「表紙」2025年02月20日[No.2075]号
うちなー芝居の技と活気、今に伝える
劇団うない
乙姫を受け継ぐ姉妹(うない)たち
2004年に旗揚げした「劇団うない」。女性の役者だけで舞台に立つ劇団だ。年長の団員たちは、戦後間もないころのうちなー芝居や大衆劇場の雰囲気を経験した、貴重な存在である。若い世代の役者も在籍し、多世代で芝居に取り組んでいることも魅力だ。練習現場を訪れ、劇団の歴史や思い出、団員たちの人柄を取材した。
劇団うないの前身は、1949年に旗揚げした「乙姫劇団」だ。毎日どこかの劇場でうちなー芝居が上演されていた、という時代。他の劇団と切磋琢磨し、独自の脚本や演技、舞踊を発展させてきた。ステージでは常に観客の目線を意識した、大きく、美しい所作が評判だったという。
乙姫劇団は99年に惜しまれつつも解散。しかし04年、その技を絶やしてはいけない、と故・兼城道子さんが初代団長となり劇団うないを旗揚げした。
劇団員の暮らし
「先輩方の歌とか癖とか、全部見て覚えていました。これがとってもいい宝になりました」
そう話すのは二代目団長の中曽根律子さん。09年に団長として就任した。乙姫劇団時代から団員で、入団は64年。そのキャリアは、舞台の幕引きをする役割から始まったという。舞台袖で当時の役者たちの演技、裏方たちの動きを観察したことが今につながっているそうだ。
「『乙姫が来たらソーキ骨のかじゃーすん』と言われてたよ」
乙姫劇団時代の話に、団員の兼城米子さんも加わってくれた。「ソーキ骨のかじゃー」とは、豚のあばら骨を調理する時の香りのこと。各地を巡業しながらもきちんと食事を取り、丁寧な生活をしていたことを物語っている。舞台の下でも品行良い振る舞いを心がけていたので、あこがれのまなざしを向けられることもあったそうだ。
「劇場の舞台に蚊帳をつって、ゆんたくしながらみんな一緒に寝る。あれはいい思い出です」
中曽根さんも当時を思い出してほほ笑んだ。
公演の見どころ
3月2日の二十周年記念公演で上演されるのは『花の代』。那覇市のジュリ馬行列に着想を得た物語である。主人公、真鍋樽金(まなびたるがに)を演じるのは平良芽美さん。04年の旗揚げ時に加入し た団員だ。うちなーぐちを話さずに育った世代であり、言葉に深みを持たせることには苦労しているという。
「セリフだけでなく、何もない間も大事にしたい。お客さんにはハートも受け取ってほしい」
平良さんはそう話す。物腰やわらかな印象を受ける彼女だが、演技については「しつこいなあと思うくらい(笑)。電話でも聞いてきます」と兼城さんが教えてくれた。練習中、年長の団員たちは「今の子たちは方言もできない」と言って度々あきれているのだが、温かく接してもいる。そのやりとりを見ていて、確かに姉妹(うない)のようだと感じた。
劇団うないの芝居は、一人が何役も演じる„かけ役 “も見どころ。これも乙姫劇団の伝統で、中曽根さんは「あの役やって、この役やってができたら、一人前の役者」と話した。ベテランと若手の入り混じる舞台に足を運んでほしい
(津波 典泰)
劇団うない 二十周年記念公演
『時代人情劇 花の代 ~旧二十日正月 ジュリ馬行列の由来~』
会場=国立劇場おきなわ大劇場
日時=3月2日(日)12時開場、13時開演
料金=前売り3000円 当日3500円 大学生以下1500円
お問い合わせ・チケット予約 ☎ 090-7570-8128(劇団うない事務局 久米ひさ子)

写真・村山 望



