「表紙」2024年11月21日[No.2063]号
沖縄は素材の宝庫
米盛勝也さん(29)は、世界でも120人ほど、日本には数人しかいないというイタリアジェラート協会認定「世界ジェラート騎士」の一人だ。「沖縄は素材の宝庫」と語り、県産素材の味わいを生かしたジェラートづくりに意欲を燃やしてきた。地元・沖縄にジェラート文化を根付かせたいとの思いから、昨年独立し、今年4月に糸満市西川町、沖縄水産高等学校の向かいに「ピエノマジェラート」をオープン。新たな一歩を踏み出した。
赤い日よけが目印の店に入ると、ショーケースには、カラフルに盛り付けられたジェラートが並ぶ。大人でも思わずワクワクしてしまう光景だ。地元・沖縄の素材を取り入れた18種類の手作りジェラートがそろうが、ラインアップは季節や素材の入荷状況によっても変わり、オープン以来、約60種のジェラートが店頭を飾ったという。
ジェラートは、乳脂肪分が控えめで、空気の含有量が低い。そのため、なめらかな口当たりとなり、素材の味をしっかりと味わえるのが特徴だ。筆者が味見をした「大地の香り」は、根菜のビーツの力強い風味を、ローズマリーとミントが爽やかに包み込む看板メニュー。複雑な味わいを存分に楽しめる。
ゼロから始め世界2位へ
高校卒業後、ホテルのフロントで接客を行っていた米盛さんは、20歳で世界でも名を知られるジェラート職人・柴野大造さんの弟子となり、ジェラート職人の道へ。柴野さんの拠点である石川県でジェラート作りを学んだ。
「基礎がない状態からのスタートだったので、最初は道具の名前も分かりませんでした。でも、聞いたことを全部メモしてその日のうちに覚えるようにしたんです」
1週間で13種類のジェラートのレシピを覚えるように命じられたが、それを1日で終わらせ、2カ月半の修業期間に50種類ものレシピを習得。「睡眠時間もほぼなかったですが、僕自身楽しくて、新しいことを吸収したいという思いが強くありました」と振り返る。
その後、沖縄でジェラート店の店長・製造責任者として経験を積む。2017年にはイタリアで開催された国際コンクールに出場し、自由部門で日本人初の準グランプリに輝いた。翌年もイタリアの国際コンクールに出場し、2年連続入賞。その功績をたたえられ、同年イタリアジェラート協会から「世界ジェラート騎士」の称号を授与された。
素材の味を生かす
「沖縄は素材の宝庫」と目を輝かせる米盛さん。形がよくないなどの理由で、通常であれば市場に流通しない県産の果物や野菜を活用したジェラートづくりに力を注ぐ。
「僕は素材をそのままジェラートに生かすことが得意。農家さんの畑で味見をして、こだわりを聞いた上で、僕なりにアレンジします」
同じ素材であっても、その味は気候や畑、土によってもさまざまに変化する。素材を吟味したうえで、300種類以上あるという砂糖など、ジェラートを構成する要素との組み合わせを㌘単位で組み立てていく。その組み合わせは無限に近く、職人は自身が作り上げる小宇宙とでもいうべきジェラートを生み出す、と米盛さん。それゆえ、手作りのジェラートには店ごとの個性があり、それを楽しむのがジェラートの文化だという。独立し自身の店を構えたのも、そんなジェラートの文化を沖縄に根付かせたいという思いからだ。
店頭での販売がメインだが、通販やイベントへの出店も行う。先月開催された沖縄の産業まつりにも出店し、第27回商工会特産品コンテストで審査員特別賞を受賞した。
現在約千種類のレシピを持つが、「今でも勉強中」と初心を忘れない。これからも、県産ジェラートの世界を広げてくれることに期待したい。
(日平 勝也)
ピエノマジェラート
糸満市西川町40-16
☎ 098-996-4112
営業時間=11:00~18:00
定休日=不定休(Instagramで告知)
P=あり(2台)
写真・村山 望