「表紙」2024年07月11日[No.2045]号
伝統の技法と柔軟な発想で作品作り
琉球藍をはじめとする沖縄の草木で麻や綿の糸を染め、手織りで作品作りをしている「花 藍舎(からんしゃ)」。小浜島で技術を学んだ染織家の宮良千加さんが2012年に立ち上げ た工房だ。近年は県内のさまざまな作家とのコラボも増え、製品の幅も広がりを見せている。 昔ながらの技術を使い、自由な発想でものづくりを行っている宮良さんの工房を訪れた。
勝連城跡の麓に宮良千加 さんが営む染織工房「花藍 舎」がある。「琉球藍を中心に フクギ、ゲットウ、サクラなど、 沖縄の大地で育まれた草木 で糸を染め、手織りで仕上げ ています」と宮良さん。混じり 気のない深い藍色や緑色や黄 緑色、水色など、自然の色で 染められた糸からさまざま な作品が生み出されている。
宮良さんが花藍舎を立ち 上げたのは2012年。今で は従来のストールやテーブル マット、コースターなどに加え、 衣類やバッグなどのコラボ製 品も手掛けるようになった。 「異分野の作家さんとつなが ることで、今までになかったも のが生まれる。それがすごく 楽しい」と話す。最近では鍼灸 (しんきゅう)師とコラボ、体 を支えるために使う帯「草寿 帯(そうじゅおび)」の開発も 行った。原料となる藍や芭蕉 の栽培も始め、徐々に原料の 製造にも乗り出している。
染織を学びに沖縄へ
大阪の生地屋に生まれた 宮良さん。高校生の時に親戚 から土産にもらったインドネ シアの絣(かすり)「イカット」に 出合った。「自分はこういうも のを織る人になりたい」。19 89年、琉球大学へ入学した。 進学先に沖縄を選んだのは、 染織物の宝庫と知ったからだ。
「織物の師匠を探そう」と、 伝統工芸展や織物の店に足 を運び続けた。そんな中、出 合ったのはなんとやちむん。い つ見ても心がドキッとする作品 の作家が、陶芸家の島袋常秀 さんだった。読谷の工房に「助 手にさせてほしい」と直談判に 行くと、「いいよ」と二つ返事で 承諾。島袋さんの下で5年間、 大学卒業後は人間国宝の金城 次郎さんの工房で2年間修業 を重ねた。やちむんに携わる中 で「用の美」を学んだ。
転機は沖縄に来てから7 年後、やちむんの道に進もう と気持ちも切り替わっていた 時だ。休暇中に訪れた小浜島 で散歩していると、機織りの 音が聞こえてきた。そこでリ アカーに藍の葉を積んで手を 青くしたおばあさん、成底ト ヨさんに出会った。家に招き 入れてくれ、作業の様子や 織った着物を見せてくれた。 「私が学びたかったのは、これ だ」と感動した。
巡り会えた理想の師匠
本島に戻った後、住み込み で織物を教えてもらえないか と電話をすると、これまた「い いよ」の返事。小浜島に移り、 必死に藍染めや織物を学ん だ。結婚・出産を経て約10年 間島で暮らした後に、2人の 子どもとうるま市に移住。本 格的に活動するため花藍舎を 構えた。
「美しい藍色に染め上がって くる糸の色を見るだけで、や りがいを感じる。織物は緯糸 (よこいと)に何を入れるか で、表情が変わるので、試織し て最高な組み合わせができた 時は喜びもある」と染織の魅 力を話す。
現在目標とするのは、西表 島で紅露(くうる)工房を営 む染織家の石垣昭子さん。自 給自足で制作する石垣さん は成底トヨさんの遠い親戚で もあり、折に触れアドバイス をくれる存在だ。「昭子さん のように人に感動してもらえ るような、布や服や展示会が できるようにこれからもやっ ていきたい」と先を見据えた。
(坂本永通子)
花藍舎
うるま市勝連南風原152
TEL 090-5720-9268
※訪問の際は要事前連絡
※商品は、Galleryはらいそ本店(うるま市石川)、Galleryはらいそ識名園(那覇市真地)などでも販売
写真・村山 望