沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。週刊レキオ



[No.2074]

沖縄に福祉爪ケアを広めたい

　那覇市壺川と南城市大里で、プライベートネイルサロン「Manami's Nai（l マナミネイル）」を運営する山下愛美さん。昨年から、高齢者の自宅や福祉施設、自治体に訪問し、足の爪切り・フットケアを行う「福祉爪ケア」のサービスを行っている。「高齢者の方は、足の爪に痛みがあることで歩かなくなったり、転んでしまったりすることもあります。爪をより健康に保つことで、病気の予防につながるようお手伝いしています」と山下さん。福祉爪ケア専門士を養成する講座の講師も務め、足の爪から健康を守りたいという思いを胸に、活動を広げている。

　「足の爪に痛みがあると歩くのがおっくうになるし、爪が長ければ転んでしまうリスクも高まります」

　そこから入院生活に入り、介護を受けたり寝たきりになってしまうこともある。「医師の先生方も啓発活動を行っているぐらい、今、足の爪切りや角質ケアなどを行うフットケアが、病気の予防と健康づく りに大事だといわれているんですよ」と山下さんは説明する。

　実際、県内にも「沖縄の足を守る会」など、医師や看護師、義肢装具士、理学療法士、ネイリスト、セラピストなどの多職種が集まり、正しいフットケアの知識を広めようとする動きがある。山下さんが福祉爪ケアを始めるようになったのも、一昨年、同会のメンバーが産休に入る期間、老人ホームでの足の爪切りを代わってほしいと頼まれたのがきっかけだった。

試行錯誤し技術を習得

　「ネイリストからすれば、足の爪切りは余裕と構えていたんですが、実際に現場に行ってみると、健康ではない爪は分厚かったりボロボロだったり…。美容ネイルとは全然やり方が違うと思い、ネットで検索したり、オンライン講座を受講したり、いろいろなことを学び始めました」

　週１回、３〜４人ずつケアを続け、習得した知識を実地で試して技術を磨いた。努力のかいあって、１年ほどで「できるようになった」と感じるレベルに到達した。

　「でも、最初は大変でした。それに、急に高齢者の方に足の爪を切らせてくださいって言っても、『怖いからやらないでください』って拒否されるんですよ」。昔の経験や思い出を引き出す回想法など、福祉の現場で行われているコミュニケーション方法も学びつつ、接し方を身に付けていったと振り返る。

　現場で試行錯誤しながら技術を磨いたのは、山下さんにとって初めての経験ではない。南風原町出身の山下さんは、高校卒業後、岡山県で就職した。未資格の状態から、現場で働きながらネイリストとして の技術を習得。沖縄に戻ってから２０２０年に独立を果たしたという経歴がある。「その経験があるから、今できているのかなと思います」と笑う。

足の爪レスキュー隊

　昨年から、爪切りをお願いしたくても病院、整形外科、専門医に行けない方のため、「まなみ足の爪のレスキュー隊 沖縄」として、訪問で爪切りを行うサービスを開始した。

　施術では、衛生管理を徹底した専門の道具を使って手足の爪切りを行い、巻き爪予防ケア・角質除去、福祉ネイルカラーも手掛ける。足の爪切りでは、家族がケアを試みたものの、出血などの結果につながってしまったため、ネットで検索して依頼されるケースが多い。施術には数回かかる場合もあるが、家族でもケアできる状態にしてからバトンタッチする。

　「こういうサービスがあるのを知らなかった、とおっしゃる方もいるので、福祉爪ケアをもっと広めていきたい」と山下さん。普及活動の一貫として、福祉爪ケア専門士を養成する講座の講師も務めるようになった。講座は１日で受けられ、受講者は「爪のレスキュー隊」の一員として認定される。県内各地を拠点とする爪のレスキュー隊メンバーと協力しながら、可能な限り訪問施術に対応していきたい、と未来を見据える。

（日平 勝也）

【料金】
足の爪切り 30分 4400円
巻き爪BSブレイス 1趾15分 3300円
手の爪切り 20分 2200円
福祉ネイルカラー 30分 3300円
※訪問費込

福祉爪ケア専門士®３級講座
3月18日（火）沖縄市
3月31日（月）那覇市
4月20日（日）南城市
※詳しくはお問い合わせください
相談・問い合わせ　☎080-4779-6090（山下）

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