などビジネスに必要なスキルを体系的に学べる「コズミックビジネス塾」も開講。「不確実な時代の中、個人が環境に左右されない働き方を促進したい」とビジョンを話す。
「県外の方に、沖縄出身だと話すと憧れを抱かれることがあり、私はそれを誇りに思っています。働くという観点からも、『沖縄の人たちって元気に働いていていいね』と言われるようにしていきたいです」
(日平勝也)
コズミック コンサルティング
☎︎ 098-960-9627