「表紙」2025年02月06日[No.2073]号
在来大豆を使った伝統的ゆし豆腐をめしあがれ!
はんたがわ豆腐の月
伝統豆腐で食文化の継承と地域活性化
戦前から豆腐どころとして知られる繁多川地域で、2007 年から始まった「はんたがわ豆腐の月」(主催・繁多川自治会、共催・繁多川公民館)。毎年12 月を10(トー)2(フ)の月として、第一土曜日には在来大豆「青(オー)ヒグ」を使った伝統的な豆腐作り体験や出来たてのゆし豆腐を振る舞うなど、食を通した地域文化を発信している。
始まりは2005年に行われた繁多川公民館成人講座「繁多川見聞録」の聞き取り調査だったという。
「井泉どころの繁多川地域では、豊富な水源と水質から最盛期には約50軒の豆腐屋がありました。当時は『青ヒグ』や『高(タカ)アンダー』といった在来大豆を自家栽培して豆腐を作っていたことが、地元のお 年寄りからの聞き取り調査でわかったんです」と語るのは繁多川自治会の玉城徳正会長。その後、県農業研究センターで試験用の青ヒグを発見。数粒の種を譲り受け栽培したところ、少しずつ種を増やし、戦後途絶えていた在来大豆の復活に成功した。
07年には繁多川公民館と自治会が連携して「あたいぐゎー(家庭菜園)プロジェクト」を立ち上げ、地元住人と協力し大豆を増やした。同時に、豆腐作りに使用していた伝統農具も復活。地域行事を踏襲した「はんたがわ豆腐の月」をスタート
伝統的な製法を体験
昨年12月7日(土)に開催された「第17回 はんたがわ豆腐の月」はあいにくの雨天だったが、地元の児童や家族連れなど多くの人が訪れた。体験コーナーでは、青ヒグと山形県産大豆「里のほほえみ」を使った「石臼挽(ひ)き」や「豆乳搾り」など、伝統的な「生搾り製法」の豆腐作り体験を楽しんだ。
できあがった豆乳をシンメーナービ(鍋)に入れ、ゆし豆腐を作るのは地元の老舗「長堂豆腐店」の長堂茂さんと繁多川公民館の大城健正さん。煮立った豆乳ににがりを入れると、ぽつぽつと豆腐が浮かんでくる。「これは『豆腐が生まれる』と言うんだよ」と長堂さんが解説すると、児童たちは興味深そうに耳を傾けた。
試食会では、あらかじめ煮た大豆を搾る「炊き搾り製法」で作ったゆし豆腐との食べ比べのほか、繁多川地域で受け継がれきた惣菜「豆腐団子」を振る舞い、参加者からは「優しい味」「おいしい」という声があふ れた。
地域文化を次の世代へ
戦後50軒ほどあった地域の豆腐店も現在は3軒にまで減少している。あたいぐゎープロジェクトは地域の小中学校と連携し、総合学習の一環として豆腐作りの体験学習や出張授業にも力を入れている。
「青ヒグの栽培から豆腐を作って食べるところまでを食育として取り組んでいます。今後は、誇りある繁多川の豆腐を次世代につなげていきたい」と玉城会長は思いを語った。
当初は「一丁一万円ブランド豆腐を夢見る大作戦」と銘打った取り組みだったというこのプロジェクト。地域全体が一丸となり次世代へつなぐ豆腐は、それ以上の価値がある。より多くの人に繁多川の豆腐の味 が届いてほしい。
(元澤 一樹)

写真・村山 望




