「表紙」2025年01月30日[No.2072]号
現代に合った着こなしを提案
琉球王国時に着用されていた琉装。そんな琉装のブランド「琉衣(りゅうい)」は、上半身に着るドゥジン(胴衣)を中心に、琉装を洋服感覚にアレンジして製作もしている。伝統を現代に融合したファッションの愛用者も少しずつ増えてきた。今後はフォーマルな琉装を普及させたいという代表の砂川恵子さんのもとを訪ねた。
1月半ばにおきなわ工芸の杜で開催された「第1回ドゥジンフェス」(主催・琉衣、りゅう)。上半身に着用する琉装の一つ「ドゥジン(胴衣)」のファッションショーでは、作家の砂川恵子さん(79)の手掛けた衣装が披露された。多彩な生地や色柄、着丈の琉装を、さまざまな年齢や性別、国籍、職業の人たちが自分らしく自由に着こなす姿に、観客席からは「かわいい」「すてき」「おしゃれ」と歓声が上がった。
「琉装を普通の人に普通に着てほしい」――。砂川さんが琉装の普及を目指して活動をするうちに行きついたのは、洋服のように着用できるドゥジンだ。木綿や麻など手頃な生地を使い、袖や着丈の長さをアレンジ。下着として着用されていたはかまやカカン(巻きスカート)などをズボンやスカート感覚で履けるようにデザインするなど、生活に取り入れやすい装いを提案している。
着てもらえる装いを
宮古島出身の砂川さんの記憶にあるのは、子どもの頃に琉装をしていた祖母の姿だ。砂川さんが時代とともに衰退していく琉装をなくしたくないと「琉衣」の前身となる「琉装の会」を立ち上げたのは2011年のこと。「琉装の会」では、紅型や首里織、芭蕉布や南風原絣(かすり)など、沖縄ならではの生地を使って、熊谷和・琉裁きもの専門学院の熊谷フサ子さんに仕立てを依頼し、展示会を行った。好評を博したが、訪れる人は「すてきね」「素晴らしいね」で、見て終わってしまう。「洋服のように普段から着られるものを作れば、みんなが着るようになるのでは」と、カジュアル路線にかじを切った。もともと洋服店を15年営んでいた砂川さんは、布が好きで布探しは「得意分野」。沖縄の染織物や世界各地から探したもの、自身が集めてきたアンティークの着物などの生地が琉装に生まれ変わる。
ドゥジンは、両サイドにスリットが入り、帯を使わないのが特徴。和服と違い着付けがいらないため、誰でも気軽に着られる。袖が広く、風通しも良い。夏は涼しく、冬は防寒用に上からフィーター(羽織)を羽織ることもでき、一年中愛用できる。体形も選ばないため、家族で代々着ることも可能だ。
現在は県内外で開催される展示販売会などでも好評で、舞台衣装にも採用されたりするようになった。愛用者も少しずつ増え始め、県外の着物愛好家などにも好評だ。
フォーマルな場でも
琉装は「自分が沖縄の人間であるということを確認するためのアイデンティティーだと感じる」という砂川さん。カジュアルなドゥジンが徐々に認知されている一方、フォーマルラインの普及が課題だ。沖縄や日本の染織布で作ったドゥジンを礼服として広めていきたいという。「結婚式など礼装で出かけるような時は、琉装を着る人がずらりと並んでくれたら」と、幼い頃に見た琉装の復活に思いをはせる。
(坂本永通子)
琉衣 展示販売会情報
ハレの日に着る琉装展
2月15日(土)~18日(火)11:00~18:00
märch(那覇市安里)
※商品は展示販売会で販売。
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写真・村山 望