「表紙」2025年04月17日[No.2083]号
伝統と現代をつなぐ菓子作り
南島製菓 代表 村吉政人さん
百周年に向かって沖縄から世界へ
1935年に創業、那覇のお菓子屋さんとして県民に親しまれてきた南島製菓。琉球王朝時代から伝わる銘菓「こんぺん」をはじめ、行事菓子は南島製菓で買うと決めているなじみの客も多い。代表の村吉政人さんに、90周年を迎えた思いなどを聞いた。
「創業者の祖父を尊敬していますし、感謝しかありません」と話す4代目の村吉政人さん。一番人気の「こんぺん」は創業当時からの材料を使うなど、こだわりを持ちながら伝統を守り、お菓子を作り続けてきた。同時に村吉さんらしい発想で工夫を凝らし、新たな取り組みも進めている。
「コロナ禍で売り上げが不調な中、思い切って店をリフォームしました。来店経験のない方が入りたくなるお店にしたかったんです。資金借り入れのため、担当者に手紙を書くことから始めたんですよ」とほほ笑む村吉さん。熱意を持ってリフォーム計画を進め、2022年2月にリニューアルオープン。しっくい壁に囲まれ紅型ののれんを掲げた店内は、歴史を感じつつも洗練された空間に生まれ変わった。観光客を中心に来店者が増え、以前の3倍近くの人数が利用するようになったそうだ。
「リニューアル当時は店を知ってもらいたい一心でした。祖父が作ってきたこんぺんを広めたい時も、新しいパッケージを考えてうまく進めることができました。店のため、誰かのためにという気持ちで取り組むとアイデアが湧きます。売り上げを伸ばそうと思うと、何も浮かんでこないんですよ」
水彩画をパッケージに
23年6月、ラジオを聴いていた村吉さんは個展の開催を伝える「水彩画家・千賀ちかさん」の声に引かれ、会場に出向いたとのこと。そして絵を見た時に、お菓子のパッケージに取り入れられないかと思い付いたそうだ。
「すてきな絵なので、より多くの人に知ってもらえたらと思いました。そして当店の紅芋まんじゅうと結び付きました。30年以上前からあるお菓子ですが最近リピーターが増えていて、新しい見せ方ができないか考えていたんです。90周年に合わせてパッケージの絵を描いていただけないかと千賀さんにお願いしたら、引き受けてくださいました」と村吉さんはうれしそうに語る。
そして見たことのない、手土産にふさわしい紅芋まんじゅうの詰め合わせ「紅いもMoonpuff」が誕生。箱入りの個包装になっていて、贈られてうれしく飾っても楽しめる。外箱を開く時は、宝箱が目の前にあるようなウキウキ気分が味わえる。
「沖縄は手土産にしたいお菓子が少なく、食べた後に残せるパッケージは珍しいと思います。結婚式のギフトにしてもらう、本土の百貨店で販売してもらうなど広げられるように努力します」と展開を計画中だ。
従業員と共にブランドを強化
素朴な味などお菓子作りの伝統を守りながら、自身が持つ現代の発想やアイテムを取り入れたいと日々努める村吉さん。目線は常に先で10年後の百周年も見据えている。
「挑戦したいことは他にもありますが、経営者として一番大切なのは従業員。高齢化する職人さんたちをフォローする体制を整え、若い方たちを良い条件で迎えられる場所をつくっていきます。店舗を増やすことは考えず、『南島製菓』というブランドをより強めていきたいですね」と話してくれた。「沖縄から世界へ!」を合言葉に、海外の人にもお菓子を届けたいと意気込む。
豊富な品数とおいしさで、私たちを幸せにする南島製菓のお菓子。伝統と現代をテーマに村吉さんが創り出すお菓子の物語を、これからも楽しみにしたい。
(饒波貴子)
南島製菓
那覇市松尾2-11-28(浮島通り)
☎ 098-863-3717
営業時間=月〜土 9時〜18時、日10時〜17時
定休日=1月1〜3日
駐車場=なし

写真・村山 望



