「表紙」2024年05月16日[No.2036]号
コツコツ70年。古銭収集の成果を展示中
那覇市牧志で骨董店「古美術 なるみ堂」を営む翁長良明さん。県内屈指の古美術コレクターと して知られる。今年は、収集の原点である古銭との出合いから70 周年。宜野湾市立博物館では、 膨大な所蔵品を公開する「お金で世界を感じ展」が開催されている。展示の様子と、古銭収集にか ける情熱をリポートする。
宜野湾市立博物館で開催 されている「お金で世界を感 じ展」。入場すれば、ところ狭 しと並べられた、世界の古銭 の量に圧倒される。
中国でかつて用いられた刀 銭(とうせん)や馬蹄銀(ばて いぎん)といった特殊な形状の 硬貨。ローマやギリシャ、エジプ トの硬貨は紀元前のものも ある。琉球王国で流通した貨 幣、戦後沖縄で使われたB円 も並ぶ。壁側のパネルに並べら れるのは、世界の国や地域の 紙幣と切手たちだ。
「これでも展示量を抑えた 方。家にはまだまだあるよ」 記者に展示を案内しなが ら、翁長さんが笑顔で話し た。
少年と中国銭
1948年、那覇市首里平 良町に生まれた翁長さん。小 学1年生の時、雨あがりの首 里城の敷地内で中国銭(琉球 時代に大量に輸入され流通 していたもの)を拾ったことが 古銭収集のきっかけとなった。
大人になってからは、調理 人や弁当店の経営で生計を 立て、骨董の収集と歴史的背 景を学ぶことに時間を費や した。「人生ずっと仕事。酒も タバコもやらない」ことが自慢 だ。結婚した際は、妻からコレ クションを処分して家を買う ように提案されたこともあっ たという。収集は自分にとって 大切なことだと理解を求め た|。そんなエピソードも教 えてくれた。
展示の見どころは
今回の展示がユニークなの は、年代や国といった直線的 な分類に縛られずに資料を 並べていること。生き物のデザ インが入ったお金、大きなお 金、小さなお金、製造に失敗 したお金…。子どもにも興味 を持ってもらうためのしくみ であるそうだ。
「子どもたちに、『世界はこ んなに広いんだ』と気付いて もらえたらいいな」
翁長さんはそう思いを語っ た。
実は、翁長さんの宜野湾市 立博物館での展示は今回で 2度目。前回は2004年、 古銭収集 50 周年の節目だっ た。 70 周年は宜野湾市立博 物館の開館 25 周年とも同じ タイミングになっている。
「宜野湾市にゆかりのある 偉人に関するお金の展示も ありますよ」と話すのは、同 館館長の平敷兼哉さん。紹介 されているのは察度王、民俗 学者の佐喜眞興英、画家・彫 刻家の山田真山ら。それぞれ が生きた時代に流通していた お金を並べている。
大ボリュームの展示は来月 2日(日)まで。「人間コツコツ が大事」と語る翁長さんか ら、生き方のヒントをもらう こともできるかもしれない。 じっくり時間をかけて見るの も、何度も足を運ぶのもおす すめだ。
(津波 典泰)
「お金で世界を感じ展~翁長良明氏古銭収集70年間のあゆみ~」
場所:宜野湾市立博物館(宜野湾市真志喜1-25-1)
開催期間:~6月2日(日)
時間:9:00~17:00(最終入館16:30)
料金:無料
写真・村山 望