「表紙」2024年12月19日[No.2067]号
歌って笑ってやーにんじゅ(仲間)に
今月9日に開店18周年を迎えた「島唄やーにんじゅ」。いつ行っても生演奏で沖縄の歌が聞けると、県民・観光客問わず多くの人が訪れる居酒屋だ。そんな人気店の舞台に、今年7月から芸能事務所「オリジンli(lリル)」の芸人が立つようになった。そのきっかけやライブ開催の手応えを、代表2人に語ってもらった。
歌三線でお客さまを迎えるのは、「島唄やーにんじゅ」の代表を務める与座幸賢さん。琉球舞踊も芝居も演じる彼は、沖縄芝居の名門「劇団与座」2代目座長・与座朝惟(よざ・ちょうい)さんの孫で、物心が付く前から舞台に立ってきた。
「祖父の代から家族で民謡酒場をやっていてここもその流れを継ぐ、島唄ライブが楽しめるお店です。与座ファミリーを中心に若手の島唄演者も加わり、日替わりで出演して毎晩盛り上がっています」と話す幸賢さん。国際通りなどの飲食店やイベントで演奏するメンバーもいて、若い世代の活動が広がっているという。
沖縄芸能の真ん中にいる幸賢さんと、オリジン芸人はどんな風に出会ったのだろう。
「遊びに来た時、昔ながらの民謡酒場らしい居心地の良いお店だと思い『お笑いライブをさせてください』と僕からお願いしました」ときっかけを語るオリジンlil代表の首里のすけさん。
その申し出を「僕らも楽しくなりますし、お客さまが喜ぶことが何よりうれしいです」と幸賢さんは大歓迎したそうだ。
沖縄感たっぷりの舞台
12月上旬の月曜日、実際にお店を訪ねると20時30分に与座ファミリーの島唄ライブがスタート。「島人ぬ宝」や「涙そうそう」など沖縄らしさを感じる曲の演奏が続き、演者も観客も一緒に歌って乾杯しすぐに盛り上がった。リクエストに応え、与那国島の曲を披露する場面もあった。
21時からはオリジン芸人3組(しんとすけ・やんびー・あつきにぃにぃ)によるライブが始まり、沖縄の言葉や情報を盛り込んだネタで笑いを誘った。定期ライブやイベントではあまり見ない内容で、舞台と客席の距離の近さも印象的だった。お笑いライブの料金は不要で、終了後芸人が各テーブルを回る時に楽しんだ分だけお金を渡す、いわゆる「投げ銭制」で進行。
「観光客向けのお笑いに取り組みたいので、ここの舞台に立てるのはありがたい機会です。どのネタをやるかお客さまを見て判断しますが今日は県内の方と県外の方が半々で、難しいパターンでした」と首里のすけさんは笑った。
お笑いライブが終わると22時から閉店の27時まで、島唄ライブが3回行われる。
幸賢さんは「テーブルチャージは1000円で、注文した分の飲食代をいただきます。地元の方が利用しやすいようにリーズナブルな設定にしていますので、20代の民謡好きな若い方の来店が増えているんですよ。気軽にお越しください」と語った。
県民も観光客も楽しく
「僕らは月1回開催する定期ライブの集客に苦労しているので、毎日の島唄ライブでたくさんの観光客を集める飲食店は本当にすごい」と本音を語る首里のすけさん。
「県民にウケるネタを作るのが沖縄芸人の在り方ですが、県外にも発信できるようになるのが今後の課題だと思っています。与座ファミリーと関わりが持て、舞台に立つ回数が増えてネタが磨かれ、本土の人の前でも物おじしなくなりました」と話を続けた。
そばで聞いていた幸賢さんは「月曜日のみのお笑いライブですが、これからは機会を増やしたり一緒にイベントを開催したりなど、交流を深めていきたいです。沖縄の方にも県外の方にも、もっと楽しんでいただきましょう」と宣言。島唄とお笑い、沖縄の2つの文化がタッグを組むことでより広がっていきそうだ。
(饒波 貴子)
与座ファミリーのお店「島唄やーにんじゅORIGIN お笑い投げ銭ライブ」
日時:毎週月曜日
島唄ライブ 20時30分~(1日4ステージ)
お笑いライブ 21時~(1ステージのみ)
会場:島唄やーにんじゅ(那覇市松山1-33-2 はましんビル4-A)
電話:098-868-8737
営業時間:年中無休19時~27時
※お笑い投げ銭ライブは無料、島唄ライブチャージ(1000円)と飲食代が別途かかります。
写真・村山 望