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[No.2046]

  • (金)

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「表紙」2024年07月25日[No.2046]号

ロマンあふれる石版画の魅力を発信
版画工房 コントルポワン
主宰 長嶺 斉さん 助手 長嶺 百合香さん

1億年前の石を使った、ロマンある印刷

 那覇市宮城にある「版画工房 コントルポワン」は、画家・版画家の長嶺斉さんが主宰する工 房兼教室。天然石やアルミ板の上に専用の描画材で絵を描き、プレス機で印刷をする「リトグラ フ(石版画)」が学べる、県内では珍しい工房だ。主宰の斉さんと助手を務める妻の百合香さん にコントルポワンでの取り組みについて取材した。

 リトグラフとは、 18 世紀に ドイツで発明された、水と油 の反発作用を応用した印刷 技法。「作業工程は複雑です が、繊細な表現や柔らかく透 明感のある色合いにいたるま で、描いたものが忠実に出る のが魅力です」と斉さんは語 る。石板やアルミ板の表面に 油脂性の描画材で絵を描き、 硝酸アラビアゴム液を塗る。 すると化学反応により描画 した部分はインクを引き付け やすい「親油性」に、描画して いない部分は水を引き付けや すい「親水性」に変化する。こ うしてできた版面に、スポン ジで水を引きながら色インク を巻き付けたローラーを転が すと、絵柄(親油性の部分)に のみインクが付着し、刷り紙 に絵柄が転写される仕組み だ。

 リトグラフで使用する石 は、およそ1億年前の南ドイ ツの地層から採れる石灰石。 アンモナイトの化石などが 入っていることもあるという から驚きだ。コントルポワンで は、古い印刷所やヨーロッパの 工房で使われていたものなど を譲り受けて使用。百合香さ んは「1億年前の石を、いろん な時代のいろんな国の人が 使ってきたというロマンがあり ますよね」と頬を緩ませる。

 一度描いた絵は石版表面を 研磨することで繰り返し使 えるが、そのぶん薄くなりプ レスした際に割れやすくなる ため、不要な石灰石を裏打ち して補強するのだという。

沖縄らしい作品に応用

 斉さんの作品「Wa t e r drop」には、その名の通り水 滴のような楕円の中に鳥や 蝶、花や人物などが描かれて いる。同名の別作品には、琉 装を着た女性やフヨウ、イソ ヒヨドリなど沖縄らしいモ チーフを取り入れた作品も ある。いずれも、色彩豊かで見 るものを引き付ける。

 「沖縄の鮮やかな色合いを 表現するには、フレッシュな発 色のリトグラフは向いている んだと思います。最近それに 気付いて、今は地元の風土や モチーフを扱った作品作りに も取り組んでいます」と斉さ ん。

 コントルポワンでは作家や 経験者を対象に貸し工房も 展開。県内外はもちろん国外 からも利用者が訪れている。

 「現在、絵本作家やアパレル 関係者、織物作家の方も足を 運ばれています。色や模様が きれいに出るので、表現のス テップアップにリトグラフを 活用されています。さまざま なジャンルの方にこの場所を 知ってほしいですね」

リトグラフをもっと身近に

 「昨年NHKで放送された 朝ドラ『らんまん』で、神木隆 之介さん演じる槙野万太郎 が植物学の雑誌を刷るため、 当時最新鋭だったリトグラフ を学ぶシーンがあり、少し光 が当たった」と話す斉さん。一 般的にはなじみの薄いリトグ ラフだが、ワークショップや展 示会を通じてその魅力を発 信し続けている。

 「リトグラフを知らない方で も一度触れてみることで、その 魅力を感じてもらえるのでは ないかなと思います」

 コントルポワンでは希望者 を対象にリトグラフの体験教 室も開催している。沖縄では 珍しいリトグラフ工房で、そ の色彩の美しさや醍醐味(だ いごみ)を味わってほしい。

(元澤 一樹)



版画工房 コントルポワン
那覇市宮城1-6-1
☎098-857-8201
リトグラフ体験教室
日時:水曜・土曜10:00~ 12:30、13:30~16:00
料金:3000円/2日間 4500円/3日間

版画工房 コントルポワン





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版画工房 コントルポワン
沖縄では珍しいリトグラフが学べる 「版画工房 コントルポワン」を主宰す る長嶺さん夫妻。リトグラフとは、天 然石と専用の描画材による、水と油の 反発作用を応用した化学的な印刷技法 で、美しい色彩や柔らかで独特なニュ アンスが魅力だ。プレス機の上にある のは描画された石版、右の作品は斉さ んの作品「Water drop IV」(2023 年) =版画工房 コントルポワン
写真・村山 望
版画工房 コントルポワン
製版インクを巻き付けたローラーを 転がす。アラビアゴム液による化学反 応で、描画した箇所にのみインクが付 着する
版画工房 コントルポワン
石版に紙を乗せ、専用のプレス機に かける
版画工房 コントルポワン
絵柄がそのまま写し取られる
版画工房 コントルポワン
リトグラフ教室の様子(提供写真)
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