「表紙」2024年09月12日[No.2053]号
創意工夫で復活した門付け芸
チョンダラーとは、かつて琉球王国内を行脚し、門付け芸(家々を回り芸を披露すること)を した一団だ。カラフルな衣装、目を楽しませる動きや小道具、キャッチーな歌は見る人を笑顔に し、3年間の厄をはらうという。元来のチョンダラーたちは廃藩置県に伴い、衰退していったと されるが、読谷村の伊良皆芸能保存会がこれを再現する取り組みを続けている。練習の場 に足を運び、古くて新しい芸能と、踊り手たちの姿を記録した。
チョンダラーの演舞の冒 頭、リーダーである「やんざ い頭」はそんな一節を述べる。 その後、扇子舞、人形劇、鳥 刺し舞、升斗舞、馬舞、獅子 舞が順番に披露される。い ずれの演目もウチナーグチ が使われるが、県外の芸能 との共通点も多い。 15 世紀 後半に本土から琉球へ渡っ たという、チョンダラーのルー ツにも想像が広がっていく。
研究重ねかたちに
伊良皆芸能保存会で、演 舞を指導するのは上地正勝 さん。 20 代でチョンダラーに 興味を持ち、文献や古典芸 能の歌詞などに残っていた 断片的な記録を収集。その 姿を少しずつ明らかにして いった。チョンダラーは本島 各地を行脚できたことか ら、首里王府の後ろ盾を得 た身分だったと上地さんは 確信している。
研究成果を本格的に曲 と踊りにしたのは約 18 年 前。演者たちも巻き込んで、 資料との整合性をとりなが ら作業した。「夢に出るほど 考えたよ」と上地さんは笑 う。演者は 18 年の間に世代 交代し、現在のメンバーは5 代目だ。
自然体の踊り手たち
芸能保存会の練習は、毎 週金曜日に行われる。5代 目たちはそれぞれ学業やア ルバイトを終えてから集ま る。 このメンバー、もともと は先代の練習をのぞき見し ていた子どもたちだったそ うだ。「やってみるか?」。上 地さんが声をかけたことが きっかけで、チョンダラー芸 能を担うまでに成長した。
練習を見学すると、芸能 が彼女・彼らの生活の一部 であることがすぐにわかる。 スマホをいじったり、お菓子 を囲んで談笑していたメン バーが、カジュアルに演舞を 始めるのだ。舞踊「高平万 歳」を見よう見まねで楽し そうに踊っていたこともあっ た。遊んでいると思いきや、 いつの間にか真剣になってい ることもある。
のびのびとした演者たち に合わせ、各演目も柔軟に 変化できる余地が持たせて ある。人形劇のセットは、現 代の舞台のサイズに合わせ て大きくした。獅子舞の動 きは組踊の所作を参考にし て、よりダイナミックになっ たそうだ。
「伝統に基づきながらも、 自分たちの創意工夫があ る。そこに価値があると思 います」
これまでの活動を総括し た上地さん。 21 日には伊良 皆区で「十五夜踊り」が開 催される。チョンダラーたち も出演予定。珍しい門付け 芸が見れる機会に、足を運 んでほしい。
(津波 典泰)
伊良皆区十五夜踊り
日時:21日(土)18時〜
会場:伊良皆公民館
〈取材協力〉
沖縄県立芸術大学
呉屋淳子、向井大策(共に音楽文化専攻教員)
写真・norico