「表紙」2022年10月20日[No.1954]号
健康な生活習慣の礎に。
無理なく続ける健康体操
「日本最初の健康体操」とされる自彊術。 体の各部位をたたく、ひねる、伸ばすなどを組み合わ せた31の動作で構成され、シンプルでわかりやすいのが特徴だ。健康づくりや生活習慣の改善、 ストレス解消に役立てようと、県内各地にも愛好者がいる。自彊術歴40年以上となる指導者・ 東安子さん(88)の教室を訪ね、その魅力や効果について聞いた。
那覇市の壺屋児童館で毎 週火曜日に行われている東 安子さんの自彊術(じきょう じゅつ)教室。開催日に訪ねる と参加者たちが車座になっ て「いち、に、さん、し」と声を 出しながらリズミカルに体を 動かしていた。
参加者のほとんどは 70 代の 女性。毎回 10 〜20人程度が参 加するという。長年続けてい る人が多く、前屈や開脚など の動作がスムーズで柔軟であ ることに驚かされる。講師の 東さんに至っては、前屈の際 に手首が足先よりも前に出る ほどの柔らかさ(写真参照)。 片足立ちや腕立て伏せも難な くこなしている。
自彊術との出合い
自彊術の始まりは1918 年(大正5年)。東京・両国 であんまやマッサージを行っ ていた中井房五郎が考案し た。当時の実業家・十文字大 元の病気を治療した中井の技 を基に作り出された体操であるという。名称は中国の古典 『易経』の一説、「天行健、君子以 自彊不息(テンコウケンナ リ、クンシハミズカラツトメ テヤマズ)」から取ったも の。じょうず、へたではな く、自分の意思で毎日続ける ことこそ重要と説いている。
東さんは自彊術を始めて 40 年以上。リウマチを患い、手 術と入退院を繰り返していた 時に、公益社団法人 自彊術 普及会の第2代会長で医師の 故・近藤芳朗さんの講演を聞 いたことがきっかけだった。
当時沖縄では自彊術を学べ る場所はなかったが、講演会 を聞き、心身の健康を手に入 れたいという有志が集まった のだという。東さんは東京に も足を運び、その動きを学ん だ。自彊術普及会沖縄支部の 立ち上げにも尽力し、東さん の夫、故・清志さんは初代会 長も務めた。
自彊術を継続して行ったこ とで東さんのリウマチの症状 は改善。車椅子生活のリスク もあった状態から健康を取り戻した。 「現在は変形も止まり体も ぴんしゃん! ハンドルを 握って運転もできます。少し は効果あったんじゃないかね (笑)」 冗談めかしながら、笑顔で 話してくれた。
自分のペースで
東さんの教室では、まずは 座りながらの柔軟体操、その 後、自彊術の 31 の動作に入 る。自彊術の動作では、はず みをつけて動くこと、呼吸や 掛け声を意識することも大事 とされている。 「キツいと感じる動きは途 中で止まってください。無理 しないで」
自身も体を動かしながら参 加者たちにそう声をかける東 さん。個々人のペースややる 気を尊重することも自彊術な らではの考え方だ。また、体 操の合間や教室の最後に は、「大切なのは食生活と運動のバランスですよ」と念を 押すことも欠かさない。
「昨年は腰の手術をして2 カ月入院したんだけど、また 戻ってきて続けているよ」
そう話してくれたのは、参 加者の松堂静子さん。東さん の教室に通うようになって 22 年目。自彊術は大切な生活の 習慣となっているようだ。参 加者同士も仲が良く、にこや かにおしゃべりしながら、お 互いの体調を気遣っている。 長年通う人が多いのは、自彊 術の効果もさることながら、 教室の和やかな雰囲気も一役 買っているのかもしれない。
東さんが講師を務めるのは 壺屋児童館の教室(毎週火曜 10 時 15 分〜)とウエル・カル チャースクールで開講してい る2クラス。この他、県内各 地の自治体などでも健康講座 として教室が開講されてい る。自彊術は、柔軟や体の動 作に自信がない、という人に も継続しやすくおすすめだ。
(津波 典泰)