「表紙」2023年02月16日[No.1971]号
亜熱帯の自然との触れ合い楽しむ
沖縄は海ばかりが注目されがちだが、亜熱帯の森に覆われた山も忘れてはならない。標高が低く、登 山道が整備されている場所もあり、豊かな自然を満喫しながら気軽に登山ができるのが魅力だ。登山 愛好家たちでつくる「沖縄山岳会」は、沖縄本島を拠点に登山や沢登りなどを実施。同会を設立した田 場典淳(てんじゅん)さん(65)は、登山人口の少ない沖縄で登山を普及・振興させていきたいという。
1981年に結成された 「沖縄山岳会」。県内で最大規 模の山岳会で、 50 代を中心に 中学生から7 0代後半まで約 120人が在籍している。「山 岳会に入って登山を始める人 がほとんど。本土から来た登山 経験者も入会している」と初 代会長の田場さんは話す。標 高が低い沖縄の山は高山病な どの心配もなく、登山道が整 備されていれば初めての人でも トライしやすいという。
秋から春は山へ、暑い夏に は川へ向かい沢登りを楽し む。「沖縄には沖縄ならではの 山の楽しさがある。夏場の沢歩 きも水の中をジャブジャブと 歩いて楽しい」と笑顔を見せ る。その他にも草木観察会や クライミング、キャンプ、清掃登 山、県外での本格登山なども 実施。講習会などもあり、登山 に必要な知識や技術も教えて いる。
沖縄でも山登りができる
「『沖縄に登る山はあるの?』 とよく質問される」と笑う田 場さん。「北部の山は平均標高約400㍍。亜熱帯の植物が あり、きれいな花もたくさん咲 いているのが特徴」だという。本 土の人たちは、県外の山岳地 帯ではなかなか見られないやん ばる独特の動植物や景色を見 て喜ぶという。山岳会副会長の 細川浩(ゆたか)さんは「沖縄の 山はもともと登る人が少ない ため、本土の山に比べてすいて いる。だから山が荒れずに自然 が残っている」と続ける。
田場さんの登山歴は 40 年以 上。県外で過ごした学生・社会 人時代に登山を覚え、とりこ になった。帰沖した当時、沖縄 の登山情報はなかった。「沖縄 で登山ができるか分からず、 (登山を中心にアウトドア活動 を行う)琉球大学のワンダー フォーゲル部と一緒に活動を始 め、山の情報を教えてもらっ た」。その後、登山やイベントな どで知り合った人たちに呼び かけるなどしてメンバーを集 め、山岳会を設立。以来、県内 外で登山を続けてきた。
「山の日」全国大会の会場に
良く晴れた1月下旬、国頭 村内で実施された登山に同行 した。植物観察会を兼ねたス ローペースの登山だ。参加者 16 人と共にベテラン会員のリー ダーの案内で山に入った。やん ばるの山地の森の中は、上空を 覆う木々が直射日光を遮って くれる。沖縄の植物の専門家に よる解説を聞いたり、時折眼 下に見える海の景色を楽しん だりと、ここでしか味わえない 体験に満ちた山登りを満喫し た。
登山の魅力は登り終わった 時の達成感よりも行程だとい う田場さん。「山頂に行くまで のアプローチが好き。景色はき れいだし、帰ってきてからまた 行きたいと思わせてくれる」と 話す。
今年8月には、「山の日」(8 月 11 日)を記念する第7回「山 の日」全国大会が初めて沖縄で 開催される。会場は世界自然 遺産にも登録された国頭村、 大宜味村、東村と西表島。3月 25 日に行われる奥武山公園の キックオフイベントを皮切りに 各種イベントを展開し、全国大 会をPRしていく。沖縄山岳会 もクライミング体験イベントを 実施するという。「できれば地 元の人に多く参加してもらい たい」と期待する。
「目標は登山の普及。沖縄で も登山ができるというのを分 かってもらいたい」と田場さん は話す。貴重な動植物の宝庫の 山々や世界遺産にも認められ た地域の素晴らしさと登山の 魅力を広めていきたいと願って いる。
(坂本永通子)
沖縄山岳会
☎090-7923-9110〔 田場〕
https://sangaku-sc.spoyell.okinawa/
(沖縄山岳会が加盟する「沖縄県山岳・スポーツクライミング連盟」HP内にイベント情報などあり)
第7回「山の日」全国大会HP
https://www.okinawa-mt.com/
写真・村山 望